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悪役令嬢、デビューで華麗なステップを踏む

 



 夜になって正式な夜会が始まり、レオン様への祝辞が一通り述べられたタイミングで

「では、ここでレオンとの結婚が決まった姫君をお披露目しようと思う」

 ーーえ?これ、いつもの名前をよみあげる係の声じゃない。国王の声だ。しかも…

「セイラ姫だ」

 人違いではなさそうだ。だが、国王が姫って…婚約決まったらそう呼ぶ決まりなんてこの国にあったっけ??

 戸惑いつつ 私は夜会の会場へと足を踏み入れた。広間に集った人々の注目が一斉に集まる。

 うわ……!

 視線が痛い。思ったのはまずそれだ。

 その上で、揃い立った面子に驚愕する。すかさずレオン様が傍にきて手を取って下さったので臆さず進む事が出来たがーこういった式典なら各国からの使者ーー大抵貴族だがー が列席するのが普通だがこれはーー?

「我が国の国庫を預かる大臣でもあるローズ伯爵の娘であり余にとっても姪にあたる。先だっての夏の祝祭では第3王子が騒ぎを起こしデビューを妨げてしまった故今宵が正式なデビューとなる」

 面子にも驚いたが国王の口上に更に驚く。

 え?

 なんで?

 前回の夜会擬きと全然態度違うんですけど??

「セイラ姫」

 でもって改めて"姫"を付けて呼ばれる。まるでそれを周りに印象付けるように。

「ラインハルトが迷惑をかけて済まなかった。ーー改めて息子レオンとの婚約を祝福しよう」

 ざわり、

 と周囲に動揺が広がる。

 こんな場で国王が、祝福の言葉のついで とはいえ、略式とはいえー謝罪するとはー…

 このプライドの高い国王(この国の最高位なのだからなくても困るが)からの言葉と態度に違和感が否めない。

 まさか、また何か企んでる??ーーさすがにそれはないか。ないとは思うがーー

 なんだ、この手放しで祝福感は。

 しかも、この列席者の顔触れはーー各国からの出席者がみんな王族?それも傍系の王族でなくほとんどが王太子を含む王子とそのパートナー、若しくはその兄弟、少数ではあるが国王夫妻が来ている国さえある。

ーーリズ達が言ってたのはこの事か。

 と 合点が行くが同時に

 なんで?

 という疑問も湧く。



 さらに、

「またセイラ姫はまだ学生の身であるゆえ王室から専任の護衛団を選定しその任につかせる事とした。ワイエス」

 ーーは?何それ?初耳なんですけど?

「姫様の護衛団として3名の騎士と2名の近衛、4名の魔法使いの精鋭を選出させていただきました。護衛隊長は殿下自らがご指名なさった騎士ユリウスのもと彼等が交代で任に着きます。姫様にはよろしくお見知りおきくださいますよう」

 今日は正装のユリウスを筆頭に皆が名前を告げ挨拶していくが、驚く事に女性騎士も2人混じっているー…

 けど、そこじゃなくて。なんで今ここで私の専任護衛団の紹介なんてやってるの??わけわからないんですけど。

 いやそもそもこれレオン様の誕生パーティーですよね?

 訳がわからないが、

 そんなものいりません。

 とも言えない。

 必死に平静を装う隣で知っていて黙ってたのであろうレオン様は楽しそうに笑ってる。

 というか、これお兄様も絶対知ってましたよね??ちら、と兄達(今日は家族全員揃って列席している。弟のエドワードはデビュー前なので本来夜会には出られないのだが特別に許可がおりて出席している)の方を見遣るとやはり兄が不自然に目をそらした。

 ーーやっぱり当分仲直りしない。

 我ながら子供じみていると思うが、こういつも内緒にされては面白くない。

 尤も先に話をされたら断っていたろうけど。

 ーなんて考えてるうちに紹介は終わり、

「彼らは明日より正式にセイラ姫専属として交代で任に付く事となります」

 ワイエスの言葉に

「うむ。よろしく頼む」

 と返す国王。

 ……えぇとなんだ コレ?

 ドッキリ?

 じゃないよね?


 なんて戸惑いを態度に出せる訳もなく。


 国王の合図で楽団が演奏を始める。

 私とレオン様だけが広間の真ん中へと進み出る。

 ーー今日の一曲目だけは、私とレオン様だけが踊る。

 流石に緊張がはしるが、隣のレオン様が「心配ない」という風に優しく微笑む。頷いて微笑み返し、私達は踊り出した。


 夜会のドレスにしては軽すぎる生地が足元でさらさらと揺れる。踊ってみて初めてわかる。見た感じは決して軽そうでなく重厚に見える生地なのに、驚くほど軽い。そしてステップを踏むたびそれに合わせてくるくると裾が綺麗に広がる。ーー凄い。こんな踊りやすいドレス初めて。

 マナーレッスン初日に"免許皆伝"を貰い、この城でも準備の一環でやったダンスレッスンに於いて初回で「文句の付けようがありません」とお墨付きを貰ったセイラだがその時はあくまで練習用のドレスだったのでこのドレスで踊るのは本当に初めてなのだーそう、ドレスは夏の祝祭の時と同じーーあのメルクのブルーのドレスだ。もちろん「あの時と同じ物を着るのは縁起が悪いのでは?」と言う意見もなくはなかったがドレスに罪はないし レオン様曰く

「あれがお披露目では職人達が気の毒だ」

 と言うのも尤もであり、その"縁起の悪いアクシデント"の首謀者の1人は王族でもあった訳でーそのせいで悪いイメージなどが付いてしまえば取引先である国に対しても申し訳も立たない。とレオン様が言えば改めてこのドレスをお披露目、にそれ以上異論はあがらなかった。

 さらにいえばせっかく踊ると映える作りになってるのに踊れてないし?

 という事でこのドレスでこの場に出る事は割とあっさり決まった。

 変わったのは、髪や首を飾る宝石の方だ。元々レオン様が祝祭に用意した物だって14才の令嬢のデビューには高価すぎるくらいだったし、そもそもこのドレスじたいこの国のどのデビュタントのドレスより高価だ。

なのに

そのままでいい という私に周りは「いいえ婚約披露の場なのだからもっと華やかにしなくては!」と鬼気迫る勢いで更に高価な物が次々に並べたてられ、私が選べないでいると片端から髪や首に当て始めた。最初は女官長とリリベルだけだったそれにメアリとレイラが加わり、傍で見ていたレオン様が加わりとどめとばかりに王妃様がやってきて加わった。ー正直、勝ち目がどこにもなかった。

 まあ、そりゃあレオン様みたいに立ってるだけでキラキラオーラ撒き散らしてるような人が相手なのだから仕方ないとも言えるけど。



 今夜がデビューにも関わらず優雅な足捌きで華麗にステップを踏む令嬢とそれは嬉しそうにその婚約者(ひと)の手を取る王子に会場からは溜め息が漏れる。

 今日のレオンは白を基調に所々にアクセントとしてブルーが散りばめてある礼装で、ぱっと見にはセイラのドレスより薄めにみえるのだが、2人並ぶと全く同じ色を使っている事がわかる。ドレスのグラデーションの濃い部分でなく薄い部分だけを使ってるので、並ばないとわからない。逆に並んでいると1枚の絵のようーー


 と気付いて周りは再度ほぅ…と感嘆の声を漏らすが、そうでない方々もいた。


 ーー相変わらず、独占欲の権化め。自分の色を纏わせるだけだけじゃ飽き足らず揃いの衣装まで仕立ててやがったのか。

 と 小さく舌打ちしたのは令嬢の兄であり、王子の親友(と同時に悪友)でもあるリュート。

 ーー夏の祝祭の時にも思ったけど、殿下って独占欲の塊よね…

 と小さく息をついたのは令嬢の親友のリズ。


 実際、ファーストダンスが終わっても彼女(セイラ)を離す気はさらさらないらしく腰に手をまわしたままー否、むしろ踊っている時よりぴったりと抱き寄せたままーー招待客達との挨拶に笑顔で応えている。

 ロックされているセイラのほうは微妙に顔が引きつっているが、ごく親しい一部の人間にしかわからないレベルなので来賓達には気付かれてないと思うがーー

 ーーあそこまで"自分のもの"アピールしなくても。

 ーーどこまで囲い込む気だ、いいかげんちょっと離れろ。

 と一部の方々が心中で溜め息と共に呟いた。






自分の色を纏わせる→夏の祝祭でのセイラのアクセサリーの事だと思われる。赤い宝石はレオンの瞳の色、白い花はレオンの髪色。

父方からも母方からも同じ血を引いてる従兄なので血が近い、と思われる向きもあるかもしれませんが諸外国ではまだ「腹違いの兄妹なら結婚OK」という感じの観念(もちろん国や地域により違いますが☆)の世界なのでセイラとレオンはその点問題ないです。

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