悪役令嬢、確信する
連投したいのにそこまで進まない…また速度制限がきてしまった(ーー;)
機種変は今週なので次回更新は少し遅れるかもですm(_ _)m
ブクマがいつの間にか600超え、大変嬉しいですありがとうございます!
あのあとレオン様に対しての行動を責められる事はなかった。レオン様本人はもちろん、その周囲にも。
宮に戻って1番に謝罪したところ
「助けられたのはこっちだ。謝罪される謂れはない」
と溜息と共に却下され、因みに騎士団で部下から報告を受けた兄は吹き出して爆笑したそうだ。
私の靄もやはあの出来事の後何故かすっきりしていたが、お兄さま?爆笑ですかそうですか。仲直りはまだしなくて良いみたいですわね?
ドラゴンの襲来を告げられ、”レオン様重症”との報告を受け、さらにそれを治癒しドラゴンの一体を私が氷漬けにし粉砕した。
との報告を受けた国王は
おそらく王妃様はじめ大人の皆様にお仕置きーーじゃない、発破かけられたせいもあるのだろうが黒太子から私への婚姻の申し入れを正式に却下し「ドラゴンの襲来をうけ城が破損した以上貴殿ら国賓をこの城に留めて置くのは失礼にあたる。また近くドラゴンが襲ってくるやもしれぬ。早急に帰国されては如何か」
要するにドラゴンに関する秘密を教える訳でも襲って来た時助けになるのでもなければ、とっとと帰れ。
と話をつけたのである。
で、今のこの状況。
黒太子御一行の目の前に国王陛下夫妻、一歩さがってミリアム王妃、お父様、宰相ーーその他の貴族の皆さんwith王宮近衛ーーそこから数メートルの距離をおいて騎士団の軍勢、ーーの中心に私達。
いいのかコレ?あんなにご機嫌とってたのに?と流石に思ったが”あの襲来を仕掛けたのはトラメキアに違いない”とみる向きがほとんどでとっとと帰ってもらえ、に反対意見はほとんど出なかったらしい。
それでもこの”国をあげての見送り”というより”国を挙げての威嚇”にしか見えないさまには不快感を示すのでは?と思ったのだがー出てきてこの体勢を見た途端卑屈でない苦笑を浮かべた。
あからさますぎて逆に笑えたらしい。
まあ、良いならいいか。あの夜会擬きの後全く顔を合わせてないので最後に挨拶くらいしないといけないかと思ったのだが、レオン様に
「必要ない。国王が1人で勝手に蒔いた種だ、本人に刈り取らせるべきだろう」
と止められた。
ーーレオン様といい騎士団の皆様といい過保護すぎやしないだろうか。別に、黒太子私を攫うほど固執してないと思うけどな?
ーとか軽く思ってたのだが。騎士団の皆様の間を必死に抜けて(国王直属なのにというべきか国王直属だからというべきか?)汗だくになった使者が伝言を持ってきた。
曰く、
「ルキフェル殿下が帰国前に一言セイラ様にご挨拶したいと」
「断る」
私が言う前にレオン様が断った。
「こ、国王陛下も是非に!とのごめいれ…」
”い”まではレオン様の眼光に気圧されて言えなかった。
「この後に及んで、命令だと?」
「い、いえ是非頼む!との仰せにございます」
最初自分は国王からの勅使だと袈裟がかった態度だった使者が慌てて言いなおすもレオン様の態度は変わらない。
どころか、
「まだ懲りてないのか、あの狸め…」
とか王子らしからぬ台詞がきこえた気がする。いや私も中身淑女とは到底言い難いですけど、レオン様?
ーー確かに、一夜にしてこの見事な手のひら返しは見事な狸っぷりだが。
まあ、これくらいでないと国王なんてやってられないのだろう。
「とにかく!セイラをあの皇太子のそばへはやれん。そう返せ」
「し、しかしー…!」
使者も命令を受けた以上引きさがれないのだろう、必死に食い下がるがこの場合は逆効果だ。
ーーなんだか気の毒になってきた。
し、
イヤな事はとっとと済ませるに限る。
て昔から言うじゃない?
「レオン様、この膠着状態は時間の無駄です。面倒はとっとと済ませてしまいましょう」
「セイラ⁉︎」
「何を仰います!騎士団の団長としてそのようなことー…!」
「もちろん、私1人では不安ですから皆様一緒にいらして下さいませ。それでよろしいですわよね?」
にっこり微笑んで件の使者を見遣る。
「はっ…」
言葉を失ったかのように最初の一語以降が出てこないが私はそれを敢えて了承ととって
「では皆様参りましょう」
と歩き出してしまう事にする。
「セイラ…」
呆れと戸惑いが入り混じった声で止めに入ろうとするものの、外交手腕に優れたレオン様だからすぐに気付く。
「…確かに時間の無駄には違いないな。ワイエス、今すぐ騎士団の精鋭5名を選べ。その5名とお前がセイラの周りを囲めーーユリウス」
「御意」
レオン様が私の手を取る。反対側にユリウスが付く。目の前の騎士達がざっと道をあける。ーーうん、やっぱ大奥よりモーゼだわ。なんか偉い人になったみたいな気がするなあ。
いや、悪役令嬢ってそもそも基本身分は高い設定なんだけど。
人の盾を除けば直線距離にしてそう遠くはない。黒太子の前にはすぐ着いた。
ーー背後に真っ黒なドラゴンがいる。城を襲ったのに比べれば小さいのだが、これは確かに近づくのはちょっと怖い。怯んだように私が足を止める前にレオン様が進み出た。
「ルキフェル殿下。セイラはこれ以上ドラゴンに近付く事は出来ない。挨拶ならー」
「では私が参りましょう」
言い切る前にこちらに向かってくる黒太子に流石に唖然とする。
???
となる私たちに構わず黒太子は私の面前に立った。
「セイラ嬢」
「ルキフェル殿下…?」
妙に黄昏た声で呼ばれ訝る私と、怒気を露わにするレオン様と警戒マックスなユリウスーーに全く頓着する事なくルキフェル殿下は私の手を取った。
「?!」
「っ貴様!!」「セイラ様から手を放せっ!」
今にも抜刀しそうな2人に
「お別れの挨拶をするだけですよ。少しくらい良いでしょう」
涼しい顔で返す皇太子は大したタマだが、
「気安く我が許嫁に触れないでもらおう」
瞬時に切り返すレオン様も流石だ。当の私にはなんでこんな流れになってるのかさっぱりだが。
が、そんなレオン様の制止をあっさり無視してルキフェルは私の手の甲に唇を落とした。
そして、私の耳に触れるか触れないかぎりぎりのところでひと言囁くと、あっさり私から離れて踵を返した。
文句を言う間もない早業である。いや離れるが早いかレオン様にがっちり後ろから抱き締められてはいたけど。抱き締めるというより、締め技に近いホールドなのでちょっと苦しい。今言っても逆効果そうだから言わないけど。
ーーそしてこんな状況を作り出してくれた当の黒太子は何だかご機嫌だった。
そのまま自分のドラゴンに騎乗し、国王とひと言ふた言交わしたかと思うと凄い速さで空に飛翔し、フェリシア皇女や側近達がそれに続くさまは壮観だった。
トラメキア一行に不信感を持つ国の重鎮たちからも「おぉっ…」と声があがる。無理もない。ドラゴンが隊列を成して飛翔するさまなどトラメキアならいざしらず、わが国では(普通に生きてる分には)お目にかかる事はない。
が、
そんなものでレオン様の機嫌が直る筈もなく。
「あいつ…!次会ったら殺してやる!」と宣うレオン様と黒太子に触れられたほうの手を濡れタオルで無言で拭いているユリウス。…なんだかさっき言われたセリフを言ったらこっちの身が危なそうだ。
黒太子は言ったのだ。
レオン殿下の帰国前に、さっさと貴女を攫うべきでしたーー
と。
あの皇太子は、あの時私がドラゴンを倒した事を知っている。
あの時のドラゴンはレオン様の指揮のもと騎士団が討伐(一体は実際その通りなので間違ってはいない)した事になっており、私の魔力については厳重な箝口令が敷かれたーーあの場にいたものは魔法契約を伴う誓約書にサインまでさせられたそうだ。
場所が王城内だからこそ出来た事だが、王城内とはいえ「ドラゴンの襲来さえ知らなかった」トラメキア御一行様が知る筈はない。彼らの滞在してる宮はあの塔から離れていたし建物の配置からしても見えなかった筈だ、ーー普通なら。
ーー魔法か、竜眼か。何かしらの方法で見ていたのだろう。
という事は、やはり真実なのだ。
ーードラゴンマスターは、ドラゴンを望んだ場所に誘導出来る。