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悪役令嬢、問い詰められる

 

「よろしかったのですか?セイラ様」

 兄の事を気遣ってるのは明白だが私は敢えて

「な に が ?」

 と不機嫌を隠さず応じる。

「いえ…」

 ユリウスもこれ以上突っ込むのは不味いと感じたらしく言葉を濁す。

自分でもわかっているーー先程のやり取りは間違いなく八つ当たりだと。


 レオン様の宮に入り部屋のある階へと上がる。

 と、

 私の部屋(?)のドアの前にレオン様が立っていた。


 ーーもう戻ってたのか。てっきりまだあの皇女に捕まってると思ってた。


 意外そうな顔の私につかつか歩み寄ってくると手を取りながら

「何もされてないか?奴は何か言ってたか?いや、それよりーー」

 ぎゅっと握った手に力がこめられて痛い。

 これはアレか?ドレスを台無しにした事を怒られてるのか?

「殿下。セイラ様が痛がっておられます」

 というユリウスのセリフと共に

「セイラ様!そのドレスはーー何があったのです?!」

 とリリベルが駆け寄って来る。


「ドレス?」

 ーー気が付いてなかったのか。


 そこで初めて私のドレスをまじまじと見て驚いた顔になり次いで憤怒の形相になると

「誰に、何をされたっ?!」

「な、何も…」

 こんな至近距離で迫られたら言葉が上手く出て来ない。


「嘘をつけ!何もなくてなんでこんな姿なんだっ?!」

「あの場を抜ける口実にする為です!」

 掴む力がいい加減痛い。

 さっきの怒りも手伝ってついきつい口調になる。

「落ち着いて下さい殿下。セイラ様の仰る事は本当です」

 ユリウスの詳しい説明に

「そうか…」

 漸くレオン様も力を緩めてくれた。

「取り乱して済まない。つい…」

「レオン様は…あの、フェリシア皇女とは?」

 一緒に広間から出てったのは見えたが。

「ああ、騎士団一の美形に庭園を案内されている筈だ。まだ歩いてるかは知らないが」

「………」

 人の事は言えないが酷い対応である。


「で?黒太子には何もされてないんだな?」

「はい。特に何も」

 そう言っても何故か手を離してくれない。

「何を話した?」

「話すというか…自分の理想像を勝手に喋ってましたが」

「それは、どんな内容だ?」

 なんでこんなに真剣なんだ⁇

「えぇと、強い子孫を残したいから王妃には自分の隣で命懸けで戦える女性こそが相応しいとか、ドラゴンの背に乗ってみたいと思いませんか?とかーー」

「「!!」」

男性2人が固まった。なんか不味い事言ったろうか。

「カルヴァ!黒太子のドラゴンの監視を増やせ!この宮にも対魔法を使える魔法使いと騎士を常駐させるようすぐ手配を」

「直ちに」

命令を受けた従者が急いで離れて行くと

「それで?」

と怖いオーラを纏ったレオン様がこちらに向き直る。

「あの…?」

さっぱりわけがわからない。

「それでお前は何と答えた?!」

 今度は肩を掴まれてがしがし揺すられるような詰問だ。

 だから、痛いんですってば!!

「恐ろしいですわ、としか答えてません!一体何なのです?!」

 私はレオン様の手を振りほどくように身を捩る。振り解けなかったが。

「!ーーすまん。だが…」

乱暴にした自覚があるのか肩を掴む手が緩む。やっぱり離してはくれないが。

「トラメキアの皇族にドラゴンマスターが多いのはセイラ様もご存知でしょう。聞いた話によると彼らは沢山の寵姫を持つ一方で1人だけーー伴侶と認めた者のみ自分のドラゴンに騎乗する事を許すそうです」

「伴侶…”正妃”ではなく?」

「ええ。どうも彼らの常識はドラゴンありきと言いますか…例え正妃でも自分のドラゴンと相性が悪ければ伴侶としては失格となるらしくて」

なんだその理由。

「ドラゴン本体と相性が良くなければマスターが許可しても乗せられないだろう?だから、これはおそらく有事の際たった1人しか連れて逃げられない場合誰を連れて逃げるか? という意味なんじゃないかと思う。彼らは次代にいかに強い血を残すか に拘る一族だからね。跡継ぎを産む相手はドラゴンと相性が良い程良い とでも思ってるんじゃないか?」

「………」

 ーーなんて自分本意、いやドラゴン本意?な伴侶選びなんだ。

いや、そういえば”花嫁攫い”ってのは文字通り花嫁抱えてドラゴンで飛び去ったんだろうからーーてアレ?じゃあもしその花嫁さんがドラゴンと相性悪かったら攫われなかったって事か?


という私の疑問に

「そうだろうな。例の”攫われた花嫁”はその皇帝がドラゴンと共に城に到着した時出迎えに出ていた。もちろん1人でなく花婿含むあの国の王族総出でだったそうだがーー」

「それでどうやってその方とドラゴンの相性なんてわかるんでしょうか?」

「ドラゴンは警戒心が強いだろう?マスター以外が近寄っただけでも威嚇か攻撃態勢に入る。だから乗せたい人間を近付けてみるだけでいい。少し近付いただけで警戒されれば失格、されなければそのまま近くまで行って、ドラゴンに相対出来れば合格」

何の試験だ。

「いざ相対して攻撃されたりしたらどうするんでしょう?」

「そういう話は聞かないな。そもそも相対まで出来る人間が殆どいないらしいし、ただ目の前までびくびくしながらでも行けばいいってものでもないらしい。畏敬をもってドラゴンから目を逸らさずその手綱に触れる事が出来れば騎乗を許された事になる」

ヒッ◯グリフに対するお辞儀みたいな?

でも、それやらないと乗せようがないのならーー

「攫いようがないような気がしますけど…」

やってみろって言われたってやらなきゃいいわけだし。


「攫われた時はちょっと事情が違うんですよ」

「え?」

「ああ。一目見てその花嫁を気に入った皇帝は騎乗したままその娘にドラゴンに水をやってくれないかと言った」

「?水?」

ドラゴンはマスターがいようがいまいが人の手から水も食べ物も取らない。

今いる黒太子や皇女のドラゴンだって王城内の竜の森(ドラゴンフォレスト)(ドラゴン専用禁足地。魔法使い達が森の周囲に結界を張りそのエリアから出さないようにしている)に放し飼いになってるのだ。

見張りを増やすというのもここを見張る魔法使いを増やすのであって人が直にドラゴンの世話や監視などはしない(出来ないとも言う)。


「戸惑ったものの皇帝にそう言われれば嫌ともいえない。恐るおそる水を持って近づくとーー」

「飲んじゃったんですよね、ドラゴンが」

「………」

そこだけきくとドラゴンに丸呑みされたみたいにきこえるな。

ドラゴンに懐かれたら攫われました。

て なんかのファンタジーのタイトルにありそうだけどイヤだなあ。

「まあ、流石に水をやってくれ とは言ってこないだろうが少しでもそういう素振りがあったら言うんだぞ?もっとも…「あ」」

「どうした?」

「な、なんでもないです!」

黒太子に

”貴女ならドラゴンに相対出来る”

とか言われた事を思い出したのだ。

だがここで言うのはやめた方がいい気がする。

「何か思い出したようですね?」

なんだろうユリウスも怖い。

壁際に控えてたものの会話はきいていない筈だ。

「い、いえ。ただあの皇子はオーラが見えるらしくて私のは青白い炎のようだとか何とか言ってたなー、って」

「ほぉ?何でそんな話になったんだ?」

先程きかされなかったのが不満だったのかレオン様の笑みも心なしか黒い。

「私は主にあちらが話すのをきいてただけですが。あの扇術は素晴らしかった、とかって話からです。あの時私からそういうオーラが立ち昇ってたとか何とか」

この辺りは言っても差し支えないだろう。

「確かに、それは俺にも見えたような気がしたがーー」

「ええ。気のせいかとも思いましたが彼がオーラが見えるというのが本当ならよりはっきり見えたのかもしれませんね」

え レオン様達にも見えてた?て事は黒太子の気のせいじゃなかったのか??


「セイラを欲しがる理由はそれか?他には?何か言ってなかったか?」

「え…と」

ここで更に訊かれるとは…

「セ イ ラ?」

レオン様の顔が近づく。笑顔が怖い。私は一歩下がる。


やっぱり、


言わなきゃダメ ですか?


「私が言いたいのはつまりーー貴女ならドラゴンにすら相対出来るのではないかと言う事ですよ」

とか言われたこと。



レオンがちょいちょい君&私 から俺&お前呼びになってるのは暴走しない様に必死に王子様モードを保とうとしてるけどセイラ相手だとすぐ素が出るからです。また、セイラも元からこういう人だと認識してるので特に気にしていません。

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