恋の終わり、終わりの愛
こんにちは。会沢です。
いつからだったか、あの子が好きだった。
ふと、考えた時に、「ああ、俺はこの子が好きなんだろうな。」と、思った。多分それが恋と呼ばれるものなんだろう。
でも俺は陰にいた。彼女はそうじゃなかった。俺が彼女を好いているだけで、彼女は俺なんか気にもしてないわけだ。
正直悲しいが、仕方のないこと。俺はこうして毎日を生きてるし、彼女もああして毎日を生きている。変わる必要のない、摂理なのだ。
俺は人と話すのが苦手なんだから、女の子なんて到底無理なわけだ。だから、諦めてる。捉え方によっては気持ちが悪いが、同じ空間にいることが、俺には幸せなことだ。彼女が、容姿が良く、運動もでき、頭は良くはないが、話し上手な男の子と、楽しそうに談笑をしていても、嫉妬なんかや、悲愴はない。
ただ、彼女を見ていると、たまに目が合いそうになることがある。外でも見ようとしているのか、窓際の俺の方を向く。目を合わせるなんて到底できない俺は当然そこから目を逸らす。外を眺めてたそがれる彼女も見ていたいのだが、今は彼女の方を見れない。
そんな感じで生活をしていたが、変化が起こったのはしばらくしてだった。
交通事故──ひどく現実味のない報せだった。人が死んだという報せには聞こえなかった。ただ、耳に残っているのは例の男の子の悲鳴のような声。
告別式での記憶はあまりない。彼女の顔なんか見てないし、遠くから彼女の友達なんかがお互い抱き寄せながら泣き喚いているのを、何も考えずに見ているだけ。
しばらくした。あまりにも何も考えなかったから時間など気にならなかったし、もしくは俺の目の前に彼女の友達がいたことに数十秒気がつかなかった。
「××くん。だよね。」
女の子が言った。
「そ…そうだけど……。」
声は震えていたと思う。
「トモはね。あなたのことがね。ずっと好きだったのよ。」
なにを言われたかわからないし、「あなた」が指す者が自分だということに気づかなかった。向こうの声も震えていた。
「あなた、トモと幼稚園からずっと一緒なんでしょ。トモはずっと言ってたの。言わなきゃって。私たち……に……。だから…。お花を……。トモに………。」
その子は泣いていた。言葉も出ないほど。俺は状況がうまくつかめなかったが、脳が勝手に理解したのか、涙が出てきた。なにに対して泣いているのか。わからない。
花を受け取ると、棺桶へ向かった。長かった。とても長かった。
その日初めて彼女の顔を見た。安らかだ。
そういえば俺も君を好きになったのは、ずっと前かもしれない。と彼女に伝えるように思った。涙は止まってなかった。
花を手向けると、もう一度顔を見た。とても美しく、綺麗だった。
俺はそこを離れた。帰っている人もいたので、それに乗じて俺も帰った。
涙はまだ、止まってはいなかった。
それからいくらかたった。今日も花を供えに来た。もう何百回目だ。
俺の名前は忘れていいから、ここに毎日花を置いていくのは俺だということを忘れないでほしい。ということをいつも伝えている。
忘れてないよ
という声が聞こえてくる事は、まだ、誰にも言ったことがない。
ありがとうござました。