現れた少年
突然、ルルはばん!とテーブルを叩くと、焦燥を漂わせた真剣な顔つきをして早口で言った。
「とりあえず僕達と一緒に来てください!それが一番手っ取り早いです!」
「…兄様、本当は説明するのが面倒くさいだけなのでしょう?」
「えーそうなんだ。兄さんは何もわかってないのにいきなり連れてくの?うはー…」
キラと雛菊のうわー的な視線を受け流しながらもルルが俺の手を取り、玄関へと足を向けられ、家に入って早々な俺は一息つく間もなく早くも屋外に連れ出されそうだ。
「は?行くってどこへだよ…?つか、勝手に決めんな!!」
自分よりも明らかに年下の少年に半ば引きずられながら――この細い体のどこに男ひとりを引きずるような力があるのか――俺は意味わかんねーよとわめく。
「貴方に拒否権はありません。これも運命です、超ついてますね婿様!」
抵抗する俺にルルはきらきらと眩しいものを振りまきながら、極上の笑顔で言った。
うわー…今の、女なら絶対落ちてた。
でも、俺男だから同じ男相手になんか落ちないよ。
「ホント勝手だな…で、何がついてるんだよ」
今まさに俺はついてないと思うんですが。
本当超ついてない。
現状況を把握するにはあまりにも少ない情報で苛立ちに眉を潜めた俺だが…――。
「選ばれたんですよ、貴方は我等の王の婿に!美人ですよ、あの方は。よかったですね、おめでとうございます!心からお喜び申し上げます!!」
…美人ってのは気になるけど、王って何?
つーかその婿って何なわけ――?
しかも『選ばれた』って当選?
…いつそんなもん応募したっけ――?
あまりにも唐突のことで理解不能の頭は、つい現実逃避をしてみたくなる。
だが、それを理性が許さず別世界へ片足を突っ込んだまま、それでも現実を必死に見つめようと試みる俺は健気。
「あのぉ〜意気込んでるとこ悪いんですが俺、話が全然見えないんですけど…」
両手をがっちりと握りこまれ、愛らしい容姿を武器にきらきらの目で見つめられると、剣呑な態度もろくに取れない。
「あぁ…大丈夫です、僕についてきてくれればすぐわかりますから。さぁ、行きましょうっ!」
そんな俺をルルはレッツゴー♪とあいている片腕を振り、意気揚々と今度こそ有無を言わさぬ片腕だけの恐ろしい怪力で家の外へ連れて行こうとする。
「…だから、全くさっぱりわかんないんだけど」
ずるずると、わざと体重をかけて抵抗するにもかかわらず、俺は小柄なルルによって玄関まで連れて来られてしまった。
「も〜一体なんなんだよ…新手の宗教勧誘?それともある種のかなりのマニア?…俺はそーゆのお断りだぞ!だめだ、だめだ、だ…――」
ピンポーン…。
俺の声を遮ってチャイムが鳴ったと思った途端、玄関扉が不意に開き、姿を見せたのは身長およそ167センチほどの華奢な美少年であった。
「こんにちは、初めまして。僕の運命の人」
そういって少年は小首をコトンと傾げ、微笑んだ。