時麗因(トレイン)
僕は美術部の帰りで電車に乗っていた。
あと数分という所で電車がいってしまったので、いつもより一本遅い電車に乗っているのでいつもとは違くて人が少ない。
僕は音楽を聴くのが習慣なのだがそんな気分にもなれなかったのでぼーっと外を眺めていた
何分か電車が揺れ、次の駅に着いた時
一人の女性が乗ってきた
いつもはそんなに気にしないのだがその女性は、広々と広がる席の中で僕の前に座ったのである
気まづい
いつもは混んでいるので相席でも気まづくてもしょうがないと思っているのだが
多分、僕と彼女しか居ないのに何故僕の前に座ったのかが分からなかった。
まだ、僕が降りる駅まで二駅もあるしわざわざ避けた方が良いのか悩んでいると
「ねぇ、貴方。」
と話し掛けてきた
話し掛けてきたと分かるのは僕と彼女以外の客が居ないからだ
僕は驚きながらも
「なんですか?」
と返事を返した
内面では軽くパニックを起こしていたが思ったように口は動いた
彼女は少しだけ微笑み
「大丈夫よ。何もしないから」
と言い、手を広げて見せた
そして
「暇だからお話しましょうよ」
え。
こんなに話したがりがいるのか
彼女は不思議そうな顔をして返事を待っていた
多分話したがりなんだろうと思ったのと何かあれば携帯持ってるし大丈夫だろうと
「え、と良いですよ」
と笑ったが、引き攣った様な気がした
それじゃあ、と彼女は考える様な動作をしてあっと思いついたような顔をした
「それじゃあ、私の作り話を聞いてくれないかしら」
首を傾げ、質問した
作り話か。
僕は作家志望だったので聞いてみたいと思った
彼女がどんな話をするのか
半ばドキドキと興味深々だった
そして、静かに話し始めた
之は昔の話。
私の住む所には
「私ってフィクション何ですよね」
と話初めたばかりだというのに口を挟んでしまった
「そう、フィクションよ」
そう言った
トンネルに入って電気で彼女の帽子の影で表情を読み取ることはできなかった
続けるわよと続けた
行ってはいけない横断歩道があった
その理由は曖昧で
幽霊がでる…バケモノがでる
絶対に車に轢かれる…ってね
何故かその横断歩道は誰もいない森の中で
トンネルをくぐった所にあるらしいんだけど
車も滅多に通らないのに
必ず通った人間は車に轢かれてしまうの
噂になる前にその横断歩道を消そうとした工事の人が亡くなったって言う事が広まった
だから肝試しにくる馬鹿な人達は皆亡くなってるんだって
私はその時その噂を聞いてもなんとも思わなかったんだけど、私の従兄弟が近いし行ってみたいとか言いだしちゃってね
気味が悪いし行きたくはなかったんだけど
言ったら聞かない従兄弟だったから
ねぇねぇ行こうよってしつこかった
そして、行かないからと言ったらいいよ僕一人で行くから
そう言って走って行っちゃったから
当分ほっといたら帰ってくると思ったの
でもね、帰ってこなかった
帰ってこないどころか何処にもいなくなってしまった
私は従兄弟の親に執拗に怒鳴られた
私の親は私を庇ってくれたんだけど
従兄弟の親とは絶縁になったわ
私はどうしても従兄弟が気になった
だから、怖くても。
怖くても。
私のせいだから。
探しに行ったの
あの、噂の横断歩道に
近くとは行ったけど森の中だし、脚は疲れたし誰も手入れしてないから木や草は伸びっぱなし手が切れたり脚が切れたり大変だった
やっとトンネルまで着いたと思ったら
トンネルがね余りにも長く感じた
覗いても先が見えない
出口が見えなかった。
私はその時、小学生だったからとても怖かった
しかし、脚は何故か動いてて。
自分で動いている感じがしなかった
やっとの思いで
出口にでると暗い中でも見える横断歩道があったの
率直な感想は、本当ににあったんだ
って事だけだった
本当にただの横断歩道にしか見えなかった
森の中に、不自然に。
可笑しく。 不気味に。 当たり前のように
ただただ疑問がでてくるだけの横断歩道
渡ったら轢かれてしまう
そう言われていたけれど、従兄弟は渡ってしまったのか
それすら、この横断歩道じゃ分かりそうになかった
私はその事実にガックリと膝を落としてしまった。
本当はここにずっといて、私が迎えに来てくれるまで待ってるんじゃないか
なんて、そんな事を考えていたのに
全てを否定されたような感覚だった
そんな時、一つの考えが浮かんだ
此処にまだいるんだったら私から迎えに行かなくちゃ
どうせ、私はいらない子
ごめんなさい。お父さん、お母さん
従兄弟のお父さんとお母さんもごめんなさい
私がちゃんとしていれば、だから迎えに逝ってきます
ゆっくりと立ち上がり、一歩一歩。
惹かれるように
吸い込まれるように
横断歩道に近ずき、一番端っこの部分に立った
本当に轢かれるなんて分からないけど、やってみないと気が済まない
どうしても、迎えに行かなくちゃ
そして一歩踏み出した。
普通の道を歩くように、スタスタと歩く事が出来た
だか、脚は小刻みに震えてしまっている
なんだ、なんにも起こらないじゃない
従兄弟は何処にもいないじゃない
真ん中部分まで来た時
今まで森の中だったのに景色が変わった。
それは、都会という表現があっていると思う
そして、瞬く暇がない間に
視界が白くなっていた
身体にナニかが衝突してきた感覚
いや、吹き飛ばされて
アスパルトの地面に叩き落とされた
視界はいつの間にか赤に染まっていた。
運転手らしき人が降りてきたが、私の存在を認識出来ていないようだった
まって、まって
まってまってまってまってまって
とまって、助けていたい、いたいの
からだがいたい
そう思って運転手の脚を掴むことが出来た
運転手は気づいて、脚の方を見たけれど
映っていなかった
瞳には私の姿が見えなかった
え、と思っていると運転手はさっさと立ち去った
そして痛みに耐えながらも周りを見てみると沢山の人達が地面に這っていた
皆、痛みに苦しそうにもがいているが誰も動けそうにない
なんでこんなに人がいるのに気づかないのか
そう思ったけどすぐに気がついたわ
カーブミラーに這っていた人達の姿が映っていなかった
そして、私の姿も
おねぇちゃん。
声が聞こえた、これはあの日から一時も忘れてときはなかった従兄弟の声だ
すぐ横を見ると従兄弟がコッチをみているようだった
あぁ、あれほど会いたかった従兄弟が此処にいる
こめんね、これからはずっと一緒だからね
と言って、従兄弟を抱きしめた
そうして
この二人はいつまでもそこにいるのです
そう言って終わりと続けた
え、ここで終わりなの
疑問を持った僕は抗議の目で彼女を見た
「いいじゃない、どうせ暇な間の作り話なんだから」
と言って僕の頬をツンとつついた
僕は納得がいかなくて、疑問をぶつける事にした
「あの、なんであの人達は地面で動けないんですか」
そう言うと、ふふふっと笑って
「だって、皆死んじゃったから。地縛霊だからね」
うんじゃあと僕は続けた
「"私''が見えなくなって瞬間移動してたのは」
ここが一番頭の整理がととのはなかったところだ
理屈が通らなすぎる
「そうねぇ、それは貴方が設定をたしてくれればいいのよ」
閃いたように言った
続けて、ねぇと話し掛けた
「どんな設定が良いの」
何故か僕の事の様に聞いてきた
なんで僕にそんな事を聞くのかさっぱり分からなかったが、何故か彼女がとても恐ろしい人のような気がした
その時、シューと電車が止まった
アナウンスがこの駅はーー駅、ーー駅と放送していた時に
あら、と声を出して
「もう暇つぶしは終わりね」
時間が惜しそうに
僕の事を哀れに見ているように
そう言った
表現を変えてニコッと笑い
「じゃあね、いや、またね。作家志望のーーくん」
なにか引っかかるような
とその事を考える間に彼女は荷物をまとめて
「なんで僕の事の様に聞いたのかっておもったわよね」
と質問をして首を傾げながら荷物を持ち
「貴方の来世の人生計画だからよ」
最後に見た彼女の顔は恐ろしい悪魔のような顔だった