第七話
新話投稿に伴って、以降の展開に矛盾を生じさせるであろう点を発見したため、前話の修正を行いました。
今も言ったばかりだが、この外野で野宿をするということは自殺行為である。
治安の悪く、規制や統制が形骸化した街では割に当然の話だ。
しかし、中で野宿が安全か、と問われれば、その答えは否である。
無法者の居住地帯。
地の利を活かした不意打ちなんぞされようものなら、むしろこちらの方が危険度を増す。
少なくとも屋内…それも外からの客のみが泊まるホテルともあれば、旨味が少なく危険、という意味から襲う理由は無いはずだ。
前門の狼、後門の虎。
されば、残された選択は一つ。
「…エディ。今夜は、眠れんかもしれんぞ」
徹夜を覚悟の強行軍でボリバニを通り抜ける。
他には、ない。
ぽかん、と口を開けた少女が、この街に酷く不釣り合いなように思えて、少しばかり、おかしかった。
街の中を、出来うる限りの速度で走り抜ける。
彼女は今、私の腕の中である。
「……!」
最初こそ困惑と怯えを表情に滲ませていたエディだが、慣れてくるに従って徐々に楽しそうな表情へと変わっていった。
目まぐるしく変わり続ける景色は万華鏡のようで、確かに素敵…と言えなくも、ない。
かくいう私は、「姫」を落とさぬために精一杯注意を払っているわけだが…
幸いなことに、未だ私達は何かに声をかけられるということもなかった。
…メリットがない、というのは大きいだろうが。
漸く出口が見え…なんと。
方向転換し、物陰に隠れて様子を伺う。
門はあれど、その機能は既に形骸化した、と思っていたが…武装兵が立っていることから考えて、検問を行っているようだ。
…なるほど。
こちらから出る人間の多くは碌でもない人間だ…賢いやり方である。
それだったらこの街にはびこる悪を取り締まってくれ、とも言いたいところだが、それはそれ。
悪を根本的に殲滅するのは理論上不可能だし、再興しようにも、こんな辺境には人は寄り付かない。
結局のところ、悪を受け入れる場所は必要であって、欠けてはならないのだろう。
エディが不思議そうに見上げてくる。
…誤魔化せそうにない。
「あそこに兵が見えたものでね。検問でもしているのだろう…
正直なことを言わせてもらうが、私は自分の身分を証明できないのさ」
心の中で舌打ちをした。
これでは疑ってくれと言っているようなものである。
もう少しうまい言い訳はなかったのか、とも思うが、たかだか1.2週間程も「生きていない」人間にそんな機転が効くはずもない。
私の自責の念は、腕の中の少女の笑顔によってかき消された。
「なら…!」
「私に考えがあります。お任せしてもらえますか?」
当然、私は頷くしかないのである。
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