第五話
申し訳ありません、相当短いです。
「…もう大丈夫、です。
ありがとう、ございました」
そう言って少女は微笑んだ。
その言葉で我に返った私は、慌てて手を引っ込める。
何をしていたのか。
ふん、と鼻を鳴らす。
少し、頬が熱いような気がしたが、多分気のせいだ。
強い風が吹いて、私が被っていたフードがめくれ上がる。
少しだけ顔が顕になったが、すぐにかぶり直した。
…何やら、少女の目が煌めいているのだが…
「おねえさま…」
…!?
「いや、エディ。その呼び方は、ね…」
確かに、私に名前はない。
軽々しくその場でつける気もない。
すると、エディは勢いよく首を降ると、
「おねえさまはおねえさまです!
本当に、その、なんていうか…
おねえさま、という呼び方に最も相応しい容姿をお持ちなんですもの!」
褒められているのだろうか。
…まぁ、一つや二つ、小さな女の子の願いを聞いてやったところで、罰は当たるまい。
それはそれとして。
「君は、これからどうする?」
それが問題だ。
私としては、逆側に通り抜ける形…つまり、西の門から直ぐにでも出ていく心づもりだったのだが、少女…エディがどうするつもりなのか。
「わたし?わたし、ですか…」
エディは首を傾げ、少し考えるような素振りを見せる。
そして、何らかの結論を得たのか、口を開きかけて、また閉じる。
不安そうな瞳だ。
「何、私は時間だけはあるからな。
遠慮せず言ってみるといい、少しであれば付き合ってやるのも吝かにない」
いやいや。何故、私はこんなに偉そうなのだろうか。ごめんね。
エディに心の中で謝っていると、
「はい…あの、その、厚かましいお願い、かもしれない…んですけど…」
うん。
「わたしも、同行させて頂けませんか…?」
そう来たか。
「私は気楽で無責任な旅人だからね…目的地などない。それでいいなら、構わないさ」
虚をつかれたかのような顔をするエディ。
どうした、美少女っぷりが台無しだぞ。
「え、でも…本当に、宜しいんですか?
わたし、ただのお荷物です。
魔法も使えないし、戦闘も出来ませんし、お金だって、持ってません…」
何を不安がるかと思えば、そういうことか。
「構わんよ。ここで放置して死なれても目覚めが悪い…見ての通り私は愛想が悪くてね。人と話すのが得意じゃない。君、そういうのは得意だろう?」
そう。彼女、見るところ、人並み以上の知性を有している。
話し方や所作の一つ一つに気品とは滲み出るもの…
良家のお嬢さんじゃないかと当たりをつけてみた。
「は、はい…あの、でも、お邪魔でしたら、いつでも仰ってくださいね…?」
ないとは思うが。
しかし、この少女。人を疑うということを知らないのか。
どことなく、危なげのある子だ。
「必要とあらばな。
…聞きたいんだが、か弱い女性2人が、何故こんなところに?これより東には何も無い。
ここの治安も知っているなら、来る必要性はないはすだが?」
ん?私?か弱くないから問題外、だ。
エディは、目を伏せている。
しまった。傷を抉るような不用意な発言だったかもしれない。
「実は…わたし―」