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4.5「『俺は神だ』なんて小物のセリフだよ、それ。うぷぷ」


「あたしたちが――あんたを倒す!」




       4.5「『俺は神だ』なんて小物のセリフだよ、それ。うぷぷ」




 ぼくとアルネヤは武器を構え、マサトと相対した。

 さっきアルネヤが武器の回収を阻止したおかげで、マサトは丸腰だ。

 こっちが有利になった。


「舐めるなよ。武器くらい簡単に作り出せるんだよ、俺ならな」


 マサトはぼくらを睨みつけながら、"簡易詠唱(インスタントスペル)"を発動した。

 マサトの両手に光が収束し始める。


「させないって言ったでしょ!」


 すかさずアルネヤが杖を向け、"解呪(ディスペル)"した。

 パリンと気持ちのいい音と共に、固まった光が割れて空中に飛散した。

 しかし片手に集まった光だけだ。

 もう片方の手には既に光で出来た剣が握られていた。


「くっ、マサトの奴……同時に二つの"魔力光刃(マナ・ブレード)"を作ってたのね」

「武器を減らしただけで十分だよ、アルネヤ。この調子できみは"解呪"に集中してくれ!」

「言われなくても!」


 ぼくはマサトに向かって走り出した。

 今回の戦術は単純だ、ぼくが前衛でマサトと直接戦闘。

 そしてアルネヤは後衛で術式戦闘だ。


 さっきぼくがマサトと単独で交戦したときもそうだったけど、ぼくは術式に対して抵抗力がない。

 だから"浮遊(レビテーション)"みたいな、術士にとっては単純な"簡易詠唱"も防げないで劣勢に陥ってしまう。

 そのことはアルネヤと作戦を話し合った時点で互いに了解済みだった。

 結局のところぼくは、最初からマサトに単独で勝つつもりはなかったんだ。


 スピカは相手の術式を瞬時に解析して"解呪"するほど器用じゃない。

 破壊力に特化したスピカよりも、より柔軟に術式を扱えるアルネヤが対マサト戦では適任だった。


「術式を封じられようと、俺の剣技スキルで――!」


 マサトはぼくを"魔力光刃"で迎え撃つ。

 さすがに勇者の"剣技スキル"で強化された太刀筋だ。

 なかなか鋭い――けど。


「っ――受け止めた!?」

「いくらスピードが疾くたって、きみの視線と予備動作が太刀筋を教えてくれるよ」

「戯言を!」


 ナイフさえあれば、マサトの太刀筋を見切るのは難しくない。

 いくらスピードがあったって、いくらパワーがあったって。

 予測が成立すれば同じことだ。

 

「この六連撃ならどうだ!」


 マサトはさらにスピードをあげて連撃を繰り出した。

 剣技スキルに補助された凄まじい圧力の攻撃だ。

 だけど――ぼくは"黒水星"で全て防ぎ切った。


「こいつ――!」


 剣技が防がれると悟ると、マサトは掌を広げぼくに向けた。

 また"術式"の攻撃だ。

 だけど。


「"解呪(ディスペル)"!」


 アルネヤの対抗詠唱が聞こえる。

 彼女の姿を確認する必要はない。

 マサトの掌に集まりかけていた魔力光はすぐに打ち消された。

 さすがアルネヤ、優等生タイプだな。


「それに"術式"を使ったあとのきみは――隙だらけだ」


 ぼくはガラ空きになったマサトのわきに蹴りを叩き込む――ことができなかった。

 不自然な動きで蹴りを避けられ、すれ違いざまに肘打ちを繰り出される。

 ぼくは寸前で受け止め、一旦距離をとった。


「アルネヤ、その調子だよ。きみの術式戦闘能力はマサトを上回ってるみたいだ」

「当然でしょ。むしろ驚くべきはあんたでしょ、ニセ勇者。あんたのその剣術……明らかに――いや、今はいいわ。とにかく今の連携を保ってマサトを追い詰めるわよ」

「了解、ぼくがまた前に出る」


 そう言いながらぼくは考えた。

 アルネヤは、気づいたのだろうか。

 さっきぼくの蹴りを不自然に避けたあのマサトの動き。

 あれはアイナと戦った時に"アイナぱんち"を避けた時と同じ動きだ。

 未来を予知したような不自然な動き……。

 ぼくが相手の視線や表情、予備動作などから攻撃予測をするのとは違う。

 "見てきた"ような確信めいた方向転換。


 間違いない。

 マサトは『時を巻き戻す能力』を使ったんだ。


 マサトは有効打を受ける瞬間にその能力を使っている。

 いや――正確に言えば、『一度はその攻撃を受けていた』んだ。

 有効打を受けた未来のマサトは『時を巻き戻す能力』で『攻撃を受ける前』に戻ってきた。

 そして相手の攻撃を"予知"して避けた。

 あの不自然な避け方を説明するにはこれしかない。


 だけどそれは事前に予測していた通りだ。

 必要なピースは全て揃った。

 きみにはわからないだろう、マサト。

 それが無敵の能力だと思ってるんだろうけど……。

 きみが無敵になるってわけじゃないんだよ。

 それを教えてあげるよ。


「お前たち、やってくれるな……だがわかっているはずだ、アルネヤ。俺は無敵だ、絶対に俺が負けることはない」

「それはどうだろうね、やってみないと未来はわからないよ。ぼくたちは神様じゃないんだ」

「俺はプロメテウスなんだよ、ニセ勇者……この世界に叡智を授ける。炎の神だ」

「おいおい、勘弁してくれよ。『俺は神だ』なんて小物のセリフだよ、それ。うぷぷ」

「言ってろ、お前たちを殺す方法はもう思いついた!」


 今度はマサトから前にでた。

 ぼくはアルネヤを守るように迎えうつ。

 剣が幾度となく交わる。

 刃の火花が散る。


 展開はさっきと同じだ。

 マサトが攻撃し、ぼくが防ぎ切る。

 攻撃の中にマサトの"隙"はいくつもあった。普通の相手なら仕留められると思うけど。

 マサトは能力で時間を巻き戻して有効打を無効化する。

 だから攻撃する必要はない、能力を無駄撃ちさせるだけだ。

 

「お前……守るだけで勝てると思っているのか!?」

「どうかな、きみの攻撃がヌルくて反撃する気にもなれないのかも」

「――っ!」


 さらに攻撃が激化するけど、同じことだ。

 きみの剣術は単純なんだ。

 全て"黒水星"で防ぎきれる。

 だけどそれは重要じゃない。

 問題は――マサトがしびれを切らす瞬間。

 それを捉えることだ。

 それだけは絶対に見逃してはいけない。


「お前ら……俺をここまでコケにして……償わせてやるよ、絶対に――!」


 マサトが大きく目を見開いた。

 ここだ――!


 次の瞬間、マサトの姿が消えた。

 超加速。

 術式で瞬発力を最大限にまで強化したんだ。


 そうだろう、これしかない。

 この膠着状態を打破するには、マサト、きみは"無茶"を通すしか無いんだ。

 それがきみの綻びになる。


 マサトは極限まで加速した突進によりぼくを無視してアルネヤに接近し。

 そして――


 ザンッ!


 無慈悲な、乾いた音を立てて。


「――!」


 アルネヤの首をその刃が捉え。

 その頭部が、胴体から削ぎ落とされた――。



ついにヒロインの首をふっ飛ばしました。

元々はスピカが被害者になる予定だったのですが。


次回は3/26の16時を予定しています。

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