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3.8「時間を巻き戻す能力」




   3.8「時間を巻き戻す能力」




「奴隷の開放、そして『虐げられてきた者たち』が今度は『虐げてきた者たち』の上に立つ。それがハーレムギルドの目的ってわけか」

「そうよ、マサトは変わってしまった……虐げられてきた苦しみを、虐げてきた人たちにそのまま返すようになった……」


 アルネヤの話は終わった。

 ハーレムギルドとは、マサトを中心に獣人を始めとした被差別階級の者たちで構成された組織だ。

 差別や虐待を受けていた者たちを指して、マサトは"仲間"と呼んでいるらしい。

 だから神殿で修行し才能を開花させ、正規の"巫女"となった"幸せな"アルネヤは"仲間"じゃない。

 それがマサトってヤツの価値観らしい。


「ま、別に否定はしないさ。それが望みなら、存分にやってくれって感じだ」

「ゆ、勇者さま!? それでいいんですか、マサトさんをこのまま放っておけば大変なことに……」

「ぼくらはべつに正義の味方ってわけじゃないし、マサトにはマサトの正義があるんだろうから。これは価値観のぶつかり合いなんかじゃないよ。だけど……」


 だけど。

 きっとスピカは、それじゃ納得しないし。

 ぼくだってもう、覚悟は決めていた。


「あいつはアイナを誘拐した。アイナはぼくらの友だちだ。マサトと戦う理由はそれだけで十分だよ」

「勇者さま……!」

「だけどスピカ、悪いけどここからはバラバラで動こう。ぼくときみは別行動だ」

「ええ!? どうしてですか!?」

「これはれっきとした誘拐事件だ。だったら治安維持のために"迷宮機関"も動いてくれるだろう。きみは通報して来て欲しい。それと……できればラウラを探してきてくれ。彼女が泊まっている宿は聞いているよね? ラウラなら、ハーレムギルドにも対抗できる力があるはずだよ」

「確かに……ラウラちゃんなら助けになってくれるかも。でも勇者さまはどうするんですか?」

「ぼくは先にハーレムギルドに乗り込む」

「ひ、独りでですかぁ!? 危ないですよ!」

「早く行かないとアイナが危険な目に合うかもしれない。それに、ぼくは一人で行くわけじゃないよ」


 ぼくはアルネヤに視線を向けた。


「アルネヤ、マサトを止めたいって言ったよね」

「……できるわけがない」

「案外、やってみないとわからないかもよ? ぼくと一緒に来て欲しい」

「誰が、あんたなんかのために……」

「ぼくのためじゃないさ。スピカのためだったらどうかな?」

「何を言って……」

「だってきみ、スピカのこと好――」

「――あー! あーあー聞こえない聞こえなーい! わかったわよ、もう! 仕方ないから協力してあげるわよ!」


 アルネヤは立ち上がり、服についた砂埃をはたいた。

 さっきの戦いのダメージはある程度回復しているようだった。


「なんだ、元気じゃないか」

「元気じゃないわよ。"B・ファミリア"は全部撃ち落とされたし、直接戦闘は期待しないでよね」

「大丈夫、前衛はぼくがやるよ。きみは術式も得意なんだろ? 後方支援は任せる」

「ふんっ……ま、まあ、スピカのパートナーだから。少しくらい守ってあげるわよ」


「ありがとう、アルネヤちゃん! やっぱりアルネヤちゃんは頼りになります!」

「ちょ、ちょっとスピカ! いきなり抱きついたら……!」


 スピカはアルネヤに抱きついた。

 アルネヤは顔をかぁっと赤らめた。

 わかりやすい女の子だな。


「とにかく、決まりだね。アルネヤ、きみはぼくをハーレムギルドのアジトにまで案内してよ」

「しょうがないわね……」


「気をつけてくださいね、二人とも!」


 スピカは大きく手を振って、"迷宮機関"の施設まで走っていった。

 その姿を見送って、ぼくらも出発した。


「スピカを別行動にしたのはいい判断だったわね、あんた」

「あんたじゃない、一応ニセ勇者のニセって名前があるんだ。名前は覚えなくてもいいけど」

「どっちなのよ。ま、いいわ。ニセって呼んだげる。感謝しなさい」

「ありがとうございます。ぼくの界隈ではご褒美です」

「バカにしてんの!?」


 戦っている時のツンケンして高飛車な態度は、スピカと和解した今でも変わらなかった。

 これが彼女の"素"らしい。

 遠慮がいらないから良いけど。


「ニセ、あんただってわかってるんでしょ。マサトと戦えばただでは済まない。だからスピカを遠ざけた……」

「どうかな。ぼくは勝てない戦いはしない主義だ。それにスピカはきみに勝った。きみが思うほど弱くはないよ」

「あたしに勝ったのは、あんたがいたからよ……。気づいてるのよ、あんたは"普通"じゃないって……そうなんでしょ?」

「さあね。それよりもさっき言ってたマサトの能力って……」

「ええ、本当よ」


 アルネヤは深刻な顔でうつむいた。


「マサトの"祝福(エウロギア)"は……"祝福の書"で確認したあたしにしか全貌はわからない。そういうたぐいのものなのよ。体験しても誰も理解できない……まさに、究極の能力よ。これがある限り、マサトが死ぬことも負けることも、決してありえない……絶望するしか無い。あんたがいくら強くたって、普通じゃなくたって、無力なのよ……」


 アルネヤは続けた。


「あいつの能力は……あいつの"祝福(エウロギア)"は――」



 ――時間(とき)を巻き戻す能力、なんだから。





      第三話・終




次回は明日3月20日の23時を予定しています。


次からの第四話で話が一区切りして普通に冒険に出そうな感じです。

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