ヒロインさんとの出会いと秘密の言葉
ヒロインさんは小さな頃からしっかりした娘だった。
初めて出会ったのは、5才ぐらいだろうか? 領地が近く歳も同じだったので、よく一緒に遊んだ。正確には遊んでもらっていた、といったほうが正しいだろう。ケン玉・ヨーヨー・ボードゲームなどを発明して僕を楽しませてくれたのだから。
ともかく彼女はその時点でもう子供ではなかった。
そんな僕とヒロインさんが12才の時、
「幼馴染くん、手伝ってほしいことがあるの」
いいよ。なんだい、ヒロインさん?
僕が気楽に言うと、彼女は途方もないことを話し始めたのだ。
自分が異世界からの転生者であること。
ここが乙女ゲームの世界であること。
将来内政チートしたいから、王太子と結婚するのに協力してほしい。
転生者やら乙女ゲームやら何がなんだかわからなかったが、彼女はかみ砕いて解説してくれた。
「おかしなことを言ってると思うかもしれないけど・・・」
はい。頭がおかしくなったのでは?
「本当のことよ」
どこがですか!
僕はぜんぜん信じなかったが、ヒロインさんはある予言をした。
「幼馴染くん、キミはもうすぐ引越すことになるわ」
なんでですか?
「親戚の男爵家の養子になるためよ」
信じてませんでした。でも・・・
本当に引越すことになった!
「だから言ったでしょう。私は『チート』なのよ!」
ところで『チート』ってなんですか?
「ダメ。それは乙女の秘密よ!」
教えてもらえませんでした。