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それゆけ! ヒロイン監修・新生王国軍

北国・西国連合軍が攻めてきたのは奴隷解放宣言の影響があります。

わが国の奴隷たちが平民になったため、その噂を聞いた両国の奴隷たちが自分たちの身分差を解消して欲しいと騒ぎ出したのです。


わが国も両国に宣言批准を求める→関係悪化→両国は宣言撤回をわが国に求める→関係悪化→輸出入の差し止め→関係悪化→なんらかの制裁→関係悪化→・・・


こんな具合に負のスパイラルに陥り、今回の戦争となったのでした。


王国は北と西、二方向から攻められることとなります。

北方軍と西方軍がそれぞれ連合国軍に対してその場で持ちこたえ、中央軍の援軍を待つというものです。あらゆる面でスピードが必要となるでしょう。


「そのための常備軍であり騎馬隊じゃない!」


ヒロインさんは自信満々です。


「チャラ男、お前を大将軍に任命する。敵を蹴散らしてこい」

「うん。わが軍の力を見せてやるよ!」

「しっかりね。チャラ男くん」

「よーし。ヒロインちゃんにいいとこ見せるぞー」


こうしてチャラ男は中央軍を率いて出兵しました。


そして・・・“ 大敗北 ” を喫しました。


「いったいどういうこと? 北国軍の兵力はこちらより少なかったはずよ!」


ヒロインさんは絶叫しました。

俺様も堅物も顔面蒼白です。そしてたぶん僕もです。


敗因は常備軍と馬でした。この二つはとにかく金食い虫で、税収の安定化に失敗している現状では維持するのも難しく、ガタガタの状態だったのです。

厩舎にはろくに走れない馬しか居らず、馬上戦闘の訓練をしていた騎乗兵が、地上で戦うというちぐはぐさ。


さらに、個人の戦闘技能では普段から剣術訓練している王国兵が上でしたが、敵は個人技でかなわないと見るや体当たりしたり・組み付いてきたり泥臭い闘いに引きずり込んできました。華麗な剣の訓練の通用しない戦いに、味方はつぎつぎと倒れていったそうです。


他にもいろいろな要因が重なり、王国軍は崩壊しました。


チャラ男は敵に囲まれ、あっさり殺されたそうです。

目撃者の話では、


「死にたくない、助けてくれよー。助けてくれたら、なんでもいうこと聞くから・・・」


と泣きながら命乞いする、見苦しい死に様であったそうです。


「ともかく、すぐに対応策を・・・」


堅物宰相が言うと、


「南へいったん退き、兵の再編を行う」


俺様王が発言しました。


ここにいる重臣一同、 え? です。


「お待ち下さい。陛下、王都を見捨てるのですか?」

「見捨てるのではない。次の戦いは負けられない、万全を期さねばならぬ。王都は城壁すらなく、攻めやすく守りづらい所なのだ」

「ですから打って出て、有利な場所で迎え撃つのです。東方軍にも援軍にきてもらいましょう」

「悪役令嬢の軍などあてになるものか!」


俺様と堅物の言い合いが続きます。

そして、二人の間に入りこめる唯一の人物が、最終決定を下しました。


「いったん南へ近衛騎士軍を率いて、後退しましょう」


もちろん、ヒロインさんです。


「俺様王の言うとおり、そこで兵の再編を行います。もしものことがあっても、船で海上に逃れ再起することができます」

「そのとおりだ」


重臣たちは何も言いませんでした。


絶望した! 国王に絶望した!

絶望した! 王妃に絶望した!


そんな感じでした。

南にいるのは海軍です。なにをどう再編するのでしょう?

そして、船で逃げてどう再起するのでしょう?


こうして僕たちは、王都から後退いや、逃げ出すことになった。

このとき近衛騎士軍の半数が王都を見捨てられないと残ったり、逃げだしたりで離脱しました。西方軍も敗北したと報せが届き、ここに新生王国軍は滅んだのでした。


「幼馴染」


堅物宰相・・・


「君はわれわれと一緒に南へ行く必要はない。この手紙を悪役令嬢さんに届けてほしい」


悪役令嬢さんに?


「ああ、ようやく目が覚めた。私は長い間、夢をみすぎたようだ。どうして父が死の間際に、まだ死ねない、と無念そうだったのか・・・ようやくわかったよ」


後半は僕に言ったわけではなく、独り言のようでした。


ともかく手紙を受け取り、悪役公爵領に全力で向かいました。


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