プロローグ
平安時代の藤原薬子は薬とは関係ないが現代に生きる藤原薬子はそうではない。ばりばりの現役薬剤師。薬科大学薬学部を卒業後一貫して公立病院勤務。つまり公務員でありかつ薬剤師という立場だった。
公務員には異動がついてまわる。彼女の場合もそうで紙きれ一枚で転勤を命じられて二,三年に一回は職場を変わった。やっているうちに薬務課にも配属になり、厚生労働省とも縁ができた。後年病院で臨床の現場にもいたということで、医療監査、査察にも関与することにもなる。
仕事命の薬子にも恋の季節はあって縁があって厚生労働省薬学職の史眼政史と結婚することにした。だがある事情ができて二人は半年ももたず離婚。そして再度の恋愛で再婚。それが藤原さんだったのだ。
再婚相手の藤原彫須は薬剤師ではなかった。だがまたもや国家公務員で転勤族。夫婦とも転勤族では家庭生活は成立しない。かくして薬子との地方公務員としての仕事をするには限界があり、やむなく退職。だが薬剤師としても仕事はずっと続けるつもりだった。
薬子は一度退職はしたものの、薬剤師そのものの仕事は天職だと思っているのでパートでも細々と続けるつもりであった。だから病院をやめるには躊躇はなかった。医師免許、看護師免許、薬剤師免許、とかく医療職の国家資格は職種としては仕事は求めやすく充実はしている。どこでも選ばなければ雇ってもらえるところはあるだろう。
それは薬子の思う通りで事実ではあったが、薬子はもう一つの使命を追うことも多い。それは厚生労働省の内々の指示で某派遣会社の薬剤師として登録しておき、密命をおびた状態で仕事をするということ。密命の内容はいろいろではあったが、忍者みたいだな、とは思いつつ表面上は薬剤師の仕事をすることには変わりない。そして一緒に病院や会社や調剤薬局内で働く同僚は薬子の密命とは全く関係ないので初めから最後まで知らないことが多かった。
これから始まるのは薬子の活躍歴ではある。
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