第九十三話
「どこ行ったんだあいつら?」
エリスと別れたのち、俺はオークに連れていかれてしまったリゼット追って狭い通路を進んでいた。
「オークの奴ら『ぶひぃ』とか言ってたから、てっきり足が遅いものだと思ってたけど、そんなことはなかったな……むしろ結構はやい」
そう言えば同じ豚の仲間?である猪もかなり足が速いイメージがある。
というか、豚自体ひょっとすると足は速いのだろうか。
「って、そもそもオークって豚なのか?」
見た目的に豚の仲間、もしくは豚が進化して二足歩行になったものだと解釈していたが、その見解は正しいのだろうか。
まぁ全体的に豚なイメージあるよな。
「~~~~~~~~~~っ!」
と、俺がオークと豚の関連性について思考のスパイラルに陥っていたら、何やら遠くの方から声が聞こえた気がした。
「今の声……リゼットだよな?」
少し女の子っぽい声だったし、おそらくそれで間違いないだろう。
もっとも、オークにメスで可愛らしい声の出せる個体が存在しているのならば、話は変わってくるが。
「ふむ、メスのオークで可愛い声を出す個体か」
…………。
………………。
……………………。
「うん」
考えなかったことにしよう。
今、俺の脳裏をよぎったのは全てなかったことにしよう。
「危うくとんでもないクリーチャーを生み出してしまうところだった」
仮にあんな生物が居たら、この世界に待ち受けているのは間違いなく破滅だ。
マオが魔王として本格的に活動し出すよりもよっぽど怖い。
「~~~~~~~~~っ!」
と、またも聞こえてくる声。
「やっぱり間違いなくリゼットだな、妙な事されてなければいんだけど」
俺は足を速めるのだった。




