第八十話
「誰よあんた!」
「お兄さんに調教された肉奴隷です」
「は、はぁ!?」
片やベッドにちょこんと座っているリン。
片やその眼の前に立ち、喋る度に大げさな動作を行うエリス。
「奴隷って何よ!? この変態!」
「変態っていうのはいうけどさ、それを俺にいうなよ! 妄言だからな!? 全部そのダメ狐の妄言だからな!?」
「お兄さん、酷いです……あんなことをしたのに」
「あ、あんなって何よ!? このロリコン!」
「……あぁ」
やはり面倒くさい事になった。
絶対に面倒くさい事になるとは思ってたけどさ。
「ふっ」
思わず笑ってしまう。
寸分たがわず予想通りになって。
俺が色々と考えつつもリンの横に座っていると、再び彼女らが会話を開始する。
「ところで貧乳さん……あなたは誰ですか?」
「だ、誰が貧乳よ! あんただって貧乳じゃない!」
「自分が貧乳に見えるのは偶然ですよ」
「偶然ってどういうことよ! ちゃんと理解できる言葉で話しなさいよね!」
「ところで、貧乳さんの名前……あなたは誰ですか? 一応言っておきますが、自分はこの城の主……魔王リンです」
盛ったな。
こいつはこの城の主ではないし、魔王でもない。
どうせ貧乳比べでの勝敗を諦め、他の部分で勝とうと話を盛りだしたのだろう。
「え、あんたも魔王なの!? この城には主が二人いるの!?」
信じてるバカもいた。
「ふーん、変わった城ね……べ、別に驚いてるわけじゃないんだからね!」
「それで、あなたは誰ですか?」
「何度も言わなくても聞こえてるんだから!」
そこでエリスは「おほんっ」と軽く咳払いをし、腰に両手を当て、ない胸を逸らしながら言う。
「あたしの名前はエリス……悪魔の王にして――えっと、この世界を総べる存在よ!」
……酷い。
こっちも話を盛りだした。
こいつはいつから悪魔を総べるものになったのだ。
何はともあれ自己紹介が終わったことだし、そろそろ話に参加させてもらおう。




