第六十九話
何やかんやと色々あったが、ミーニャの魔法が使えることようになったので、ようやく俺たちはリビングへと戻ってくることが出来た。
「ふ、ふふん! あたしのおかげなんだから、感謝しなさいよね!」
「あ~はいはい」
「何よその態度は!」
「あのな、俺たちは今掃除してるんだよ! ぎゃぎゃあ言うなら座ってないで、お前も手伝え! 掃除という戦いに置いて、役立たずは不要なのだ!」
床の上に寝転がって、ミカンを貪っているだけの役立たずに向けて俺が言うと、その役立たずことエリスはキッと俺を睨みながら返答してくる。
「あっそ! そういう事言うんだ……でも誰だっけ? その役立たずのおかげで地下室から出れたのは? 役立たずが助けてくれなかったら、缶詰だったの誰だっけ?」
「お、お前な……」
「バーカ、バーカ! あんたなんて、あたしとミーニャが居なかったら、永遠に地下室に閉じこめられて、ミイラみたいにカピカピになってたんだからね!」
「っ!」
なんという口の悪さ。
リンのおかげで深くなった器が音を立てて崩壊しそうだ。
だがしかし、こいつが言っていることも一理ある。
永遠に閉じこめられてミイラにはならなかっただろうが、未だにリンたちが帰って来ない以上は、下手をしたらかなりの長期戦になっていた可能性もあった。
まぁ感謝はしている。
感謝はしているが、
「ふん、身の程を弁えなさいよね!」
いつの間にやら立ちあがり、そんな言葉と共にミカンの皮を俺の頭へぶつけてくるエリス。
「え、エリスちゃん……さすがに謝った方がいいんだよ!」
「…………」
ミーニャがエリスに注意をするが……ふ、ふふ。
謝る?
もう遅い。
「天罰じゃぁああああああああああああああああああああああああああっ!」
さすがに頭にきた俺は瞬時にエリスへと接近、そして脳天目指して渾身のチョップを振り降ろ――
「のじゃ!?」
「……のじゃ?」
どうしてこうなったのか。
エリスを狙ったはずのチョップは、突如描かれた魔法陣からいきなり現れたマオの脳天に直撃。結果として、
「お師匠さまが一撃で気絶しちゃったんだよ!」
「…………」
どうやら魔王の弱点は耳と耳の間らしい。




