第六十七話
「それじゃあ聞かせてもらっていいか?」
本当に不本意ながら、俺がエリスへと向きなおって言うと、
「それが人に物を頼む態度? ちゃんと頼みなさいよね!」
「……っ」
やばい、顔面がピクピクと小刻みに痙攣しているのがわかる。
だいたいこいつは何なのだ。
さっきは自分で説明するとか言った癖に、いざ説明する段階になったら偉そうに……と、この世界に来たばかりの俺ならば確実にツッコミを入れていただろうな。
だが、今の俺は少しばかり違う。
リンのせいで俺の器は日に日に大きくなっているのだ。
この程度でいちいちツッコミを入れたりは――
「じゃあ説明するから、良く聞きなさ――っ」
「結局説明するのかよ!?」
「!?」
いやいや、そんな驚いた様子でビクってするなよ!
むしろ驚いたのはこっちの方だよ。
俺は大人な対応で「説明してください」と言うつもりだったのに、まさか自分が言った事を自分でスルーして説明を始めるとは思わなかった。
やはりリンとは違ったベクトルで面倒くさい奴だな、こいつは。
「ちょっとあんた、いきなり大きな声出さないでよね!」
「あ~すまんすまん、それじゃ続けてください」
「な、何よその言い方!」
面倒くさい。
どうして俺の周りには、本当に面倒くさい奴しか集まらないのだ。
「ふん、まぁいいわ! あたしは心が広いから特別に許してあげる……べ、別にあんたのためじゃないんだからね!」
「…………」
とりあえず、リアルで「べ、別に~だからね!」の台詞を聞くことになるとは思わなかった。とだけ言っておこう。
「そこのあんた……確かミーニャって言ったわね! とにかくミーニャがあたしを召喚できた理由は簡単なんだから!」
ミーニャは「ふふん」と鼻で笑いながら周囲を見回して続ける。
「どうやらこの部屋には魔法を封じる結界が張られているみたいだけど、あたしが持って生まれた固有魔法――アンチマジックにはまるで効果ないんだから!」
アンチマジック……だと?
まるで意味がわからない、何かすごいのかそれは?
イマイチ凄さが伝わってこなかったので、横目でミーニャの方を伺ってみたのだが、
「?」
ミーニャもミーニャで首を傾げている。
となると、真相を知るのは唯一人。
「何でそんな顔するのよ! もっと驚かないと許さないんだからね!」




