第五十四話
「よ、ようやく休める」
風呂に入っている最中、いつもの如くボケまくり通してくれたミーニャとリン。
さらに今回は珍しく、そのボケにリゼットも加わったおかげでまるで疲れが取れなかった。
「ふぅ……」
本当に風呂とはなんのためにあるのだろうか。
少なくとも、俺にだけ限って言えば風呂とは疲れるためにある。
これは俺が実際に感じた確信である。
「でもまぁ」
さっきも言った通り、ようやく休む事が出来る。
現在は風呂上り、俺は「責任を取ってください」と俺から決して離れようとしないリンを無理矢理引き離し、ミーニャたちと別れて自室に戻ってきた。
念のために言っておくが、一人である。
もうどうしようもなく一人である。
実は現実逃避でリンが居る何てことは今回ばかりは絶対にない。
今この時、俺は完全に一人である。
「晩飯も食べた、風呂も入った……もう夜もいい時間だし、あんまり起きていても嫌な予感がするからな」
主にミーニャたちが俺の部屋にやってきて、わんやわんやと騒ぎまくってさらに俺を疲れさせると言った嫌なイベントとかな。
うん……本当にリアリティがあって嫌だ。
「寝よう、もう寝よう……うん、そうしよう」
何だか本当に嫌な予感がしてきた。
今にもそこの扉が開いて、ミーニャとリンが突入してくるような幻が見える。
「…………」
扉。
扉が見える。
「……っ」
俺は思わず息を呑む――あの扉が禍々しい何かを放っているように見えたからだ。
やばい。
絶対にくる。
「いかん」
さっき寝ると決めただろう。
俺は部屋の灯りを消し、室内を真っ暗にすると、予め敷いてあった布団の中へと体を休める。
別に寝たからといってくる時は来るので、今の行動にあまり意味はないかもしれない。
それでも、なんだか寝て居れば大丈夫的なジンクスがあるのだ。
「奴らが来る前に俺は寝る、寝てやるぞ」
瞳を閉じ、無心をもって全力で意識を闇へと落とす努力を開始するのだった。




