第五十三話
「いや、待て」
「お兄ちゃん、さすがに犯罪だよ!」
「ミーニャ様の言う通りです、さすがにまずいと思います」
犯罪?
まずい?
俺は何もしていないぞ。
「なんとなくお兄ちゃんの言動と行動を見てて、そんな感じはしてたけど……まさか本当にやるとは思わなかったんだよ」
「そんな感じって何!?」
「お兄様、妹とはいえそういう説明をさせるのは犯罪ですよ」
「だからそういうってなに!?」
「っ――」
顔を真っ赤に染めながら、俺から視線を逸らすリゼット。
うん。
この人はいったい何に恥ずかしがっているのだろう。
俺には全く理解できないよ、リゼットさん。
というか、
「お前ら体隠せよ! せめてタオルの一枚くらい巻けよ!」
俺がビシっと指さしながらツッコむのは、ミーニャとリゼットの恰好。
全裸だ。
気持ちがいいくらいに全裸だ。
しかもあまりにも堂々としているので、もう見てもこう……男性特有のアレが来ない。なんかそこにあって普通な物を見ている気分だ。
気分なのだが、だからと言って全裸でいいわけでは決してない。
「お前ら恥ずかしくないの!? 男だぞ、俺!」
「え、だってミーニャは妹だし」
「私はお兄様なら別に」
「…………」
ダメだ、こいつら。
どうやら俺とは根本的に感性が違うようだ。
「はぁ」
溜息一つ吐きながら、どんどんたまっていく疲れに辟易していると、
「お兄さん、お兄さん」
ぺたぺた。
と、俺の左腕が何度か叩かれる。
そちらを見るとそこには例のダメ狐が居て、
「お兄さん、責任取ってください」
「だから何の!?」
余計に俺の疲れがたまっていくのだった。
おかしい、どうして俺は風呂に入っているのに、まるで休まらないのだろうか。




