第四十三話
「何やってんの、お前?」
何とか自力でバーベキュー場に付くと、
「あ、お兄ちゃん達遅いよ! 早くしないとお肉焦げちゃうよ!」
バカが居た。
「お、お前な……」
本当にバカだ。
もうバカすぎて何も言えない。
まぁこいつは仮にも俺の妹なので、あまりバカバカ言うのはある意味で自分もバカにしていることにもなりかねないため、例え本当にバカだとしてもそこまでバカバカ言わない事にする。
と、心の中でバカをバカバカと罵るのをグッと堪え、バカ……もといミーニャへと問いかける。
「お前、何してるの?」
するとミーニャは「何が?」とでも言いたげに首を傾げ言う。
「普通にバーベキューだよ?」
「…………」
いかん。
ミーニャは本当に何もわかっていないようだな。
自分の行動の何が問題なのか。
俺は心の中で散々ためを作ってから、一気に言葉を解き放つ。
「お前言ったな!? 俺たちに待っててって言ったよな!? なのにどうしてここに居るの!? 何で一人でバーべキューしてるの!?」
「おぉ! お兄ちゃんがツッコんだ!」
嬉しそうに言うミーニャだが、俺としてはまるで嬉しくない。
この世界に来てから、なんだかツッコミを入れる頻度が高まった気がする。
完全に俺という人格が崩壊して来ている。
俺がガックリと疲れ果てているのに気が付いたのか、リゼットが続きを引き取ってくれる。
「それでミーニャ様、どうしてお一人でバーベキューを?」
「あ、うん……実はここについたらデッカイ龍が居てね、そいつと戦っている間に忘れちゃった!」
「っ! 龍は倒したのですか!?」
と、突如ぐいっと食いつくリゼット。
「もちろんだよ! お肉のラインナップに龍の肉も追加されたよ!」
「素晴らしいです、さすがミーニャ様です!」
「えへへ! 頑張って切り分けたよ!」
わかった。
些細な事でイライラしていた俺こそが本当のバカだったのだ。と、二人のほんわかしたやり取りを見ていると思ってしまうから不思議だ。
まぁ実際、今はぶすぶすと焼け、唯の食用肉と化した龍と戦っていたというのなら、かなり重大な仕事をしていたわけだし、俺たちも迷わずに到着できたのでさしたる問題はないだろう。
にしても、
「龍――ドラゴンか、一回くらい戦ってみたいな」
とかいうと、なんだか某漫画のバトルマニアのようなので、実際は口に出さず胸の内で囁く程度にとどめるのだった。




