第四十二話
「お兄様、どうするのですか?」
「……いや、俺に聞かれても」
まるでカルガモの子供の様に俺の後ろをせっせとついてくるリゼットに、ほんわかした物を感じつつも俺は言う。
「自分の感覚を頼れとしか言えない」
「感覚ですか、勉強になります!」
そう、今必要とされているのは自分の感覚だ。
時は昼、場所は先ほどと同じ山の中。
だがしかし、状況だけが異なっていた。
「まさかミーニャの奴、迷子になるとは思わなかった」
とりあえず上の方へと進んでいるが、これでは正確な目的地がわからないではないか。
「……はぁ」
あれは件のブタさんを先に運んでおくと、ミーニャが魔法で飛んで行った後に起きた。
いつまでたっても戻って来ないのだ。
先ほどの一連の立ち回りを見る限り、何かあったとは思えないため、確実に道に迷ったと考えるのが妥当だろう。
「まぁ惜しむらくは」
俺とリゼットが道に迷っていると表現できなくもない事だ。
鬱すぎる。
「いやでもまぁ、俺たちは同じ場所で待っていただけだし、迷ったのは確実に向こうのはず」
「しかし、勝手に歩き始めたのは私達ですよ、お兄様」
「うぐっ」
リゼットもなかなか痛いところを突いてくるようになったものだ。
だが、いつまでも同じところに突っ立っているのは精神的に辛いものがある。
それに言い訳をするならば……とかいうと、俺たちが迷っているのを認めてしまいそうになるが、いつまでたっても戻って来ないミーニャも悪いのだ。
とにかく今は頂上にあるというバーベキュー場を目指して歩き続けよう。
そこまで行けば見晴らしもいいだろうし、どこぞを浮遊しているミーニャを発見できるはずだ。と、俺は時折襲ってくる豚型モンスターを倒しながら先を進む。
そして俺が七匹目のブタさんを倒した時、
「お兄様」
と、リゼットがパタパタと俺の方へ駆けよってくる。
そしてそのまま横へと並んだリゼットは、俺たちの進行方向やや上を指さし、
「煙りが見えます、ミーニャ様では?」
「あ~」
まぁその可能性は高そうだが、もしミーニャだとしたらどうして一人でバーベキューをやっているのだろう。
「まさか迎えに行くのを忘れていたとか言わないよな」




