第四十一話
なにこれ?
それがミーニャのプランに従ってこの場所へ来てからまず思ったことだ。
本当にこれ、なに?
「お兄ちゃん行ったよ!」
上空から聞こえてくるミーニャの声。
それに呼応するかのように眼の前の茂みから飛び出してきたのは、豚が二足歩行したような獣人。
「なんだよ、本当に!」
闇雲に突っ込んできたそいつの腕を取り、地面へ叩き伏せると同時に、頭部へ強烈な一撃をお見舞いして意識を飛ばす。
それからしばらくすると、空からフワフワとミーニャが下りてきて言う。
「お兄ちゃん、それは魔物……モンスターだから倒しちゃってもよかったのに?」
これがモンスターならば、街中を歩いている二足歩行のライオンとかは何なのだろう。
俺にはその違いが全く分からないが、もう一つ気になったことがあるので聞いておく。
「倒す、とは?」
するとミーニャは「えっとね」と、にこやかにほほ笑みながら気絶した豚さんに杖を向け、
「こんな感じ?」
…………。
………………。
……………………。
「…………」
うむ。
今見たことは見なかったことにしよう、そして記憶から抹消させていただこう。と、俺が苦笑いを浮かべていると、茂みがまたも揺れる。
また豚型モンスターかと身構えた俺とミーニャだが、
「ミーニャ様、もう一頭見つけたので狩っておきました!」
茂みから出てきたのは、モンスターを背負って誇らしげな笑みを浮かべるリゼットの姿だった――あえて口にはしないが、モンスターの体液やら何やらで、服がべっとり濡れていてそこはかとなく狂気を感じた。
「はぁ……」
「何の溜息、お兄ちゃん?」
「いや、何でこんなことしてるのかなって……ね」
俺は周囲に広がる大自然を見渡す。
というのも俺たちは現在、旅館近くにある山の中で絶賛山登り中なのだ。
もっとも開けてみれば、モンスターがうようよしている山のため、何かのクエストでも受注したような状況になっているわけだが。
「さっきも言った通りだよ! この上のバーベキュー場で景色を見ながらお昼を食べるんだよ!」
言って、ミーニャは先ほど倒したモンスターとリゼットが背負っているモンスターを、交互に指さし続ける。
「食料も現地調達出来て一石二鳥なんだよ!」
「ミーニャ様! ここに食用の薬草が生えて居ます!」
「えへへ、リゼットさんやったね! これで野菜にも困らないよ!」
「…………」
こいつら。
バカだ。
何がとは言えないが、何だかふとそんな事思う今日この頃であった。




