第四十話
「あれ、リンは?」
それから数分後、改めて旅館のロビーに集まった俺たち三人。
そう三人だ。
集まったのは俺、ミーニャ、リゼットのみ。
何かおかしくないだろうか、何か人数が足りないような気がする。
いや、絶対に足りない。
よって俺はもう一度だけ、ミーニャとリゼットに問いかける。
「あれ、リンは?」
すると今度こそ俺の質問を聞きとってくれたのか、二人で楽しそうに会話していたミーニャとリゼットがこちら振り向いて言う。
「リンちゃんは来ないって!」
「は?」
「リン様は出かけるよりも、旅館の部屋にあるゲームで遊んでいたいとのことです」
「ゲーム? そんなのがこの世界にあるのか?」
「えへへ、お兄ちゃんが想像しているのちは違うけど、この世界にも似たようなのがあるんだよ! 夜になったらみんなでやろうね!」
「ん、あぁ。それは構わないけど……」
リンはバカなのだろうか。
と、俺はテレビ画面に向かってコントローラーを弄るダメ狐の姿を想像する。
この世界のゲームがどんなのかは知らないが、イメージ的にはさして間違いはないはずだ。
「それにしてもあのダメ狐……」
あんな無茶な方法で旅行についてきたくせに、結局部屋の外には出たがらないとは……いったい何のためについてきたのか理解に苦しむ。
「まぁまぁお兄ちゃん、リンちゃんはリンちゃんなりに楽しんでるんだよ!」
「旅行に来て、一人で部屋に閉じこもってるのが楽しいか?」
「楽しんだよ! ね、リゼットさん?」
「は、はい! 私もそう思います!」
ミーニャに乗せられているだけのリゼットの意見は参考にならないが、実際そうなのだろうか。
せっかくみんなで出掛けるのに、一人だけ引きこもっているのが楽しいだろうか――普段ならまだしも、今は旅行中なのに。
「まぁ悩んでいても仕方がない、あいつとは帰ってから遊んでやろう」
「そうだよ!」
「私もそれがいいかと思います。リン様はお兄様に懐いていますから」
さて、そうと決まればする事は一つだけだ。
俺はミーニャに向き直って言う。
「来る前に旅行プラン立てていたよな? なんかおすすめスポットでもあるのか?」