第三十八話
「さてっと、ここが俺の部屋か」
内装は日本の温泉地にある昔ながらの旅館と同じく、畳に障子と気持ちがいいくらいに和風。
純日本人の俺としてはとても落ち着く内装なので、嬉しい事この上ない――嬉しさのあまり思わず、どうして異世界なのに日本と同じなのか疑うのを忘れるほどである。
とまぁそんな事はどうでもいい。
問題は、
「どうしてお前らがここに居るんだよ!?」
「ツッコミが遅いよ、お兄ちゃん!」
「申し訳ありません、私はお兄様の傍に居た方がいいかと」
などと言いながら、旅館に常備されているらしき木製のパズルで遊んでいる二人が、こちらに向き直りながら言う。
「ところでお兄ちゃん……」
「部屋が一緒だと何か不都合ですか?」
そろって無邪気な顔を俺に向けながら、二人はそんな事を言う。
本当にわかっていないのだろうか。
いや、ミーニャはともかくリゼットは本当にわかっていなそうだな。
「リゼットはともかくとして……」
「わ、私はともかく、ですか」
いや、そんな残念そうにガクって項垂れるなよ。
別にダメだって言っているわけじゃなんだから――むしろリゼットはピュアだって、遠まわしに褒めているのだから。
「お兄ちゃんがリゼットさん泣かした! いーけないんだ、いけないんんだ!」
「はいはい、泣かせてないだろ?」
「えへへ」
楽しそうに笑いやがって。
まぁある意味、初めての家族旅行だからな。
ミーニャがこんなに騒いでいるのも、まぁ納得できるのだが、
「部屋が一緒なのは納得できん!」
俺とミーニャたちは性別が違うのだ。
しかも全員いいお年頃、間違いが起きてからでは遅いのだ。
「え、でも家族でしょ?」
「いや、まぁ家族だけど……リゼットとかはあれだろ?」
「また私ですか!?」
「お前もいちいち反応するなっての! ってか、一般的に男女は別の部屋だろ!」
「えぇ、でもぉ!」
「でもじゃありません!」
言って俺は二人の……主にミーニャの背を押して部屋から強制退室させるのだった。
なおこれは余談だが、ミーニャはこうなる事を予想していたらしく、しっかりと自分たちの部屋を予め用意していたらしい。
そこまで用意がいいのなら、最初からこんな事をしないでほしい。
そう思う今日この頃である。




