第二十一話
なんだか相手の名前を聞くだけでかなりの時間を要してしまった気がするが、とりあえずコミュニケーションを取るのに必要最低限のことはクリアした。
ここから先はリンともう少し話しながら、徐々に仲良くなっていくのがいいだろう。
というか、俺はこいつの何を面倒見ればいいのだろう。
そんな事を考えていたのだが、俺はすぐにその答えを知る事になる。
「ところでお兄さん、用事がないのならもう寝たいのですが」
と、うとうとしながら――というより、もう半分くらい寝ているような顔でこちらに言うリン。その姿はとても可愛らしいのだが、
「寝るってお前、さっきまで寝てたよな?」
「はい」
「なのにまた寝るの?」
いい加減寝過ぎだろう。
時間はもう昼過ぎくらいのはずだし、これ以上寝ていると夜に眠れなくなるなどの弊害がでてきてしまうだろう。
それに、この時間にまた眠りだすというのは、そこはかとなくダメ人間な空気が漂ってくる。
俺がリンの眠る発言について色々と考えさせられていると、彼女はあたかも当然のことを聞かないでくださいみたいな顔をして言う。
「まだ全然眠っていません、一日二十時間は眠らないと自分は生きていけません」
二十時間、だと?
ちょっと待て、この世界の一日の時間は確か元の世界と同じはずだ。
「そんな顔して、どうしたんですかお兄さん?」
「いや、どうしたも何もさ……お前一日何時間起きてるの?」
「ん~」
そんなに考える事でもないだろうに。とはあえて突っ込まずに、俺が彼女の答えを待っているとリンは眠そうに尻尾を振りながら答える。
「二時間くらいですね」
「ふーん、二時間か……って、二十時間以上眠ってるじゃねぇか!」
「!」
いかん、またリンがプルプル震えだしてしまった。
落ち着け俺、俺はこんなにツッコミを入れるような人間じゃないはずだ。でも何故だろう、なんだかこいつを見ていると、非常にツッコミを入れたくなる――この衝動はいったい何なのだろう。
まぁそれは置いておくとしてだ。
俺はマオからこいつの世話を頼まれている以上、このまま寝かせるわけにはいかない――あいつが俺にどこまでの世話を求めているのかは知らないが、俺は頼まれたからにはやる。
それが金を貰える仕事とあってはなおさらだ。
「おいリン、何でもいいからとりあえず着替えろ」
「唐突ですね、お兄さん。マオ姉さんを毒牙にかけた次は自分なんですね。でも自分は――」
「あぁもういいから、とにかく着替えろ!」
「必要性を感じませんよ、お兄さん」
少し話して理解した。
おそらくこいつは重度の引きこもりだ。
「やってやる」
「お、襲うんですか……プルプルプル」
今の発言は完全無視するとしてだ。
どうせここでこいつの面倒見るが仕事なら、俺はこいつを脱引きこもりさせる。
そのためにはまず、こいつを着替えさせて部屋から連れ出す。




