第百四十八話
「何を教えればいいのじゃ?」
翌日、俺は自宅の裏にてマオと向かい合っていた――要件はもちろん、魔法を教えてもらうという例の件だ。
「何を意外そうな顔をしておるのじゃ」
例の件なのだが……さっそく困ったことになっている。
「言い方を変えてもう一度聞くのじゃ、おぬしはどの魔法を学びたいのじゃ?」
「えーっと……」
そう、問題とはそれだ。
どの魔法――ふむ、そもそも魔法についてまともな知識を持っていない俺に、学びたい魔法などという質問を投げかけられても困る。
だってそうだろう。
魔法に種類がある事は、ロープレなどをやっていたので知っているが、いざ選べと言われると困るに決まっている。
ロープレの魔法は学ぶ局面になれば、スキルツリーみたいなものがあり、さも何を学べば最終的にどういう魔法を使えるようになるか知っているのが当然みたいな作りになっている。
だが、これはリアルだ。
リアルゆえに、何をどう学べば最終的にどんな魔法が使えるようになるのかがわからない・使いたい魔法のイメージはあるのだが――。
と、俺がそこまで考えたところでマオは言う。
「少し難しかったようじゃな」
尻尾をフリフリ、耳をピクピク。
気が利く狐っ娘であるマオは続ける。
「おぬしが使えるようになりたい魔法――そのニュアンスを言ってみるのじゃ」
使いたい魔法のニュアンス。
そんなあやふやなものでいいならば……。
「二つの場所を行ったり来たり出来るようなものがいいな」
そう、俺はそういう類の魔法が使いたい。
そういう魔法が使えれば色々な仕事でアドバンテージを活かせるだろう――例えば
荷運びとか、旅行関連にも使えそうだ。
「うん、俺はそんな魔法を教えて欲しい」
「なるほど、わかったのじゃ。我がおぬしを一人前の魔法使いにしてやるのじゃ!」
こうして、本格的に修行が始まったのだった。