第百四十七話
どうせ俺の店でやるのならば、俺独自の何かをやったほうがいい気がする。
俺は異世界からやってきたわけだし、確実にその方がいいだろう。なにせ、その方がオリジナリティもあるし、かぶる可能性も減るというものだ。
それにその方がきっと楽しい。
「という訳でここに来たんだけど」
「全くどういう訳で来たのかわからないのじゃ……」
「ほら、この世界で俺らしい商売をするためには、やはり魔法を習得した方がいいと思うんだよな」
今更な気もしないでもないが、せっかくなので利用できるものは利用したい。
「ミーニャに聞いても良かったんだが、やはりここはお前に教えてもらった方がいい、そう思ってな」
「別に我に聞かなくても、リンに聞けばいいのじゃ」
「いや、あいつは……」
あいつに聞くと適当に教えられそうな気がする。
教えられた結果、魔法が暴走して爆発したり、予期せぬ事態が発生したりと本気で怖い――そう、わりと冗談抜きで爆発したりするのが怖すぎる。
ふと想像してみる。
やる気満々で魔法を練習し始めた途端、魔法が暴走して両腕がふっとぶとか……いや、体ごと吹っ飛ぶ可能性もある。
「…………」
スプラッタすぎる。
絶対に嫌だ。
そもそも魔法というものについて知らないのだから、暴走したところで本当にそのような事態が発生するかなどはわからないのだが、リスクはなるべく排除した方がいいだろう。
そう考えると、教えを乞うをべきはマオしか残されていないように思うのだ。
「今は忙しいのじゃが……仕方ないのじゃ」
マオはしばらく悩んだのち、コクコクと頷いたのち言う。
「とりあえずゲアラブアを――」
「はい」
とりあえず、用意しておいたゲアラブアをマオに渡すと、彼女は一瞬だけ目を異様に煌めかせる――そんなに好きなのだろうか。
それはともかく、肝心の返事はどうなのだろうか。
やはり魔法はそう簡単に教える訳にはいかなかったりするのだろうか。
「今日は時間的に中途半端じゃからな、明日もう一度……いや、ゲアラブアを事前に準備しておいたおぬしに免じて、ここは我が直々に行ってやるのじゃ」
うむ、どうやら教えてくれる気満々だ。
少し肩透かしだったが、まぁ無事に望んだ展開に運べてよかった。