第百四十三話
「よし、人員確保!」
こういっては何だが、あまりもチョロすぎてリゼットは将来が心配になる。
彼女は俺が先ほどの件を切りだすと、少し考えたのちあっさりと言ったのだ。
『よろこんで働かせていただきます』
半ばその答えは予想していたが、一応理由を聞いてみたところ――お兄様と同じような行動をすることも修行の一環という事らしい。
うん、よく意味がわからない。
ようするにリゼットは、俺が誘えば何でも付き合ってくれるという事でいいのだろうか。
チョロすぎる……というか、やはり将来が心配になる女の子だ。
こっちの世界にあるかは分からないが、押し売りとかにすぐ引っかかりそうな気がする。むしろ、詐欺全般にすぐ引っかかりそうな気がする。
「まぁリゼットの将来が心配というのはおいおい何とかするとして、今考えるべきは店を出すにあたって最後の問題」
すなわち。
「土地をどうするか、だよな」
だが、これにはすでに解決策をいくつか見つけてある。
その一 土地を買う。
その二 土地を借りる。
その三 屋台や露天のような事をする。
おのずとこれら三つに絞られてくるだろう。
しかし、最初に挙げた『土地を買う』はそもそも実現不可能な気がする――なんせ俺には致命的に金がない。
日常生活に困らない程度の金はあるが、ちょこちょこ使っていたりするため、土地を買えるほどの潤沢な資金はないのだ。
そうなってくると、候補は後ろ二つになってくる――土地をただで貸してくれる奴が居れば、一番いいのだが、さすがにそんな奴は居ないだろう。
居ないだろう。と、俺が溜息を吐きかけた瞬間。
「お兄ちゃんが困っている気配がするんだよ!」
言いながらガシっと俺に抱き付いてくる人物。
「…………」
果たしてその人物こと、妹様は俺にとっての救世主になってくれるのだろうか。
俺は人知れず瞳を閉じ、この世界の神様にお祈りするのだった。