第百三十五話
「なるほどな」
この世界にどのような店があるのかを調べるために、俺は現在家の周囲を見て回っているわけだが。
「いつもは何とはなしに見ているだけだけど、こうやって見ると色々な店があるな」
食料や雑貨店などがあるのは、元居た世界と同じだ。しかし、ちらほらと通常では考えられないような店が混じっているのは、やはり異世界ならではという奴だろう。
具体的にいうと。
「武器屋に防具屋……」
RPGの中では見たことはあったが、まさか現実に見る日が来るとは思いもしなかった。
まぁ存在する事は予想していたけどさ。
こういう店がないと、リゼットとかリゼットとかリゼットが持っている武器の類の入手法がわからないからな。
「それはともかく、じゃあ武器屋と防具屋をやるかっていうと、それはないよな」
こういう世界である以上、この様な店には中々の需要があるとは思う。
しかし、専門的な職業故に今から手に職をつけるのは難しいだろう――まぁ俺が本気を出せば二ヵ月くらいでかなりのものは作れそうだが。
「ブランド力だもんな、こういうのって結局」
さすがに長年かけて育ててきた店特有のブランド力に関しては、どうしようもない。
それにあんまり時間かけるのも嫌だしな。
「なんだダラダラと仕事を始める準備をしていたり、ダラダラと就職先を探したりしてると、最終的に働くのが面倒くさくなって、ガチニートになってしまう気がする」
俺に限ってそれはないと思うが……。
思うのだがしかし。
「恐ろしきかな」
最近の俺は以前ほど、ニートに嫌悪感を抱いていない。
完全に環境の影響だろう。
あと、周りに居る人物の影響――そう、考えてみればニート率が高いのだ、俺の周りは。
「だからといって、俺までニートになるわけにはいなかない」
っと、今はニートについて考えて居る場合ではない。
「もうこの際あれだ……マオに取って代わって魔王とかになってみるか。あくまでイメージだが、魔王ともなればかなり儲かるだろうし」
「いやー、さすがにそれはないと思うぜ!」
「やっぱりそうか?」
「ミーニャから聞いたけど、なんだか中二病っぽいっていうんだろ?」
そう、それは俺も思っていた。
この年齢で魔王目指す!とか言ってしまうと、凄まじく中二っぽい。
「っていうかさ、お前いつからついて来てたの?」
と、いつの間にやら俺の隣を歩いていたクーへと声をかける。
「最初からだぞ!」
「…………」
そうか、最初からか。
ついて来てしまった以上は追い返すのも悪いし、別に仕方がないだろう。それにあのダメ狐ことリンが付いてきてしまうという事態よりはマシだろう。
これがリンだと、また面倒くさい事態に陥っていた可能性が非常に高い。
なので俺はある意味で内心安堵しつつ言うのだった。
「じゃあ手伝ってくれるか、俺の事?」
「私は最初からそのつもりだぜ!」
俺はポンポンとクーの頭を撫で、散策を再開するのだった。