第百三十二話
「お兄さん……遅かったですね」
「…………」
「どうしたんですか? 自分を不思議そうな顔で見て……ふぅ、寒いです。寒いので炬燵に戻らせてもらいます」
「…………」
なんだ今の駄狐は。
というか今何が起きているのだ。
冷静になれ、冷静になって考えろ。
こういう時は周りの意見も取り入れるのが重要だ。
「なぁ……お前ら、どうなの?」
「はい、急いで帰宅しましたら」
「氷が溶けてたんだよ!」
「しかも平然とお出迎えにきたわね」
と、順々に状況説明をしてくれるリゼット、ミーニャ、そしてエリス。
そう。
急いで帰ったら家の氷は完全に溶けていた――しかもノックしてみたら、中から眠そうかつ怠そうにリンがご登場なさった。
その第一声は――。
『熱かったり寒かったり面倒で鬼畜です……ふぅ』
ふぅ。
ふぅと言いたいのはどっちか考えてほしいものだ。
炬燵の温度を上げた俺も悪かったとはいえ、家を凍り付かせた迷惑狐のために奔走した結果がこれだ。
何事もなく無事に済んだのはいいが……。
済んだのはいいのだが……。
「はぁ……まぁいいか」
「お兄ちゃんの対応が意外なんだよ!」
「いやなんかもう今日は疲れた」
というかそもそも、俺は何をしようといたのだったか。
「あぁ、炬燵か……」
そうだ、炬燵問題を解決しようとしていたのだ。
「…………」
泣ける。
たったそれだけの事に、これほどの時間がかかるとは――本当に泣けてくる。
「なぁミーニャ」
「なに、お兄ちゃん?」
「お前の魔法で炬燵の大きさ変えたりできないのか?」
「出来るんだよ! お兄ちゃん頭いいね!」
「…………」
頑張ろう。
そう思う一日だった。