第百三十話
「見たら許さないんだからね!」
「見ないし興味もないから安心しろ」
「興味ないって何よ! そういう言われ方すると、あたしだって傷つくんだからね!」
「いやお前……じゃあ見て欲しいのかよ、オシッコすると――」
「この変態!」
「……はぁ」
こいつバカだわ。
何の脈絡もなくて申し訳ないが、ふとそう思った――こいつはバカであると。
だってどう考えてもそうだろう。
エチケットというかモラルというか、こういう場合はとりあえず興味ない、見たくないと言うのが正解のはず。
なのに何だ?
最終的に言われた言葉は変態?
理不尽すぎるだろ。
しかもエリスの奴、俺が最初に興味を持っていないと言ったのに対し、それでは傷つくだのなんだのと言い返し、まるで俺を誘導するかのようにオシッコを見――っ!
「待て、待てよ!」
「え、待つって……オシッコを? も、もう我慢出来ないんだからね!」
こいつまさか、俺を誘導したのか?
俺を変態扱いするためだけに、この俺を見事に誘導したとでも言うのだろうか?
だとしたら。
「とんだ策士だな」
「策士? オシッコを我慢する事が? な、なんだかよくわからないけど、褒めたって我慢できないんだからね!」
俺は最初からエリスに踊らされていたという訳か。
バカだと思わせること自体が、こいつの作戦だったのにまるで気が付かなかった。
嵌められた。
「見事にハマったよ」
「あ、あたしがオシッコ我慢しているのにハマったの!? 変態! どれだけ業が深いのよ! 全悪魔もビックリの業の深さよ! で、でも……あんたがどうしてもって言うなら、我慢してあげてもいいんだからね! でもあんたのためじゃないわ、あたしが我慢したいからなんだからね!」
ん、なんだ?
俺が一人で考え事している間に、エリスが妙に騒いでいる気がする――どうせ虫が出たとこかそんな事だろう。
この前も家にゴキブリみたいな虫が出て、大騒ぎだったからな。
「どうした? なんか出たのか?」
「っ! 何にも出してないわよ……この変態! 我慢させてそれに興奮して、終いにはその質問……あんたいつの間に変態度マックスになったのよ!」
「はぁ?」
なーに言ってんだこいつ。
エリスが言っている事が高度過ぎて理解できない。
「まぁ何でもいいけど、頑張れ」
何を頑張るのかは知らないけど、とりあえず言っておけば問題ないだろう。
「が、頑張って我慢するわよ! でもあんたのためじゃないんだからね、勘違いしないでよね!」
うん。
そうか、頑張れ――よくわからないけど。
俺はしゃがんでプルプルし始めたエリスにガッツポーズしたのち、くるりと体の向きをかえて歩きだすのだった。
「今度は放置プレイ!?」
背中でエリスの叫びを聞きながら。
最近オープンワールドで有名なフォールなアウトのナンバリング四作目にハマっています。
ハマっているので……サボってごめんなさい!