第百二十九話
「お前さ」
「な、何よ!」
「そういう反応するっていう事は、俺がなんて言いたいのかわかってると思うが、それでも一応言わせてもらうぞ」
俺は背中の荷物をよっこらせっと背負い直してから、背中の荷物に声をかける。
「溜息つきまくってた俺を爺さん呼ばわりしたくせに、爺さん呼ばわりした本人が先に疲れてダウンするってどういうことだよ!」
「う、うるさい! バーカ、バーカ!」
そう。
背中の荷物ことエリスは、しばらく歩いたと思ったら「ダメ、もう歩けない!」などとほざきだし、終いにはその場にしゃがみこんでしまったのだ。
『べ、別におぶって欲しいわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!』
『あぁ、うん。じゃあ頑張って歩け』
『あ、ちょっ……と、特別におぶらせてあげてもいいんだからね!』
『…………』
『なによぉ!』
……うん。
たいして集中しなくても、あの時の会話がすぐ蘇ってくる――おそらく面倒過ぎて脳裏に焼き付いてしまったのだろう。
俺だって鬼じゃない。
素直に疲れたといえば、少し文句は言うかもしれないが、ちゃんとおぶってやるものを。
「なに黙ってるのよ! なんか言いなさいよね!」
「ん、あぁ悪い。聞いてなかった」
「っ!」
ポカポカポカ。
そんな可愛い音と共に俺の頭が叩かれる。
「それで何だ?」
。
まぁ無いだろうが、重要な事だったらマズいので、俺は思考を中断してエリスの言葉に耳を傾ける。
「……こ」
ん?
聞こえなかった。
「……っこ」
「は?」
「オシッコって言ったの! この変態!」
なるほど。
面倒くさすぎる。