第百二十六話
人数に対し、炬燵が小さい時どうすればいいのか。
そんな場合の対処法は、自然といくつかに限られる。
1:大きな炬燵を購入する。
2:同じサイズの炬燵を買って、今ある炬燵の横にくっつける。
3:人数を減らす。
さて、この中から真っ先に除外すべきは3――人数を減らすだ。
そもそも現実的ではない。
この家の本来の住人は俺とミーニャであるが、現状を考えるにまるで説得力がない。何せ実際に我が物顔で多くの住人が存在するのだから。
となると残るは1か2。
「……ふむ」
まず2についてだが、炬燵を二つ並べて使うってありなのだろうか。
まぁなしではないが、あまりやっている人は居ない気がする。
次に3についてだが……そんな炬燵あるのか?
炬燵っていうのは基本的に四人用で作られているはずだ――この世界の炬燵の基本概念がどうなのかは知らないが、そうなれば当然売っている炬燵も四人用しかないはず。
まずい。
当初は一瞬で解決する問題だと思ったが、考え出すと地味に難しい問題だな。
「という訳で、何とかならないか?」
と、俺は色々考えながらやってきた魔王城の一室、この城の主――マオと向かい合っていた。
「何でそこで我が出てくるのじゃ」
「いや、お前すっごい魔法たくさん使えるんだろ? だったら今ある炬燵に魔法をかけて、大きさを変更したりできないかなーっとな」
「我は便利屋じゃないのじゃ! それにリンにやらせば――」
「マオ、よく考えろ」
「?」
「寒い。炬燵。出てる。リン。入ってる」
「な、なんじゃ? 何を言っているのじゃ」
「俺がさっき言った単語、それらから導き出される答えがあるだろ」
「寒い……炬燵……リン……っ!」
ふっ、わかったようだな。
「一度炬燵に入ったが最後、我の妹はそうそう動くような奴ではないのじゃ……」
そう、その通り。
だからこそ俺はわざわざマオのところに来た。
「それで、何とかならないのか? もちろん俺に何か出来る事があれば、何でもやるつもりだ」
「でもおぬし、何だかんだいつも失敗するのじゃ」
「…………」
何だろう。
こういう時に『ぐはっ!』という言葉と共に倒れればいいのだろうか。
「冗談じゃ冗談……あとふと思ったのじゃが、ミーニャに頼めばいいのではないかの?」
「ミー……ニャ?」
はっ!
そうだ、あいつも魔法使えるのすっかり忘れていた!
「助かった、ありがとな!」
「う、うむ……」
俺はマオの頭をポンポンと撫でると、急ぎ足で自宅に引き返したのだった。