第百二十一話
「とりあえず……」
現在俺はゲアラブアのために訳の分からない大会に出るという事態に陥っているが、さらによくわからない事態に陥った。
何だか言っていることがごちゃごちゃし過ぎて、そもそもよくわからなくなってきているが、俺自身もよくわからないので、よくわからなくてもご了承願いたい。
まぁ俺の内心のごちゃごちゃを解決するためにも、ここはとにかく聞かせてもらおう。
「お前何してるの?」
俺が眼の前に居るダメ狐ことリンにそう問いかけると、彼女は「どうしてそんなこと聞くんですか」とでも言いたげな顔で……。
「どうしてそんなこと聞くんですか?」
「…………」
まさかの予想通りの回答。
こいつはびっくりだ。
「いやだからだな、お前は宿屋で寝てたんじゃないのかよ?」
「お兄さん……自分はゲアラブアあるとこに駆けつけ、ゲアラブアは自分の下に駆けつけるんです」
「……うん」
よくわからない。
誰か俺にわかる言語に翻訳してくれ。
「よくわからないけどさ、ここに居るって事は俺と戦うってことでいいのか?」
「虐める気ですか……鬼畜です」
「いやちげーよ!」
「冗談はさておき……自分はゲアラブアを食べたいです」
「つまり?」
「そういうことです……面倒くさいですが」
まさかリンと戦う日がこようとは思いもしなかった――性格的にもポジション的にも、こいつはダルダル系だと思っていたからだ。
だけど興味はある。
魔王であるマオの妹なのだから、かなりの強さを秘めているはずだ。
別に交戦中毒という訳ではないし、実際かなり怠いが……まったく楽しみではないという訳ではない。
「勝てるとは思ってるのか?」
「思っていますよ……負けられない戦いがあるんです」
言ってリンは瞳に闘志の炎を灯しながら俺を見つめ続ける。
「それは今……ゲアラブアを手に入れるために!」
珍しくやる気な様子のダメ狐。
面白い。
「だったら俺も全力でやってやるよ」
逃げちゃだめだ……この前は仮病で親知らずの抜歯から逃げてしまったが、明日こそ抜いて来ようと思います。
みなさん……よろしければ心のどこかで応援よろしくお願いします。