第百六話
我ながらあほくさい会話を永遠と繰り返しつつ、何とか俺たちはオークが大量に居る例の場所までやってきた――ここまでやってきた要件はただ一つ。
「おーい、お前らー! 集まれー!」
何とかクーを説得した結果、たくさん肉をたべさせてくれるなら……と、そんなやすい条件でオークに命令を下すという言質を取れたからである。
そして今、クーは声と共に身振り手振りでオークを集めている。
「長かった……本当に長かった」
ここまで来るのに、かなりの時間がかかった気がする。
クーの話が本当ならば、オーク達は族長の命令にはちゃんと従うとの事。
つまり、ここでクーが俺との約束を破らず『もっとしっかりしろ』という旨をオークに伝えれば、俺がマオからもらった最初の仕事は無事に完了となる。
「はぁ……」
にしても、最初の仕事からこの難易度。
「これから先が思いやられるな」
マオの城にはまともな思考回路を持った奴は居ないのだろうか。
みんなどこかおかしい気がする。
「マオのやつ、魔王の癖に人を見る目……魔物を見る目がないんじゃないか?」
と、俺がこれまでの苦労とこれからの苦労。そしてマオの目を心配していると、クーがパタパタと駆けよってくる。
こうしてみると本当に幼女にしか見えないな、あいつ。
元がオークだとは到底信じられない――というか、おそらくだいたいの人は信じないだろう。むしろ、元がオークなどと言えば、俺の頭が疑われるレベルだろう。
「なぁ……なぁってば! 無視すんなよな!」
「ん、あぁ悪い」
いかん、完全に違う事考えて居たせいで、クーから結果報告を聞くのを忘れていた。
「えーっとだな、結論から言うと――ダメだ!」
よし、これで最初の仕事は無事に――って。
「は?」
「いや、だからダメだった!」
ちょっと待て、どういう事かわからない。
「何がダメだったんだ?」
「オークに命令するのが」
「……何で?」
「なんかな、あいつら私のことを族長だと認識してないみたいでな! 何やっても通じないんだよ! まったく、参ったぜ!」
「…………」
「……どうすんだ?」
「……ニャ」
「?」
「ミーニャはどこだぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!」
こうして俺は、かなりの時間を無駄にしたのだった。