第百五話
「それでな、クー」
俺が先ほど適当につけた名前(とりあえずオークだから『クー』にした)を呼ぶと、ベッドをトランポリン代わりにして飛び回っている幼女が、鮮やかに床へと着地……俺の前まで歩いてくると言う。
「なぁ、腹減っ――」
「また!? お前さっき食ったばっかりだよな!?」
「おう! でもあれから結構たったしな!」
「経ってねぇよ、まだ数時間もたってねぇよ!」
「えーっと……でも、あれから運動したしな!」
運動。
まさかこいつは、ベッドの上で飛び跳ねていたアレを運動だというのだろうか。
トランポリンが運動ではない――そう言うつもりはないのだが、ベッドの上で飛び跳ねるのだけは、断じて運動ではない。
確かに体を動かすという意味では運動だが、本質が異なっている気がする。
そう、あの行為の本質は埃を周囲にまき散らしているだけ。
という訳で、こいつが言っていることは全面的に無視。
「さっそく本題に入るが……」
「なんだよ、無視するなよな――わーわーギャーギャー!」
と、何やら後半なんて言っているかわからないほど喚いていたクーを無視し、俺は伝えたかったことを伝える。
「お前さ……というかお前らオークって、もう少しまともに訓練したりとか出来ないのか?」
「無理だな!」
「即答!?」
「おう!」
素敵な笑顔でサムズアップ。
なんかイラッとした。
「少しは考えて喋れよ、お前絶対になんも考えてないだろ!」
「だったらなんか食い物よこせよな! 私だって女の子なんだからな!」
「関係ねぇよ! むしろ女の子は食い物食い物言わねぇよ!」
「あはは……ちっ、バレたか」
バレたも何もない気がするのは、俺の勘違いだろうか。
にしても参った、予想よりもこいつはアホだ。
それだけは間違いない。
「んで? 何で無理なんだよ?」
「私が命令しないからに決まってるだろ!」
「命令って何、お前偉いの?」
「当たり前だろ! 私は族長なんだぜ?」
そうかこんなバカが族長か。
というか、だからこいつを人間にして話通じるようにしたのだった――すっかり忘れていた。
ただ思う事は……。
「じゃあ命令しろよ、このバカ!」