第百四話
幼女に餌付けする。
何だかそこはかとなく危ない感じのする行為から数分後、俺と件の幼女ことオーク娘は再び俺の部屋へと戻ってきていた。
「ぷはぁ~……食った食った、もうお腹いっぱいだぜ!」
「ん、まぁ……」
まぁあれだけは食えばお腹いっぱいだろうよ。
当初は部屋にあった残り物を渡したのだが、「私だってレディなんだかんな! もっといっぱい食べるんだかんな!」という謎理論で御代わりを要求してきたオーク娘。
結果、彼女は部屋の食料だけでなく、メイドさんに無理言って作ってもらった大量の料理を一人で食い尽くした。
この幼い身体のどこにあの量が?
そんな事も思ったものだが、よくよく考えると元があの巨大なオークなのだ。
別にこれくらい食べても不思議でも何でもないのかもしれない。
「何見てんだよ!」
「あ? 別にお前を見てたわけじゃ――」
「うっせぇ! この変態!」
…………。
………………。
……………………。
うぜぇ。
リンとかとは違ったベクトルのウザさだ。
こいつは口が悪すぎる――やはりオークは所詮オークなのだろう。
まぁいい。
リンによって鍛えられた、俺の鋼の自制心を見るがいい。
お前の口の悪さなど、完璧にスルーして対話に臨んでやる。
「えーと、まずはお互いの自己紹介から始めようか? 俺の名前は――」
「私の名前はオークだ! それ以外ねぇぞ!」
何だ、俺はもう名乗れない呪いでもかかっているのだろうか。
それは置いておくとして、一つ気になる事がある。
「オークってのは種族の名前だろ? お前個人を現す名前はないのか?」
すると案の定、彼女は首を傾げて難しそうな顔をする。
「それって不便じゃないか? だってオークって呼んだら、他のオークも全員振り返るわけだろ?」
「ぷっ! お前面白いな、変態の癖に!」
褒められたのか、それとも貶されたのか……俺には判断する事が出来なかった。
あと、何が面白いのかも全く理解できない。
どうやら彼女と俺の笑いの壺は圧倒的にずれているようだ。
「まぁ何でもいい……不便だから名前、適当につけるぞ?」
「おう、任せるぜ!」