第九十九話
「む~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
「…………」
「ん~~~~~~~~~っ!」
「…………」
幻覚か錯覚か。
俺の頭がどうにかしてしまったのだろうか。
とりあえず、今眼の前に広がる光景を目に焼き付けてみよう。
目に焼き付けることが出来るほど、そこにしっかりとあるならば、眼の前にあるこれはやはり確かな現実なのだから。
「…………」
そして俺はゆっくりと眼の前の惨状を目に写す。
まず真っ先に目に写ったのは様々な拘束具。
部屋自体が醸し出す雰囲気からして、かなり犯罪的かつ変態的なイメージを否応なしに押し付けてくる。
ここまではいいだろう。
ぶっちゃけあんまり良くないが、まぁいいだろう。
問題は次だ。
「……ナンデコウナッタ」
拘束されているのは一糸まとわぬ幼女だった。
「…………」
俺は無言で頭をポリポリとかいて視線を外し、数秒後にもう一度目を向ける。
「……うん」
やはり幼女だ。
拘束された幼女が「ん~ん~~」言いながらもがいている。
どこからどう見ても、そして何回見直してもやばい奴だ――犯罪的かつ変態的なアレだ。
「どうしてこうなった」
何回だって言わせてもらおう。
「どうしてこうなった」
先ほどまで俺の前にいたのは拘束されたオークだったはず、なのに今はどうだ。
眩しい光に少し目を逸らし、もう一度見たらどうだ。
モスグリーンをしたミディアムショートの髪と、同色かつ凶暴な何かを宿した瞳を持った幼女が、こちらを睨み付けながら暴れている。
「……はんざいだ」
どうみても犯罪だ。
見られたら終わる。
現状を誰かに見られたら色々おわ――っ。
「何をやっているんですか……お兄さん?」
終わった。