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文才無くても小説を書くスレ参加作品

壁越しのセッション

文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:隣人


 ここは音大生が集う防音マンション。

 近くに音大しかないという訳でもないけれど、楽器用の防音設備が整ったここは、音大生の支援を前面に押し出しているのもあって、一般の人は滅多には入ってこない。

 入居前に見た不動産屋での契約書では、周囲の音は頻繁に防音設備の限界を超える旨が記載されていた。楽器を扱うものなら誰もが実感と知っているそれは、知らない人達から見ても多くの場合は余程の事だと分からずとも察せられるらしい。

 壁やドアがいくらしっかりしていても、締め切った窓からも音は漏れるし、お風呂やキッチンの換気口がそれを助長している。何より本格的な楽器の音は大きいものなのだ。

 締め切った窓から響いてくるのは、めいめい好き勝手な曲と楽器の音。夜を徹して流れる音もある中で、僕らはそれを子守唄に眠りつく。壁に吸い込まれた音は、聞こえなくなっても振動となり鉄筋を揺さぶる。それを揺り篭にして僕らは夢を見る。

 そんな中でも曲に集中するのはそれほど難しくはない。締め切った部屋で楽器を鳴らせば、外からの音が聞こえなくなるわけでもないけれど、その殆どを押し流して自分の曲の空気が部屋に満ちる。

 聞こえてくる曲のメロディやテンポを無視して塗りつぶす。そういう豪快な考え方がこのマンションでは一般的で、その手法で繊細なピアノ曲を奏でる人もいたりするから、音楽とはわからないものだ。

 分からないけれど、それも所詮は自分の為のリズムと強弱で……。

 バンドのドラムの様に、周りに合わせる音などは滅多にあるものではなかった。


 隣に入った新しい入居者の楽器を直接は見たことはない。それでも響いてきた重低音から僕はその正体を察した。

 上の階や下の階も含めて、比較的近くから曲が響き渡った時に、ドラムの様な鈍い低音が断続的に響き渡るようになった。

 意識的なのか無意識のうちなのか、好き勝手なリズムを打ち鳴らしているようで、その実は周囲の曲にあったリズムで響いてくる。

 僕がギターを弾いたときもそうだったし、バイオリンにもピアノにもクラリネットにも平等に、その低い音は自由に、それでいて合わさる様に響き渡った。

 いつしか、無意識の内にこちらのリズムも隣の住人の音に合わさっているのに気付く。

 アップテンポもスローテンポも好き勝手に踏み潰す様な響きなのに、その深い音がこちらの曲に重なってきているのか、それともこちらが合わさってしまったのか。流されるようにセッションが行われる日が続いた。

 それは僕だけではなくその周りも同じ様で――ああもう負けを認めよう――基盤となる低音のリズムが周囲の空気を支配して、いつしか僕らはそれを仲立ちに更に遠くの人とも音を重ね始めていた。

 それがとても不思議なことに、曲調が違い和音にもならないのに、僕らは好き勝手な選曲をしているのに、それでもどこかしら重なっていた。

 これがドラマーの実力かと仄かな嫉妬すら覚えながら、今日もまた僕らはその深い響きに導かれ、各々が色取り取りの別々の曲を一つに織り上げるように響かせる。


 隣の楽器を直接は見たことはない。それでも響いてくる重低音から僕らはその正体を察している。

 恐らくは、手で脚で、時には肩で頭で、使う道具は箒や物干し竿で、両隣や階下や階上へと部屋の壁や床や天井を叩いているんだろう。

 滅多にない新鮮なやり取りを餌に俺達はテンションを高ぶらせる。

 ここは音大生が集う防音マンション。

 一般の人は滅多には入ってこない。

 今日もまた、滅多にあるものではなかったその深い響きに導かれ、僕らは色取り取りの別々の曲を一つに織り上げるように響かせた。



 友人に言われた一言。

「なぜ、オチをつけたがる?」

 なるほどご尤もな指摘だと思いつつ、ついオチをつけてしまう。


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231 自分:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2014/11/08(土) 19:37:22.51 ID:mAtaKm4Ao [2/3]

という事で、お題ください


232 返信:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2014/11/08(土) 22:41:22.19 ID:7k2vAN+So

>>231

隣人


233 自分:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2014/11/08(土) 22:51:31.37 ID:mAtaKm4Ao [3/3]

>>232

把握しました



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