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ツカサリレーション  作者: 福森 月乃
オウラ世界編
36/48

Starting(始動)⑤

その後、獣人達は感動の再会を果たし、南部国境師団の導きによりモナルキア王国の占領下にあった南大陸の大半が獣人達の手に戻ることになる。

この出来事は反モナルキア派の国々に衝撃を与え、世界最強を誇るモナルキア王国軍内の亀裂が明らかになった出来事でもあった。


点在する低木と見渡す限りの草原の先に黒い影が地平線に横たわる。

その黒い影はモナルキアとプルレタン独立商業区に跨る『還らずの森』だ。

何故還らずと呼ばれているのか、モナルキア王国から逃亡した国民は二度と国に戻らないことから名付けられた。重税に苦しむ最下層の国民が税金のない商業区に密入国するという話は後を絶たない。

『還らずの森』には守り人が住まい、他国の侵入を許さないところから不可侵条約が双方に結ばれていた。

守り人達の基準でしか森の通り抜けは許されておらず、国境付近に蔓延る盗賊たちとも繋がりがありモナルキア王国もおいそれと手出しできない土地柄でもあった。

その森の入口に商売人や物流関係の低空飛空艇が何台も列を成し、横にも縦にも並んでいた。上空には中型飛空艇が領空を占拠し、銃火器をモナルキア側に向けて牽制している。

中型飛空艇は横断幕を掲げ、拡声器でなにやら怒鳴り散らし、列を成す民間機と森の間にはデモ隊が陣取り鉢巻やタスキ掛け、プレートや段幕を掲げた人々が口々に叫びながら腕を組合う騒動が起こっていた。

小高い丘の上で暫く静観していた警備隊は両翼の陣を敷き待機している。

「大規模な集会の許可は確認できたか?」

師団直属のうっすら肌色の歩兵部隊が数十人、ターコイズグリーン色の騎兵は最少人数で三人しかおらず、砲兵はオリーブドラブ色で二人、チャコールグレイ色の工兵は一人で衛生兵はスペアミント色で五人と連れ立った部隊は五十人を下る。

白地に金縁の秀麗なドルシェアーツを中心に丘の上で監視する警備隊の師団にしてはいささか心許ない数であった。

東部最前線師団長の問いにやや間があって後方に控えていたドルシェアーツが答えた。

「集会の届け出はどの国からも出ていません。商路を塞ぎ小競り合いが見受けられます」

雪のような白さと淡い黒との陰影が美しい師団長のドルシェアーツに比べて副師団長のそれは光沢のあるホワイトパールクリスタル色でやや肌色がかった滑らかな作りであり、複雑な編み込みの彫り物がしてある団長と違いデザインは酷似しているが、彫り物はわき腹から胸、左腕、右足と背中の一部分に限られており至ってシンプルだった。

「結構な人数が集まっている。これに盗賊も加われば厄介だな。」

「はい」

暫く思案した後、腕を組み師団長はちらりと背後に目を配った。長身の淡い桃色に染まったドルシェアーツが背後に控えている。均整の取れた体躯に四枚花びらの小ぶりの花が風に舞うかのごとく彫られたそれは、可憐なイメージだ。

横に並ぶ副師団長の使い込まれたアーツと違い、それは新品で陽の光を浴びて輝いていた。すぐ視線を丘の下に広がる砂漠と草原の入り混じった荒野を見下ろし、森の前にたむ ろう民衆に意識を戻した。

「取り敢えず、注意喚起を促して解散するよう説得しよう。接触するのは切り込み隊でその後に槍部隊、射程距離に弓部隊を配置し、ここには救護班と騎兵隊と砲兵を残しておくことにしよう。市民をあまり刺激したくないが、万が一上空の飛空艇の砲台が火を噴くようだったら威嚇射撃の後場合により砲撃を許可する」

 右手を左胸に添えてモナルキア式の敬礼をした副詞団長は不服を申し立てた。

「畏まりました。しかし、作戦で自分の役割について異議を唱えたい!」

「異議は受け付けない。計画通りに進めろ」

にべもなく撥ね付けられ、挙げた左腕で制されてしまった。

師団長の切れ長の赤い瞳は前を見据えたままだ。その視線の先には騒ぎ立てるデモ集団と商人たちが写っていることだろう。一歩下がり、師団長の後ろに控えていた桜色のドルシェアーツと並んだ。副師団長より遥かに背が高く、細身のアーツは何処と無く儚げでどうしたらいいのか戸惑っている様子だ。

こんな子供まで戦場に引っ張り出すとは師団長は何をお考えなのか。彼女の真意が測れないうちに無線に号令が響き渡った。

『切り込み隊!前へ。』

歩兵、騎兵、弓兵が数十人前に出る。

そして、騎兵と同じ一人乗り用の低空小型飛空艇に師団長は飛び乗ると、当たり前のように先頭へ飛び出した。

桜色のドルシエアーツが体を強張らせ、団長を凝視する。ピンクサファイアのような瞳が煌めいた。

「なぜ、師団長自ら先頭に……」

チェスにしろ将棋にしろ軍隊の大将は一番やられてはならない存在として、最後方に控えているのがセオリーだ。

勝鬨を上げ部隊の士気を鼓舞する師団長は誰よりも先に始めの一歩を踏み出した。

 喉奥で笑った副師団長は皮肉を込めた口調で言い放つ。

「切り込み隊の隊長が師団長だからだ。誰よりも先に戦場を駆けていく」

 両肘に手を添えて苛立たしげに人差し指で一定のリズムを刻む。

「いつもその傍らでサポートするのは私の役目だが、今日は子守とはね」

顔を上げるとマスクで表情は見えないものの、こちらに向けられている視線は鋭く睨まれているのを肌で感じた。

長身を縮めて申し訳なさそうに頼りなさそうな桜色のドルシェアーツは謝った。

「すみません。お世話になります」

 謙虚な態度も鼻であしらわれ、桜色のドルシェアーツを纏ったウィリアムは歩き出した副師団長の後にとぼとぼと続いた。

副師団長は言わずと知れた、クロエ・ディアボロの執事兼お目付け役アルフレット・ジャンクルーノだ。セミロングの艶やかな黒髪にこの界隈には珍しい漆黒の瞳を持った青年で、仕えるクロエより五才年上だと聞いた。

身長はウィリアムよりやや劣るものの、服の上からでも分かる鍛え上げられた体は男女問わず目を奪う肉体美の持ち主だ。軍事教育に来ていたミギーがボディビルダーなら、アルフレッドは最小限まで体脂肪を削ぎ落としたK1選手かボクサーのような肢体だった。

少し恨めしげにその綺麗な後ろ姿を見つめながらウィリアムは思う。

いや、オレだって変身したら負けてないと思うけど。なんて強がりを言っているうちに二人は目的の場所へ着いた。

2つの真っ白い三角テントに両手両足を広げた人の影とその周りを王冠のように囲む、薬草の葉が描かれており、それはモナルキアの神属の長、預言者パラムの祝福を受けた医療団のシンボルマークだった。

今日の仕事は負傷した兵士が運ばれる医療テントの警護で、アルフレッドとウィリアムは前線へ出るのを固く禁じられていた。

テントの前に立ち二人は同じタイミングで森を見下ろす。

視界に飛び込んだのは、師団長を先頭に先陣を切った部隊が土煙を上げながらデモ隊と対峙するところだ。

 クロエは音声を拡声器に切り替え説得を試みた。

「私はモナルキア王国国境警備隊東部最前線師団師団長です。こちらはモナルキア王国とプルレタン商業区の中立地帯で、東部地区警備を担当しています。皆さん、本日行われているデモ活動ですが無許可ということが判明しました。代表の方がおられたら名乗り出てきてください。話し合いの場を設けます。誠に申し訳ないですが、本日のデモは中止し許可を得てから活動して下さい。商業区への立ち入りの妨げとなってます。速やかに解散して下さい」

 丁寧な語り口で説くものの、横断幕に目を走らせ眉根を寄せた。

”関税撤廃””すべての国に自由貿易協定を!””不条理な税率に鉄槌を””物価を上げる税金0へ”などなどデモの内容は昔から取り上げられている税金問題だ。

デモの申請を出した所で王国はそれを通すはずがないのは目に見えていた。税金は特権階級の重要な財源だからだ。

自分たちが高価な装備を準備できるのも、贅沢できるのも全て国民の血税のおかげだ。

胸が痛んだクロエはマスクの下で唇を噛んだ。

騒ぎが大きくならないうちに大人しく解散して欲しい、自分たちで収めた金で自分たちを守るはずの装備を、自分たちを傷つける道具に使わないで欲しい。

国内で度々勃発する紛争を鎮圧するために武器を手に取るクロエは常にそう願っていた。

視線だけ上げると、低空飛空艇が三機、青い空にのんびり浮かぶ流れ雲の白さと対象的にに黒々と暗い影を落とし、その砲身がモナルキア方へ無遠慮に向けられている。

 吸血部隊と畏れられている国境師団の師団長から丁寧に対応され、デモに参加している者達の中には戸惑って顔を見合わせる者は少なくはない。どうやら参加者たちは無許可だということを知らなかったらしい。喚き叫んで減税や国の不満を訴えていた声が止み、商人たちとの鍔迫り合いもおさまり動揺のざわめきが広がる中、それは突然起こった。

頭上の砲台が火を吹いた。思わず後ろを振り返ると、辛くも弾は丘の端に命中し土を削っただけで控えていた本体には届いていない。

布が張られる音と刃が交わる音が辺りに響く。

デモ隊へ向き直るとクロエの目の前の太った中年男性が鋭い短剣をアーツの継ぎ目部分に突き立てようとする瞬間だった。殺気を感じ油断した自分を少々呪いながら、手にした愛刀でその凶器を弾き飛ばす。既に両手に武器は携えてある。

人が倒れる気配を肌で感じ、容赦なく襲ってくる刺客を相手しながら周囲を確認した。

不意を疲れた団員が何人か倒れていた。

ドルシェアーツは無敵というわけではない弱点はある。そこを敵は、迷うこと無く突いてくる。我々と戦い慣れしている。

応戦しながら視線をあげるとさっきまであった横断幕に変わって、黒地で墓標に幾つもの手が絡みついた絵とその背後に崩れる城を象った旗が風に靡いていた。

「我々は`誰彼時の旅団`王国の犬に制裁を!」

誰かが叫んだ。

「王国の犬に制裁を!」その声を合図にその言葉を集団の中に紛れた人々が繰り返した。

それを合図に好戦的な者が団員達に襲いかかる。

殴り合いを始める者、武器を持ち出し殺し合う者、逃げ惑う者、巻き込まれる者。阿鼻叫喚の絵図だ。

デモ隊のなかにテロ組織の組織員が紛れ込んでいたのだ。

仲間が殺られたことで冷静さを失っている団員も数人おり、無差別に武器を奮っている。

沸々と湧き上がる怒りを抑え、冷静さを装ったクロエはいつもと変わらない口調で言った。

『団員に継ぐ。デモ集団にテロ組織”誰彼時の旅団”の組織員がまぎれており、一般国民、商人共に区別つき難い状況。よって、捕縛し身元確認を行う』

団員達の舌打ちが聞こえるようだ。

だが、殺された団員の弔い合戦をするわけにはいかない。

我々は公僕であり、国民を守るのが一番の義務なのだから。

目の前の凶悪な顔で挑みかかる男、女、年寄りから子供まで、命を狙い団員の命を奪った連中を切り捨てたい気持ちを殺しながら、刀背打ちを繰り返し常備されている鋼鉄製で出来た強力な捕縛の縄で捕らえていく。

彼女の通った道筋には、芋虫のように縄で簀巻にされた哀れな者達が地面に転がった。

目にも止まらない剣筋と手首から自動で伸び、ターゲットを自動で巻きつける縄の速さも相まって尋常じゃない速さでデモ隊に参加していた人や商人達を地面に伏していく。

その姿に彼女の周りにいる人々は敵わないと戦意を失い、団員は励まされ自分を取り戻しその後に続いた。

最初の一発目に低空飛空艇の砲火があがったきり、砲台は沈黙していた。脅しだけの一発だったのかそれとももとから威嚇のつもりの飾りで弾は一つしかなかったのか。頭上に不気味に漂う船を気にかけながらクロエは休むことなく仕事をする。

一般市民と商人はあらかた散り散りに逃げ去り、抵抗する者は少なくなっていた。

『師団長。七割方制圧できてま…』近くで働いていた中堅団員が無線で語りかけた時不意に声が失われた。彼は先日結婚し、来月には子供も産まれるはずだ。そんなことを思い出しながらそっちへ視線を流すと、信じられない姿を目にした。

黒い矢が彼の頭部を穿いていた。

刺さった頭部からまるで侵食されるように消えていく。

赤い炎に包まれた黒い矢は消えそこから毒を盛られたかのように、細切れになりその個々はくるくる回転しながらさらに小さくなり塵のように消えた。頭部を失った体が激しく痙攣し更にその毒は犯された部分から病のように広がり、数秒のうちに団員を消し去った。

手足が一気に冷たくなるのを感じた。

心臓が早鐘を打ち、耳の中で拍動する。

頭がガンガン痛み真ともな思考を奪っていく。

『団長!!』

聞き慣れた声とともに後ろに体を引き摺られた。

すぐ目の前に黒い矢が赤い炎を纏い地面に突き刺さる。

見る見る地面が抉れていった。

我に返り辺りを見回すと、幾つもの黒い矢が不規則に降り注いでいた。

何人もの団員が矢の餌食になり、助けを求め、言葉もなくその姿を失っていく。

このままでは不味い。

クロエに迷っている時間はなかった。即決しなければ。

そんな時に鋭い音の後、頭上の飛空艇の一つが爆発した。

前頭部を破壊され、飛空艇が前のめりに大きく傾く。大きな影を落としていた飛空艇は力なく地面へと降下していく。

その下で混乱していた人々は悲鳴を上げながら逃げ惑った。

『撤収!撤収!各団員持ち場を放棄し前線基地まで退避せよ』

容赦なく打たれる黒い矢と墜落する飛空艇を見ながら、クロエは団員達が先に撤退するのを見届け、その背を守るように後退しながら最後尾で剣を振るった。

その傍らで、桜色のドルシエアーツがアイアンクローで援護する。

『何故来た。持ち場を離れるな、参戦は認めないと言ったはずだ』

彼だけに聞こける周波数に無線を合わせ呻くように言った。

『見ていられなかった。君が殺されるかもしれないと思ったら居ても立ってもいられなかった。』

『……』

短い沈黙の後、追ってくる敵も少なくなり彼女は急に踵を返した。

『ウィル!後ろを振り返らず全速力で走れ!』

『了解』

歯切れのいい返事とともにウィリアムはクロエの横に並び全速力で走る。

走る彼らに黒い矢はもう届かなかった。射程距離を外れたのだ。

背後で人々の悲鳴と地面に激突した飛行艇の轟音が響き、立ち上った土煙があっという間にウィリアム達に追いつき二人の姿をかき消した。

金属がぶつかり合う鈍い音とともに、様々な通信機器が備えてある司令室に怒号が飛んだ。

「誰が砲撃を許可した?!」

壁に磔になった副師団長は力なく居住まいを正すと。目の前で怒り狂っている師団長をまっすぐ見据え深々と頭を下げた。

「申し訳けございません」

あの飛空艇は国境師団の砲撃によって撃墜されたのだ。船の下にはまだ逃げ遅れた人やテロリスト達が大勢残っていた。師団長の言わんとすることは言葉にしなくても痛いほどアルフレッドには分かっていた。が、指を咥えて手の届かないところから見物しているわけにはいかなかった。

命に重きを置く師団長の命令を待っていてはお嬢様を失ってしまう。

それにしても、肩を並べ一緒に説教を受ける桜色のドルシェアーツの動きは早かった。

自分が行くより遥かに速く、飛ぶように持ち場を離れたのだ。

地面を蹴るように駆け、跳ね上がり驚くほどの飛距離で彼女の元へと辿り着いた。実際四、五歩といったところか。サイボーグでもなく獣人でもない一見ただの少年がドルシエアーツを着ただけで超人的な能力を発揮するとは考えられなかった。

ドルシエアーツは防護スーツなのだから。

遅れを取った自分は援護射撃をすることにしたのだ。

 師団長は苛々しながらつま先を鳴らし吐き捨てるように言う。

「しかも、子守もできないとは残念すぎるぞ。」

 侮蔑も顕にボレロを翻し悄然とする二人を残して師団長は出入り口へと足を進めた。

「私が戻るまで国境師団の指揮は副師団長に委任する。しばらく留守にする」

 殴ったのはやりすぎだったか?

クロエは少々反省しながら司令室を退室すると、無機質な金属の檻のような前線基地の回廊を歩き始めた。

“誰彼時の旅団”反政府テロリスト。

新たな武器を我が部隊で試し打ちするなどとフザけた真似をする。少数で説得に行ったのが幸いして部隊への打撃は少なかったがとんだ当て馬にされたものだ。

しかし、あの黒い矢。当たれば消えてなくなるから分析しようがない。

分解され消滅する被験者。

「分解、消滅か」

クロエの頭の片隅で何かが引っかかっていた。はっきりしないが、どこかで聞いたような知ったような記憶がある。

目の前で分解されてしまった団員を思い出し、柄にもなく寒気を覚えた。

老若男女を洗脳し国家転覆を図るテロ集団。暴走したら全世界に火の粉を撒き散らすのは明らかで、黒い矢の餌食になればこの世から全てが消滅するだろう。

暗雲たる未来に身震いをして、東部国境師団団長は足早に格納庫へと向かった。


汗をかいた銅製の中ジョッキを取り上げて煽ると美味そうに喉を鳴らしながら飲み干す。

「見たか!あいつらのマヌケな顔を」

簡易な椅子に腰を下ろし、それとセットの四角い机に空になったジョッキを叩きつけるように男は置いた。その勢いに中身の液体が机の上に飛び散る。向かいに座っていた男は頬に跳ねた酒の雫を手の甲で拭った。

友人の中で一番の色男、館林たてばやしことソシエ・クレは上機嫌だった。

顎まで伸びた長い前髪を掻き揚げ、頬を赤く染め色っぽい視線をこっちに投げてくる。

ピアニストのような長く繊細な指先、輝く黒い瞳、それを縁取る茶色く長いまつ毛、まつ毛と同じ色の乱れた髪。

男も女も誘惑する肉厚で赤色の唇には歪んだ笑みが浮かんでいる。

まったくもって見てくれだけは無駄に色気まみれの男だ。

彼の愉快で裏のない笑い声を聞くだけでこっちもつられ笑いしそうだった。

 ソシエが興奮するのも無理はない。吸血部隊と畏れられていた国境師団が尻尾を巻いて逃げ出す姿を目にしたのだから。

あぁ、彼女は最高だ。

いつも何も移さないような陰鬱な蒼い瞳に僅かに光が灯り、部屋の隅で怯えている少女を盗み見た。自分と同じ黒髪だが、瞳は地味な黒っぽい茶色い目だ。

アカツキがいない時は終始おどおどと怯えており、褐色の肌を持つ自分とは違い生白い。

木下きのしたことガレット・トルーケは不思議そうに首を傾げた。

手にかけたら簡単に殺せそうな彼女の体のどこにそんな力があるのか、感情に大きく揺さぶられるあの力を嫌い、自ら発動しないよう制するとは愚かな女だ。

オレだったらその力を使い思う様に生き、この心に支えた底なしの闇を晴らすためいくらでも利用するのに。

そう出来たら常に付きまとう得体の知れない乾きが治まるに違いない。手に持っていたウィスキーグラスの中の氷が溶けてグラスを打ち鳴らした。

いつも冷徹だった男に物欲しげに見つめられ、リジュエラは落ち着き無く身じろく。

幼い頃から色々世話を焼いてくれた彼らにあの力を知られてからは、彼女に対する態度は一変した。今までまるっきり興味を示さなかった館林は小間使いのようにこき使うようになり、冷徹で厳しい家庭教師だった木下には時々熱い視線を向けられる。誰よりも世話を焼いて優しかった牧原は、クレスに遠慮するようにあまり接することがなくなった。彼からは時々会うと何か言いたげな憐れむような視線を向けられる。

家に来た時から変わらないのはクレスだけだ。

 高々と空のグラスを掲げソシエは怒鳴った。

「お~い、酒おかわり!気を利かせろよ」

「は、はい」

リジュエラは反射的に返事をして、部屋の一角に備え付けてある大きな冷蔵庫から三分の一ほど中身の減った酒瓶を取り出した。お世話になっているからといろいろ手伝っていた数ヶ月の間に知らぬうちに躾けられていた。

酒瓶を両手に抱え、ソシエとガレットが向かい合って座っているテーブルに急いで駆けつける。ソシエのジョッキに酒を足す。テーブルの上にはガレットの酒瓶と丸い氷が数個残ったアイスペールが置いてあり、それを飲む彼は好きな時に手酌した。

 継ぎ足し終えた酒瓶を立て抱えるように立ち、リジュエラは小さな声で言った。

「あの、聞きたいことがあるんですが」

自分の能力について幾つか疑問があった。詳しく知りたくてクレスに聞きたかったが、最近彼は忙しく顔を見かけることはあっても話をする機会がない。遠回しに聞いても曖昧な答えが返ってくることも多かった。

 だいぶ酔いが回り頬を薔薇色に染めながら、ソシエは目を細めた。

「なんだ。今、気分がいいからなんでも答えてやるぜ?」

 にやにやと笑う厭らしい笑みも彼が浮かべると妖艶で、思わず見惚れるほどだ。

「私の矢に当たった人は消えてしまいますよね。そ、その人はどうなったんですか?」

乾いた喉につばを飲み込み彼女は言葉を支えながら聞いてきた。

ソシエの黒い瞳が瞬き妖艶な笑みから意地の悪い笑みに変わった。


死んだよ。

心の中で正解を呟きつつ平然とソシエは答えた。

「あー、アレだ。お前、こっちに来た時、転送装置使ったんだケド。それと同じ原理の能力がお前にはあんだよ。ま、邪魔者を簡単に移動させる的な?」

額にジョッキを持った手を添えて、考え考え適当に言った。

緊張していたリジュエラの体から一気に力が抜ける。

彼女の顔はマヌケなほど安堵の色が浮かんでいた。

「じゃぁ、射たれた人は別の所に移動しただけなんですね」

「そうそう、オレらの邪魔にならないように遠くへお前が送ってやってるんだよ」

 嘘だけどな。

 剣呑な表情でガレットが戒める。

「おい」

 その一言が多くを語っていたが、それに気付く様子もなくお礼を言ってその場を離れることを告げると、用は終わったとばかりにリジュエラは酒を冷蔵庫に戻し部屋を出ていった。

 その姿を二人は見送り足音が遠ざかると、もう一度顔を突き合わせた。

「阿呆だなあの女」

 ほろ酔いで垂れ下がった目を細めたソシエはくつくつと嘲笑う。グラスの酒をもう一度煽りガレットは吐き捨てるように言った。

「適当なことをぬかすな。アカツキに報告する」

「どーぞ、どーぞ。オレの案はいい案だと思うぜぇ?あの女が人を殺していると知ってみろ、絶対、協力を拒むに決まっている。だから今までアカツキも言葉を濁し言い出せなかったんだろうよ。あの矢があれば、楽ちんだ。死体も出ねえし証拠もねぇ。綺麗さっぱりこの世の中から消えてくれるんだからな」

 ソシエの意見にガレットは鼻を鳴らして応える。

「ふん。少々物足りないがな。力を抑えながらの発動では、これからまだまだ人の血が流れ、肉塊が地面に転がることはなくならないだろう」

 肩を竦め大袈裟に両手で体を抱えるような素振りで身震いすると、ソシエは言った。

「全開だなんて、冗談じゃないぜ。この石もどれ位持つかわからないのに巻き添えで死にたくないね」

唯一あの力が及ばないように守ってくれるブレスレット。長い年月をかけクラウオブナ神国の秀才と呼ばれた学者が内密裏に作ったものだ。元々その研究に造形の深いその学者はモナルキア王国に恨みを持ち、こちら側ともバースキム公国ともつながりがあるという。

 もうすぐ時が満ちる。難攻不落の要塞と言われ、最強の部隊を国境に侍らせていた侵攻国はその内部から既に崩れ落ちかけていた。

特権階級の財政にそぐわない豪遊。引き上げられ続ける税金。国内の反発分子に対するその場しのぎの対応。資源を立てにした国同士の取引。

全てが昔からの習わしで繰り返されている進歩のない負のスパイラルだ。

臭いものには蓋をして都合の悪いものは排除する、その体質がようやく内側からも外側からも揺さぶりをかけ続けたことにより変わろうとしていた。


 幹部クラスのドルシエアーツの整備点検を終えたドルシェ博士は、今後の課題、さらなる防御の強化と弱点の改善について考えながら長い回廊を歩いていた。

東部国境師団の敗退を受け、以前から問題視されていた惰弱部分が浮き彫りになる形となり、団長の報告による〃誰彼時の旅団〃の新たなる兵器の存在に危機感が募る。

赤い炎を纏う黒い矢。

打たれたものは分解され最後には消えてしまう。

四、五発ほどまとめて雨のように放たれていた。

それは一方向から射られていた。

一度目の攻撃から二度目の攻撃までの間に間があったという。

報告を総合するとまだその兵器は一つしか存在せず、放たれた矢の数に対して団員の被害が少ないことから、精密度はまだ低いということだ。

これが量産され精密度が上がればこの国はどうなるのだろう。そして世界はどうなるんだ。嫌な予感しかしない考えにドルシエは顔をしかめる。

黒い矢と赤い炎か。

東部師団長は心当たりがあるらしく、しばらく出張するらしい。

団長が戻るまで黒い矢に対抗できる材料を探さねばなるまい。

悩んでいても仕方ないと溜息をつき顔を上げると、すれ違う研究員に交じって見慣れた顔があった。

「レイラ!」

 白銀のドルシェとは対象的に、レイラと呼ばれたネズミは黒い長毛種だった。

白衣を着たレイラはアメジストのように透明感のある赤い瞳の持ち主で、少し大柄の雌だ。彼女はクラウオブナ神国の幼少期からの幼馴染で、趣味が講じて同じ大学院まで行ったよき理解者でありライバルでもある。

お互い張り合うように勉強し、どちらかともなく勝負を仕掛けては勝ち負けに拘っていた頃が懐かしい。

大学院や研究所にいた頃はしょっちゅう顔を突き合わせていたが、モナルキア王国の軍事研究所に務めるようになってからは他部署ということもあり会う機会がぐっと減っていた。自分は兵器開発部門設計室長で西塔にいるのだが、彼女は地質調査機関に所属しており主に資源の発掘と調査、研究を主に行う東棟で働いていた。

ほぼ、設計室と開発室に詰めているドルシェと対象的に彼女は外部調査中心で殆どの時間を現地での発掘と調査に費やしている。

声をかけたもののレイラは気付く様子もなく、肩を並べて歩く茶色と黒と白が入り交じった斑模様のハムスターと会話に夢中になっていた。

 ひと際大きく咳払いをして、声を大にして放つ。

「レイラ!久しぶりだね」

逃しはしないとばかりに彼らの前に立ちはだかったドルシェは白衣の襟を正し、眼鏡を人差し指で引き上げた。

 不機嫌そうに眉をひそめる彼女とドルシェを見て顔を輝かせる斑のハムスター。

「え?え?!レイラ博士、ドルシェ博士とは知り合いだったんですか?!」

初対面の生き物は大概こういう反応を示す。

ラブドゥール皇太子の銘により開発したアーツと、その改善量産の評価は高く、毎月発行される科学専門誌に顔写真が乗らない日はない。誰もが彼の顔を認識していた。

興奮気味のハムスターを横に、彼の問を無視してレイラは単刀直入に言った。

「何かご用?ご高名な博士様は忙しくて研究所から出ないものだと思っていたわ」

 嫌味を投げかけられてもドルシェは意に介さずニヤリと笑って本題に入る。

「相変わらず話が早い。君が昔から研究している文献に関わる”鉱石”を、最近発掘したらしいじゃないか。確か、モナルキアとトゥーケ連邦共和国のグレーゾーン(非武装中立地帯)にあったと報告をしたらしいね。」

どこで聞きつけてきたのかレイラにとっては面白くない話だ。

長年研究してきた口伝が数十年前、国王の抱える専属予言者の予言の通り現実となった。

そして、レイラはたまたまその現場に居合わせたのだ。

助かった人々の証言と現地の調査によりある鉱石の存在が浮き彫りになったのはつい最近の話で、きっと話の出処は皇太子殿下であろう。

つい先日、プルレタン商業区との国境で勃発したデモ事件で、テロリストが新たな兵器を使用したことが起因しているのは簡単に読めた。

あの力が発動したということは、あの街での悲劇がまた繰り返されるということだ。

王国近衛兵による『赤き月の粛清』は意味をなさなかった事の証明であり、予言された者はとうの昔に逃げ出しており、犠牲者が無駄死にに終わったことは明らかで彼女の中に例えようのない怒りがこみ上げたのは言うまでもない。

 冷静さを装い、レイラは冷たく言った。

「だから何?」

「もう、知っていると思うが『誰彼時の旅団』は今回新兵器を使った。赤黒い炎を纏った矢で射られた者は塵と化す。…..何かと似てると思わないか?」

言わずとも知れたあの力だ。

反政府組織が一度使っただけでドルシェはもう感付いている。

 レイラは内心舌打ちしつつ無表情を貫いた。

「わたしの直感なんだが、君が発見した鉱石はあれと何らかの関係がある気がしてならないんだよ。是非、この目で見てこの手で確かめてみたい。いいかな?」

長い髭を弄びながら彼は期待に満ちた瞳で見つめてくる。好奇心にきらきら光を湛えるその視線に耐えられないレイラは、視線を逸らし小さな声で答えた。

「研究所にはない。他の場所で大切に保管している。」

「近いうち連れて行ってくれ。連絡を待っている」

「わかった」

興奮気味のドルシェに対してレイラの対応は冷たいものだ。

別れを告げ軽い足取りで立ち去る彼を見送りながら、レイラの赤い瞳がきらりと光る。

彼女の隣では助手のネズミがドルシェを紹介してくれやら、サインをもらっておけばよかっただの一人騒いでいる。

数日後、滅多に城内の研究所から出ないドルシェは久しぶりに外の空気を吸った。

高い塀に囲まれた駐屯地を出て、ドルシェ護衛兵二人とレイラ、ドルシェ二匹という組み合わせでレイラが保有している倉庫へと向かう。

そこは研究所のある峡谷から西に向かい丘を越え、戦争の被害から逃れた背の高い林の中にあった。林の木々は移動を阻むようにまばらに連立し、腰まで伸びた草むらが更に歩行を鈍らせて、彼女の借りている倉庫までの道のりは楽な行程とは言えなかった。

一度入ったら同じ道を辿って戻る自信がない。ドルシェと同じことを思っているのか護衛の二人も林に足を踏み入れた時点で、何度も自分たちの立ち位置を確認していた。

次元の海を越えない限り、アーツの機能でマッピング機能が働いているはずだ。

どれ位進んだか分からなほど歩き、右も左も前も後ろも同じ風景に囲まれていい加減うんざりした頃に、木立の間に人工的に建てられた建造物の一部が見えた。

ドルシェは一安心してレイラを盗み見た。

彼女は緊張しているようで強張った顔をしている。

こんな所で保管している鉱石だ。きっと取扱いが難しいものかも知れない。

『危険ですので、お二人ともまずはここでお待ち下さい』

ドルシェ兵が先に進もうとする二匹を制し、自ら前に出た。もう一人の兵士も前に出て彼の横に並ぶ。

『安全確認してまいります』

二人はそう言って建物へと向かった。建物までほんの数百メートル、建物に辿り着いてそこを巡る兵士の姿が見えなくなると急に心細くなる。

二匹は黙ったままその場から動くこと無く待つがいくら待っても二人の兵士は戻ってこなかった。聞こえるのは木の葉が擦れる音と虫の声、そして鳥の囀りや獣の遠吠えだ。

 さすがに不安になってドルシェは声を上げる。

「遅くないか?少し様子を見てこよう」

「じゃあ、わたしも行くわ」

 二匹にとって背より遥かに高い草むらを掻き分け、建物にたどり着くのは困難だろう。何故なら二匹にはまだ建物の全容を目視できていないからだ。草むらの間から、見え隠れする人工物の一部を目標に二匹は駆け出した。

建物は鉄板を組み合わせ、鉄筋で補強してあるようなプレハブ建築だった。二階建てで鉄製の外階段で二階へは行けるようだ。ドルシェとレイラは無言で顔を見合わせ、もう一度建物を二匹は見上げる。

どこから眺めても人間サイズのプレハブは薄い灰色の壁は、年月を経て緑とも黒ともつかない色合いに汚れており、それを補強する鉄筋も風雨を経て錆が目立つ。

階段もそれに劣らず朽ちかけており、鋲を打った足場には錆びたところから腐食が始まり所によっては穴まで空いている。

何年も人が足を踏み入れてない様相だ。ドルシェは身震いをして問いかける。

「本当にここかい?」

見上げた空は木々の枝葉に阻まれ、僅かしか見えない。薄雲に覆われた空は、陽の光を遮り一層辺りを暗くしている。もうすぐ日が暮れそうだ。この先の未来を暗示しているかのように鳥の黒い影が飛び立つ。

「そうよ。ここで間違いないわ」

 兵士が二人戻ってきていないというのに彼女はためらいもせずに、一階のレバー式のドアノブに飛び移り体重を乗せてドアを開けようとした。レバーは少し傾いたくらいでどうやら重さが足りなかったようだ。ドルシエはドアの周りを観察し、建物に沿って置いてある廃材やダンボールを足場にして何度かジャンプすると取っ手に一緒にぶら下がった。

ガクンと取っ手が傾き、ドアが僅かに開く。

人には隙間くらいの幅だが二匹にとって十分な広さだった。そこから二匹は飛び降り建物の中へと忍び込む。

中は真っ暗で何も見えない。

背後でドアが閉まる音に驚いて思わずドルシェは振り返った。そして辺りが一気に明るくなり、真っ暗だった室内の様子が顕になる。

作業灯が部屋の四隅に据えられ、部屋を占領している戦闘機を照らしていた。

真っ黒い機体に赤いラインが、まるで血脈のように前後に走り、明るくなったり暗くなったりとまるで脈動しているようだ。

王国の銀色を主として作られているシンプルでシャープなデザインと違い、その黒い機体は曲線や触手、所によっては剥き出しになった内部が見え隠れして禍々しい。

ドルシェはその気味の悪い機体に、思わず身震いした。

耳に鋭く鈍い放電の音が届く。音のする方へ駆け寄ると、表面を磨いあげられた灰色のパネルに先に建物を探索していた兵士二名が貼り付けになっていた。

彼らの体を拘束するのは放電を繰り返す電子パルス。ドルシェアーツの素材と性質を知りえない限りこんな品物は作れない。

思わずレイラの方へ顔を向けた。

彼女は無表情で戦闘機を見上げている。黒い戦闘機や捕らえられた兵士を見て驚いている様子もない。

まさか。

ドルシェが罠にハマったと悟った時、戦闘機の開口部分が大きく開いた。

黒い機体にぽっかりと四角い穴が空き、黄色い光がそこから溢れ出す。その光を背に黒い影が徐々に現れ、床に伸びたタラップを降りて来た。

 黒い影は背の高い男で、人型なのだが体の半分以上を改造したサイボーグだった。

「ドルシェ博士。お久しぶりです。某国でのご活躍耳にしますよ。やっとお迎えに上がることが出来た」

サイボーグは満足げな笑みを浮かべるが、その表情は引き攣っている。

生身の部分と機械部分の接合が上手くいっていないのだろう。よく観察するとその動きはぎこちなく、接合部分が引き攣れて見るに堪えない。

 赤いレンズを埋め込まれた片目が、ライトの光を反射して異様な光を放った。

「さぁ、母国へ帰りましょう。我が姫が目覚めを待っています」

まるで貴族の紳士のように、洗礼された動きで手を差し伸べてくる。

そして、サイボーグの背後から、虫の形を模した機械兵が五、六匹這い出した。

「サニー部隊長」

 ドルシェは懐かしい名を呟いた。

バースキム公国、IT部隊長サニー。暴走する機械の抑止、廃棄が任務でソフトウェアに造形が深い。ファイアーウォールの作成や外部からのプログラム干渉対策など、彼の指導や指揮によるものが大きかった。

その彼が、体の大半を失いサイボーグ化して、昔と違う瞳の色でドルシェを何の感情ももたない様子で見ている。

まるで物を見る目と同じだ。

サニーはもう死んだと思っていた。ドルシェやその他の技術者を逃すために犠牲になったのだから。体の大半を失い、大量に血を流しながら、機械兵に刺し貫かれ、息絶え絶えで自分達を見送る姿が最後だった。

こんな姿で再開するとは。

痛ましいサニーの全身に視線を巡らせ、ドルシェは苦々しく息をつく。

サニーは差し出した手をドルシェに伸ばし、無遠慮に鷲掴みにした。


テロリストの新しい凶器に翻弄される王国。

それに対抗すべく情報を得ようとしていたドルシェの失踪。

国境部隊の解体案。

内部から壊れていくモナルキアを直視できない、特権階級の人々。

慣れ親しんだ生活は今も続く。

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