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ツカサリレーション  作者: 福森 月乃
オウラ世界編
26/48

Person to be chased(追う者追われる者)⑤

親父が王都から逃げ出した。

正確には一緒に連れ立った一人息子を他人の手に委ねて、自分はさっさと旧友の元でお世話になると言い、着いて早々姿を消した。

ふざけるなクソ親父ぃっ!オレもその友人の所に連れてけっつーの!

怒りのあまり、司は無意識のうちにガスガス壁に額を打ち付けていた。

そんな司を冷たい声が一蹴する。

「百面相。もう時期着くから落ち着け。ふっ、もう父親が恋しくなったのか?」

 向かい側で足を組んで座るディアボロは鼻で笑って見せた。

図星を突かれ司の頬が赤く染まる。よりによってこいつの所に預けられるとは。

ここは飛空艇の中だ。軍専用の送迎機で今は壁とドア一枚で隔てられた空間に操縦室にパイロット二人。整然と座席が並ぶ旅客席には司とディアボロ二人しか居ない。

城塞の右翼から飛び立った送迎機『DC-57M』は当初78席満席で軍事関係者が乗っていた。いくつかの寄港地を経由するうち最後に残ったのがこの二人だった。

 ディアボロは落ち着かない様子の司から視線を逸し、窓の外を眺める。眼下に広がるのは広大な高級住宅街と国営集合住宅だ。

城下町の雑然と住居が建ち並ぶ様と相反して、広々とした邸宅にそれを上回る敷地、プライベート飛空艇や小型高速艇の発着場が備え付けられている所もある。

官僚の住まう街の幹線道路は4車線でまるで引きたてのように美しく整備されていた。

やがて緑が濃くなり真新しい邸宅から、折り重なる巨木に覆われた古い建造物が見え隠れし始める。森の中に点在する歴史的建造物はシンプルな近代建物と違い、植物や幾何学模様を模した複雑な外装が施され、どれもよく手入れされた屋敷と呼ぶに相応しい落ち着いたただ住まいとなっていた。

森の切れ間に突如現れた芝生で描かれた円陣の中心へと飛空艇は降下し始める。

全席革張りの薄茶色の椅子と毛足の短い深緑の絨毯という心地の良い空間で、少しウトウトしていた司は驚いて顔を上げる。乗り物が不意に大きく傾いたのだ。

迷うことなく窓に顔を向け、外を確認する。生い茂る木々が目の前に迫りもうだいぶ地上が近くなっているのを感じた。

飛空艇はゆっくり上下に跳ねるとやがて動きを止め、エンジン音も消えた。

待ってましたとばかりにディアボロは颯爽と立ち上がり自動で開いたハッチの元へと歩みを進める。収納されていたタラップが地面へと伸びる。

 降りるのを躊躇っている司に彼女はさっさと降りろと言わんばかりに声を張り上げた。

「ようこそ我が庭に!うかうかしている暇はないぞ。お前は私の預かりになったのだからな。言葉に生活習慣、今後のお前の処遇。やることは沢山ある。辛いと父親に泣きつくようだったら荒野に放り出すからな」

言うだけ言ってさっさとタラップを降り始めたディアボロの後を司は慌てて追った。

こうなった以上父さんに泣きつくつもりもないし、こいつの思惑通りに運ぶのも面白くない。生意気なディアボロの背中を追いながら司は口を引き結んだ。

発着場から森の小道を進み街道へ出る。

緑迫る街道は人が踏み込んだ跡は残されているものの、古い煉瓦色の敷石は所々破れたりヒビが入っていたりでその隙間から野草が所狭しと伸びている。森に囲まれた古風な屋敷町は人の気配それより、小鳥の囀りや葉っぱの擦れる音、生け垣や藪を駆け回る姿が見えないものの音が勝っていた。

一軒一軒はそう大きな屋敷ではないが塀や柵に囲まれ、さらに植物に覆われた様はその全容を把握し難い。

暫く歩いた後、二人は年数を経た白磁の煉瓦を積み上げた塀に構える門の前に立っていた。蔦植物の絡みつく両開きの立派な門は百合似た花をモチーフにした凛としたデザインで落ち着いた青銅色だ。

古めかしいアイアンゲートに似つかわしくない網膜認証パネルが花の中心、がくを象る部分にうまい具合に周りのデザインと調和するようにつけられている。一見では誰も気付かないだろう。

 カメラが彼女の光によって色味を変える魅惑的な真鍮色の瞳を捉えた。

直ぐ様門が軋みを上げながらゆっくりと開かれる。

青銅の門の向こう側には広大な草原と、果樹園が広がり右手奥の雑木林の間からはキラキラ光を受けて瞬く水面が見え隠れしていた。左手奥には針葉樹に囲まれた三階建ての洋館が鎮座している。

どこからともなく庭師が現れディアボロと挨拶を交わす。そしてそれとなく司を紹介され軽く会釈し応えた。

ディアボロの後に続き、西洋館へと続く人工的に作られたブロックを格子状に組み合わせた二人がやっと並んで歩けるくらいの小道を歩く。やがて全容を現し始めた洋館は赤みを帯びた黄色い温かみを感じる梔子色の壁、黒みをおびた深く艶やかな紅色の臙脂色の屋根には天窓が5つ設けられている。

暖色系の西洋館は景色の緑と抜けるほど青い空とのコントラストは見事で、古く重厚な造りであるのにも関わらずまるで玩具のお屋敷のような様相を醸し出していた。

窓枠や扉、洋館のワンポイントは屋根の色に統一されシンプルなデザインだ。

薄緑色の半円を描く正面玄関への階段を昇り、百合に似た植物の見事な彫り物がされている臙脂色の両開きのドアが自ずとゆっくりと開く。


「お帰りなさいませ。お嬢様」

同じ髪型、制服を着たメイドが数人二人を出迎えた。

上着を脱ぎディアボロはメイドに預けると破れたところを縫うように指示をする。そう言えば登城から戻ってきた彼女の軍服は無残にもボロボロだった。

 その理由を聞く暇もなく慌ただしく送迎機に乗り込んだのだが。

「ここでは私の家族皆がディアボロだ。私のことはクロエと呼んでくれていい」

「じゃ、じゃあ。オレのことはウィリアム、ウィルで」

思わず司は口走っていた。ただ、お互いファーストネームを名乗り合っただけなのに胸の辺りがざわざわして落ち着かない。

意気込む司の様子を不思議そうに眺めていたディアボロの顔にゆっくり笑みが広がった。

 やばい。

「古い家だが、これから宜しく。ウィリアム」

普段は螺がキリキリ巻き上がったような緊迫感と厳しい表情の彼女と打って変わって柔らかに微笑んだ姿はまるで別人のようだ。

それは、一瞬のことでディアボロはすぐ表情を引き締めいつも彼女へと豹変した。

帰った事を告げる彼女に返事をする家族はなく、エントランスから上階のプライベートルームへ続く螺旋階段と回廊に人影は見当たらない。

一階の石造りの広間とは違い、二階からは木造になっていた。

踏めば軋むフローリングの回廊、温かいオレンジ色のストライプ模様の壁には控えめな額縁に収められた肖像画が等間隔で飾られている。

窓から差し込む光が足元を照らし、天井に備え付けられたはめ込み型の照明が必要ないくらい明るい。

不意に右手のドアが開いた。

胸元を強調したレース仕立てのドレスを着た中年女性が飛び出す。扉を閉める直前女性が出てきた部屋が垣間見えた。棚から溢れるほどの帽子やバック、いくつものジュエリーBOX、所狭しと吊り下げられた高価な色とりどりのドレス。一瞬だったがかなりの広さのウォークインクローゼットだった。多分、一部屋丸ごと衣裳部屋なのだろう。

 クロエは城下で見せた格式張った挨拶をした。

「ただいま帰りました。母上」

 母と呼ばれた女性は真っ赤な髪をアップに結い上げ宝石を散りばめた美しい髪飾りで留めている。女はディアボロの姿を頭の上からつま先まで舐めるように眺めると鼻で笑った。

「息子が帰ってきたのかと思った。まぁいいわ。しばらく滞在するんでしょ?七つ目の夕暮れからチャリティイベントを我が家で開催するから必ず参加するのよ。間違っても軍服で参加しないでね。汚らしいから」

「七つ目の夕暮れは確か夜勤の予定です」

「もう仕事場には休むって連絡したわ。あなた、たっぷり有給残ってるじゃない。1年くらい休めばいいんじゃない?」

ぴくりとクロエの頬が引きつった。その様子を面白がるように女は頭を振り、司を射るように見つめた。

 藍色の目を細め好奇心を隠しきれない様子で司の胸に手を這わせた。細く美しい指先には真っ赤なネイルが塗られている。

「軍人じゃないわね。綺麗な坊や。後で私の部屋へいらっしゃい」

 あからさまな誘いに司は驚き戸惑いを隠せなかった。濃厚な雰囲気に息が詰まりそうだったが、女はあっさり手を引き悪怯れる様子もなく軽く手を振ると司が通ったばかりの螺旋階段を降り始めた。

「ほんの戯言だ。部屋に行く必要はない」

呟いたディアボロの表情は硬くその瞳はどこも映していない。

司が掛ける言葉に戸惑っている間に、今度は別の扉が開いた。

中肉中背で白髪交じりの中年男性。顔に深く刻まれた皺、整えられた口ひげと顎髭、クロエと同じ真鍮色の瞳だがそれは濁っていてまるでつや消しした貴金属のようだった。

帰りの挨拶をする娘をちらりと目の隅に捉えただけで直ぐさま目を逸しおざなりに返事をした。妻の行方を聞き出すとクロエと目を合わすことなくクロエの父親、エドワード五  世ダルノルシア・レ・ディアボロは妻の後を追った。

「行こう」

そう言ったクロエの背中は気のせいか寂しげに見えた。

この様子だと彼女が家族とうまくいっていないことを誰でも察することができるだろう。

クロエに好奇心を刺激され、いつもの世話焼きの性格がくすぐられる。慌ててそんな感情を振り払い司は頭を振った。

しっかりしろ、オレ。愛川達を探しに来たんじゃないか?

大切な人を助け、友達と一緒に地球に帰って何の変哲もない当たり前の幸せな日常に戻るんだろ。

司は深呼吸して気分を切り替えクロエの後に続き広々とした屋敷の案内を受けた。


数日後、エントランスホールに5人の老若男女が整列していた。

朝早く呼び出されたウィリアムは彼らの対面に立たされる。

鉄仮面の様に何の表情も浮かべずディアボロが現れ彼らを紹介し始めた。

語学博士 カム。

チョコレート色の肌に黄色い髪は短く編まれている。ドレッドヘアってやつだ。

20代後半、細マッチョでウィリアムより10センチは背が高い。

科学技術現役指導官 ダマラ。

オレンジと白の斑模様の子ネズミで年齢不詳。赤いベストとこげ茶色のズボンを履いている。共通語を話すのが不思議な感じだ。

理数学者 ジャーグ。

白髪白ひげのおじいさん。腰が曲がり杖を突き、近づきすぎると頭の天辺しか見えない。

歴史研究家 キナ。

分厚い本を両手に抱える少女。金髪碧眼でフリルのドレスを着ている。フランス人形?

国軍育成部統括 ミギー。

姿形全てが軍人臭さ満載にしたような大男。身長はけして高くはないが全身に盛り上がる筋肉、無駄に白い歯、短く刈られた茶色い髪に稲妻型のソリコミが恐ろしい。

 ウィリアムが嫌な予感で縮上がっている間に、ディアボロは冷たく断言した。

「優秀な家庭教師達だ。3ヶ月で全てを学べ。最終日に試験をするから合格できなければ地球に強制送還な」

「はあ?!」

ここに来てまで勉強とは。突然のいや、当然なのかもしれない『勉強しろ』宣言に思わず反抗的な態度に出てしまう。

 ディアボロは鼻であしらい些細な抵抗とばかりに有無を言わせなかった。

「朝起きて夜寝るまでスケジュールはビッチリだ。短期集中講座だから覚悟しろ」

もう、これは決定事項らしい。試験を合格しなければ強制送還は確実だ。

彼女はやると言ったことは絶対やるに違いない。

メイドが数人現れ手にしていた書籍を次々とウィリアムの両手に手渡した。

分厚い本はあっという間に積み上げられ長身の彼の顔が隠れるくらい高くなる。首を捻り本の山から顔を出しあまりの重さに表情を歪ませる。

「私が使っている書斎だが、お前の勉強部屋として使うといい。隣の部屋は客室でこれから寝泊まりする場所になる。食事は食堂で摂るのが基本だが、場合によっては客室内だったら飲食OKだ」

歴史研究家と理数学者を伴いクロエは三階へと続く階段を昇り始めた。

道中これからの日程や注意事項を告げながら、書斎という名の監獄に案内される。

黒檀に似た素材のレーバー式アンティークドアノブを回し、赤みを帯びた濃い茶色の重厚な扉をゆっくり開くとクロエは二人の講師と共に薄暗い部屋へ消えて行った。ウィリアムはその後に続き四角い壁に囲まれた暗くて狭い空間を進む。

薄闇の中突然光が溢れ出し、あまりにもの眩しさに目を瞬いた。

明るさに慣れるにつれ自分の居場所が明確になる。

床一面に敷かれた濃い緑色の毛足の短い絨毯。四方に司を囲むガラス戸のついた本棚は天井に着くほど高く、大きめの格子状の組み天井が頭上を覆い、本来高いはずの天井が所狭しと並べられた本棚のせいで妙な圧迫感と閉塞感がある。

差し込む光源はカーテンを引かれた窓からだった。

出窓の真下に置かれてある赤いビロードの猫脚長椅子の傍らに、カーテンを開けた張本人ディアボロがこっちを見て立っている。

逆光で表情は分からないものの、今日は白いワイシャツに黒いスラックスという男装に近い姿だ。しかし小柄な彼女の女性らしい体の曲線や繊細な雰囲気を逆に引き立てている。

ドルシェアーツを装着しているディアボロ師団長ととうてい同一人物とは思えない容貌で、そのギャップに戸惑いを隠せなかった。

 理数学者 ジャーグは骨ばって皺だらけの大きな手を胸元まで上げるとゆっくり横を指差した。ウィリアムは本棚の間を慎重に通り抜け指の先に視線を向ける。

そこには立派な本棚と同じ材木で作られたベック式書斎机が左手に備え付けられいた。

天井まである書棚は空っぽだが、長い間使われてきたような渋みと輝きがある。

 両手に抱えた教本をゆっくり下ろす。

「それは祖父と私が使っていた机だ。大切に使えよ。私はこれから仕事だ。夜勤勤務だから今夜は帰らない。明日になったら少しは賢くなってるといいが?」

積み重ねられた本の一番上に乗った教本を手に取ると、懐かしそうに眺めちらりとウィリアムを横目で見た。

 いちいち嫌味を言うのは口癖だろうか?眉を潜めていると、本を戻した手が不意に彼の頭に触れ乱暴になで始めた。

「ま、せいぜい頑張れよ」

そんな言葉を残して彼女は背筋を伸ばし職場へ向かう。

くしゃくしゃになった髪を整えながら見送るウィリアムは、複雑な表情をしているのに自分自身気付いてなかった。取り敢えずやるだけやるしかないようだ。

彼は唇を噛み、広辞苑より分厚い教本を手に取りページを捲った。


 ドルトレイク城門から次々と官僚やそこで働く関係者達が出てくる。

時刻は夕暮れ時、地球で言えば帰宅ラッシュだ。

その人の波の中にディアボロの姿もあった。今夜は夜勤なので早めの夕食を城下町で取るつもりだ。

 彼女の後ろ姿に気付き近づいてくる者があった。

「クロエ!お疲れ様です」

振り返ると美少女と見紛う美貌の持ち主がそこにいる。輝く碧眼、まるで漆を塗ったような艶やかさの黒髪は肩より長いが耳から下を梳いていて、流れる幾筋もの髪の束はやんちゃに跳ねている。背もさほど高くなくディアボロより頭2つ高いくらいで二人並ぶとその場の雰囲気が艶やかだ。

 二人は人の流れに逆らわずそのまま跳ね橋を渡り、城下町へ向かう。

「お疲れ。こんなところで会うなんて珍しいな。キグナス殿は日勤でもう上がりでは?」

「そ、今日はお終い。クロエは夜勤でしょ?今日は一日定例会議だったでしょ。肩こっちゃってさ、早めの食事ついでに一杯付き合わない?」

 人懐っこい大きな瞳、白磁のような肌、あどけなさが残るキグナスの口から出た言葉は童顔には似合わない飲みのお誘い。

血塗られた乙女と異名のあるポルタ・キグナスは、西部最前線師団の長であり王子の従兄弟にあたる王属だ。

あまりにも美しく幼い顔つきと成長を止めたような少年のような体つきは、周りの好奇に晒され辛い少年時代を送った経験があると噂で聞く。

そんな過去のせいか、容貌とは裏腹に人を寄せ付けない腹黒い性質や残虐な手口から官僚としての道ではなく軍人としての道を選ばせた。

そんな彼が唯一心を許すのがクロエだった。

 小首をかしげて少し考え込んだ彼女の口元に珍しく笑みが浮かぶ。

「そうだな。」

その話に乗りかけた時、地味な茶色い制服姿の男がクロエに手紙を差し出した。

「お手紙です。よかった見失う前にお会い出来て。こちらにサインお願いします」

今時手紙とは時代遅れのようだが、重要書類は証拠を残さないため紙面で送られる場合が多く、直接本人手渡しのうえ本人認証も必要になる。紙のように薄いタブレットにサインをして網膜認識を受ける。クロエ本人と承認され無事手紙を受け取った。

立ち止まる二人の周りを人々が歩き続ける。クロエはその場で封を切った。

真鍮色の目が忙しく左右に揺れ、見る見る彼女の表情が険しくなる。

 好奇心を抑えきれずキグナスはクロエの手にある手紙を覗き込んだ。

「悪いが、飲みはお預けだ。戻ってアルの手料理でも食うか」

 溜息を付き諦めた様子で言った。キグナスは急に意地悪な笑みを浮かべる。

「何?急に。城に戻って副師団長の手料理なんて食べ飽きてるのに。お金がないの?」

「まぁね。忙しさのあまり金に物を言わせ、人様に任せていたら予想以上の請求額になっていた。もっと期間を短くするべきだったか」

 あきらめの境地に浸っているディアボロの手首を掴み、キグナスは強引に歩き出した。

「え?あ、おいっ!」

 戸惑う彼女の気持ちもお構いなしに引く腕の力は男の物で振り払うのは難しかった。

「じゃあ、今日(・ ・)は( ・)僕の驕りね。どうせ夜勤は東の通用門付近の警護と事務仕事でしょ。久しぶりの城庁勤務だから、たまにはまったりご飯食べよ」

「勤務中だ。酒は飲まないからな」

「はいはい」

仕方ない、顔に似合わず強引なキグナスに合わせて食事をするのも悪くないかもしれない。上機嫌の彼と共にクロエは城下町の群衆の中に紛れて姿を消した。

次回予告

 暁の旅団の手にあった世界を滅ぼす『新兵器』が動き出す。

しかし、それは彼らの手に余る危険な代物だった。

制御不能であればこのまま世界が滅んでしまう。

モナルキア軍は暴走するテロ集団の正体に迫る情報を得て討伐作戦を遂行する。

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