Retaliation and sweet trap(報復と甘い罠)④
第3クオーター10分の間に桜ヶ丘バスケ部は2人を残してリタイアに追い込まれ、35対13という大差で勝利を確実のものにした北野中学は、後第4クオーターを残すのみだと思っていた。
しかし、途中から外野から現れた外国人と女のような顔立ちの小柄な桜ヶ丘の男子生徒に有利な試合が揺さぶられている。
居たたまれない試合にギャラリーは1人、2人と減っていき、桜ヶ丘中学の生徒はまばらだ。敗色濃厚な試合に意気消沈していたが、今は目を輝かせ頬を桜色に染め興奮した様子で試合を見ている。
2人が入ってから桜ヶ丘の選手たちの動きは格段に良くなっていた。
今までのんびりした桜ヶ丘のバスケ部が速攻型の攻撃チームへと姿を変えたのだ。
2人にディフェンスされた風之間は巧みなステップと素早いパス、両手を使ったドリブルを駆使し相手を確実に抜き藤波達へとボールをつなげた。
藤波はセンターラインを超えたところでボールを持つとスリーポイントシュートを時折放ち点差を縮める。
ディフェンス、オフェンスともバランスのいい藤波は二人以上の働きをした。ゴール近くで待ち構える司は長身を活かしたダンクシュートを放ち、ボールを手にした時は楽しげに様々なシュートで点を決める。ディフェンスに回れば高く放り投げた球は軽々と奪い、ディフェンスでは目の前の壁となり相手の視界を遮った。
面白いように点差が縮まり第4クオーター終了5分前には1点差までに追いついていた。
額から流れ落ちる汗を手の甲で拭い、藤波は不敵な笑みを浮かべ司を見た。
「ここまで来たぜ」
司はその視線に応え頷いて見せる。風之間を見ると同じように笑顔で頷いていた。
5分もあれば充分点数はひっくり返せる。三人はそう思った。
北野中学の生徒たちは顔色も悪く、悔しげに表情を歪めている。コーチは怒鳴り散らし選手たちに気合入れの平手打ちをしていた。
相手チームは選手を総入れ替えしてきた。今までと顔つきも違う屈強な選手たちだ。
「調子に乗るなよ、素人」すれ違いざまに聞こえるか聞こえないかの声で囁かれる。
試合再開のホイッスルがこだました。
司は北野バスケ部で1番体つきがよく背の高い生徒にぴったりマークされ、藤波にべったり2人ガードがつき、残りの2人は風之間につき完璧なディフェンス体制で挑んできた。さすがに身動きが取れにくく、司たちの動きが鈍くなる。
焦れば焦るほど動きが大きくなり容易にディフェンスに捕まってしまう。
競り合っている間に時間は刻々と流れ、試合終了まで残り3分までに追い詰められた。
長いようで短い3分間。
司たちはそれぞれ目配せをすると桜ヶ丘のバスケ部員は素早く行動した。
ボールを持っていた風之間が強引にディフェンスをこじ開けフェイントを交えたバックパスを放つ。体育館の床に倒れ込みながら風之間の視線はボールを追っていた。
唯一残った2年補欠の山田がしっかりキャッチしノーマークなのをいいことにドリブルで走り進める。慌ててディフェンスに行く北野バスケ部の手がとどく前にバウンドパスを司へ投げる。司は素早くキャッチし相手が来る前に1年補欠の桜木にさっさとパスをする。
桜木は相手をなんとか押しのけながら走りゴールへと距離が縮めたが彼の快進撃もフリースローライン前で遮られ、あっという間に囲まれた。
ボールを持って右往左往していた時、背後から声がかかった。
「桜木!」桜木は反射的にボールを後手に手渡しする。彼の背後にまわりボールを受け取った藤波はあっという間にゴール下まで来ると、まるで教科書見本のような綺麗なジャンプシュートを決めた。
ほんの1分もたたない出来事だ。
歓声を上げながら司たちは走りより喜び合う。
まるで勝ったような桜ヶ丘の騒ぎに北野中学の生徒たちは表情をこわばらせていた。
「クソ外人、調子のんじゃねぇよ」「さすがお坊ちゃま、お嬢様がお通いになる学校だ。金に物言わせて困ったときの外国人助っ人かよ」「きもいんだよ。ロン毛のオカマ野郎」
こっちに聞こえるくらいの悪態をつく。
司は肩をすくめて風之間を見た。
「オレ、なんだか集中的に言われてるんですケド」
「ハハハ。目立つもん中村くん」
顔を上げ司のミルクチョコレート色の瞳を覗きこんだ志郎の瞳は黒曜石みたいに面白そうに輝いている。
いつもは黒縁メガネと長い前髪で隠れている顔が、前髪をちょんまげで結んでいるので露わになっていた。白い肌タマゴ型の輪格、小さめの鼻にぽってりと厚めのさくらんぼ色の唇には笑みが浮かんでいる。黒目がちで、大きくてキラキラ輝く瞳はまるで子猫のような愛らしさだ。
実は文武両道だという話は本当だったらしい。
学年一位の成績、このバスケで見せた機敏な動き。とてもいじめられていた根暗のメガネ君とは誰もが想像できないだろう。
司はニヤリと笑ってウインクしてみせた。
「よし!もう一息だ」「うん!」速攻で返事を返した風之間は司とコートへかけ出した。
試合再開のホイッスルが鳴り素早く定位置へつく。
あっさりボールを奪われた北野バスケ部は桜ヶ丘の動きを見て素早く反応しディフェンスへ体制を移す。
藤波はドリブルしながらセンターラインを越えフロントコートに入った瞬間、大きく腕を振りかぶった。
北野バスケ部員たちの表情が強張り、大きく口が開く。青ざめた彼らを尻目に桜ヶ丘のバスケ部員たちは意味ありげな笑みを浮かべている。
北野で1番体格が良いシューティングガードの戸田が、藤波に駆け寄る。
戸田がボールに触れる前に、藤波の手からボールが放たれた。
天井に届くくらい高く放られ緩やかな弧を描きながら落ちていくボール。
北野バスケ部員たちはボールを目で追いつつ素早く相手チームのメンバーを一蹴した。
そのボールは誰の手に届くことなく、バスケットに吸い込まれた。
ゴールを告げるホイッスルと試合終了の合図のホイッスルが同時に鳴らされた。
愕然としている北野バスケ部とは対照的に飛び上がりながら喜んでいる桜ヶ丘の生徒達。
バスケの試合は大逆転劇で幕を閉じた。
北野中学の生徒たちも家路につき、ギャラリーも人影がなくなった頃、片付けもあらかた終わってバスケ部員たちはめいめい休憩を取っていた。
「いや、ホント。お前らには何て礼を言っていいか言葉も見つからないよ」
感極まった様子で藤波は司と藤波に駆け寄った。
飲んでいたペットボトルから口を離し司は応える。
「どうってことない。オレも藤波には助けられてるから」
「うん。僕もお役に立ててよかったよ」
ひたすら感謝を述べる藤波に風之間は嬉しそうに言い、一息つき汗を拭っていたタオルを置くと素早く黒縁眼鏡を掛けた。
ちょんまげ以外いつもの風之間だ。
満足そうな2人に、藤波は神妙な面持ちで持ちかかる。
「やっぱお前らバスケ部入れ!そして全国制覇。もしくは世界一に!!」
「いやぁ。おっきな夢だねぇ藤波くん。でも僕は勉強を疎かにできないから協力できないよ」
のんびりと風之間は言い、ペットボトルのお茶を飲み干す。
「前にも言っただろ。オレには家庭があるから」
タオルを首にかけ司はそっけなく返事をする。
「なんだその枯れた中学生発言は!志郎は文武両道だろホントはっ。人間関係めんどくさいからって正直に言え!司、主夫発言してんじゃねぇ!妻子持ちじゃないだろう!!」
「はいはい」まだまだ食い下がる藤波に適当に返事をして2人は苦笑いをした。
その時人垣の後ろから担任の高橋が顔を出した。
「中村、お前こんなところで何やってるんだ。今日、日直だろう。新田はしっかり日誌を出したぞ。まだ教材が教室に残っていたからさっさと片付けろ」
「Bad.すみません。すぐ行きます」
バスケに夢中ですっかり忘れていた。慌てて立ち上がり司は駆け出す。
その後姿を見送りながら藤波はつぶやいた。
「あいつ。時々英語が飛び出すよな」「無意識だから本能的な感じじゃないかな」気にもとめない様子で風之間は答えた。
はだけたシャツから白いレースのブラジャーが眩しい。
震える手で黒木はブラに手をかけると一気に捲くし上げた。
愛川の呼吸と共に揺れる胸が興奮をそそる。
室内の寒さに晒された肌に鳥肌が立つのを見て取れ、みるみる胸の頂きが硬くなるのをまのあたりにする。
咥内にじわりと溢れたつばを黒木は思わず飲み込んだ。自分でも驚くぐらい下半身が反応しているのがわかる。
彼女に覆いかぶさり大きく口を開く。これから初めて味わう女の体に、黒木は全身の血が沸き立ち今まで体験をしたことのない衝動に駆られた。
今まさに、そこまでご馳走にありつけそうになった瞬間、肩を捕まれ、体を引き離された。
怒りが込み上げ肩越しに邪魔者を睨みつける。
そこには頬を興奮で赤く染め、鼻息荒い八嵜の姿があった。
性的欲求に囚われた八嵜は、妖艶で男性ホルモンがまるで体から匂い立つような危険さだ。
ビデオカメラを黒木に押し付けると愛川に覆いかぶさる。
「しっかり撮っておけ」掠れた声で命令すると、待っていたおやつを与えられた子供のように愛川の胸をしゃぶり始める。右手で足を撫でながら焦らすように彼女の中心へと手のひらを移動していく。開いている左手は立ち上がった欲望の証を抑えこんでいるズボンを脱ぐのに必死だ。その動きには余裕がなく、この手のことに不慣れなことを感じさせた。
「くそっ」ビデオを回しながら、黒木は収まらない衝動へと手を伸ばす。
異様な雰囲気と艶かしい空気が興奮を掻き立てられ、2人の熱く荒い吐息が部屋中に響いた。「う、あ..んっ」体の反応に愛川は堪らず甘い声を漏らす。
「くそっくそっ」悪態を付きながら黒木は自身を握りしめていた手を動かし始めていた。
愛川を味わい八嵜は己の欲望の象徴を解き放つと、彼女のスカートの中に手を差し入れショーツに手をかけた。
その時鈍い音が辺りに響く。
瞬く間に性的熱気に包まれていた部屋に、背筋が凍るほどの冷気が蔓延し、張り詰めた空気が漂った。
振り返ると黒木はビデオを持ったまま床に倒れており、彼の側にやけに大きな男が立っていた。大きな男物の上履きにスラリとした長い足が、上へと視線を上げていくと、見たこともない鬼の形相が目に飛び込んだ。
侵入者の顔を見るなり八嵜は自分の格好を忘れるくらい凍りついた。
「随分楽しそうなことしているんだね。オレも交ぜてくれないかな」
そう言う司の目はちっとも笑っておらず、そもそもその言葉は本心ではないのはひと目でわかる。床で伸びている黒木以上のことをするつもりなのは間違いない。
司の手には大判の巻物2つとその半分くらいの巻物。そしてもう片方の手には地球儀が持たれている。その地球儀はベッコリ凹んでいた。
地球儀と巻物を司は無造作に手放すと、手元に残した長い巻物を八嵜の目の前に突き出し素早く振った。
巻物は八嵜の顔面を直撃する。すかさず司は長い足を後ろに振ると、八嵜のみぞおちに蹴りを入れた。
「どけよ」司が言うまでもなく、八嵜は半裸の姿で床に転がる。司は舌打ちをしてズボンのポケットからハンカチを取り出すと機材を洗う流し台で備え付けの蛇口をひねり水で濡らした。
司は愛川の横に跪き汚れた胸を丁寧にハンカチで拭う。綺麗にした後、慣れた手つきで乳房をブラの中にしまいこんだ。
奇妙なことに妹達がブラジャーを使うことになった時を思い出していた。聞くに聞けない戸惑う妹達のために調べて、着せてあげたっけ。仕事で留守がちの父の代わりに双子の面倒をみていた司はもはや彼女たちの母親代わりだ。最近やっと家事を手伝うようになったが、まだまだ子供で教えることも多い。女の子の思春期の体の変化についても、司は妹の為を思って勉強した。
はだけたセーラー服を合わせ、めくれたスカートを伸ばし、何事もなかったかのように愛川の身なりを整える。こんな騒ぎの中でも赤ちゃんのように無垢な寝顔の彼女を見ていると切なくなった。そのそばで慌てた様子で服を着る八嵜の姿があった。
なんとなくムカついてそいつの腹に蹴りを入れた。
鈍い音がして八嵜は前のめりになって床を這いつくばる。
「Idiot!!Serves you right!」吐き捨てるように呟き、司は歯を食いしばった。
怒りで頭に血がのぼり、頬が熱い。喉から込み上げる吐き気と胸のムカつきはこんなものでは到底抑えられそうにない。
何度も振り上げそうになる手をありったけの自制心をかき集め下し、次に手をあげたら相手を殺しかねない気持ちを無理やり心の奥に押しやった。
この様子だと手遅れではなかったことに司は安堵する。
痛みにのたうち回る2人を無視して、司は愛川を抱き上げると科学準備室を出て行った。
更新おそくなりました。すみません><;
再就職して正社員になるために頑張っているので、なかなかこちらに重点置けませんでした、、
でも、最後まで書き続けますので、今後とも司達をよろしくおねがいします。




