それはかなしきいとしきしあわせな
Q.コメディなの?シリアスなの? A.どっちつかず
※設定は生かせていない
「イル、結婚してくれ!」
「無理です」
私の両手を包みながら、与えられたプロポーズ。
それに私は一息置く事もなく、ばっさり断ち切った。
あまりにはっきりとした拒絶のせいだろう。
反論もできず呆然とする彼。
「無理です」
「な、なんで二度も言う!」
「無理です」
「俺を泣かせたいのか、お前は!」
私の意思を伝える度、彼の悲壮感が増していった。
会う者会う者が片っ端から魅了させられる美貌を、
ぐちゃりと歪めながら、リギアは叫ぶ。
「お前が俺を子供にしか見れなくても、
俺はお前を愛してるんだ!!」
「貴方も好きな人ができるほど大人になったんですね。
お母さん、息子の成長に驚きですよ」
「なんか他人事みたいに言ってるけど、
その相手はイルだからな?」
「私は無理です」
「チクショオオオオオ!!!」
ミステリアスな外見台無しで泣き喚くリギア。
普段のクール通り越してコールドな彼からは考えられない動揺っぷり。
魔王ルィギアーズドを盲信している者は、
きっと幻覚だと思い込むはずだろう。
何があっても同一人物だとは思うまい。
養母である私はちゃんと理解しているけど。
私イルは彼が赤ん坊の時から育ててきた魔女だ。
先程から申し上げている通り実母ではない。
けど、それはそれは愛してきたつもりだ。
なんか育て方間違ってしまったようだけれど。
「何故だ、何故、断る!
丸っきり恋愛対象外なのか!
それとも俺が嫌いなのか!」
「私としては受けたいところなんですけどねー。
貴方の事は心から愛していますし。
あ、親愛じゃなくて恋愛的な意味で」
ボッと彼の顔が一気に紅くなる。
湯気だっているのは気のせいか。
泡を食ったような表情をしている。
美形だとこんな顔でも綺麗なんだなーと、
場違いな事を考えてみた。
「私なんかを好きになってくれた貴方が、
大好きですよ、私は」
「な、ならどうして」
「だって、私、人間ですし」
私はそう人間なのだ。
でも人として扱うには魔力があまりに強すぎて。
それだけならまだ人間と言えたが、
私は同種である人を殺した。
自分を犯そうとした叔父を魔法で。
その日から私は魔女と呼ばれた。
何も知らない人間達に。
いつの間にか周りは私を害なす者と称し、
毎日毎日狩られそうになった。
そんな日々に嫌気が差して、
私は自分を人間と語るのをやめた。
好んで魔の森へと移り住み、
人の子イリカではなく、魔女イルとして生きるようになる。
そこで私はたまたま捨てられていたリギアを拾い、
いつの間にか彼が魔王の座に就くまで育てていた。
ちなみに反抗期は考えていたがこれは来ず。
うんうん良い息子だ。でも惚れられるなんて全くの予想外。
だから若干動揺しながらお断りしたのだけれど。
「貴方の事、すぐ置いていっちゃいますからね」
だって魔力があっても所詮は人ですからねー。
老いは止められないのですよ。
なのであのウッハウハのハーレム!ハーレム!の中から、
ボンキュッボーンな魔族の姉ちゃん選んだ方が良いと思うのです。
こんな貧相で短命な枯れてる女よりも。
「かまわん!お前じゃなきゃ嫌だ!」
「あらあら、わがままですねえ」
「お前がそんな寂しい事言うからだろ!」
「だって事実ですもん」
「でも、でも、俺は、」
そこで声を詰めて、リギアは今度こそ盛大に泣き始めた。
私弱いんですよねえ、この顔。昔から。
「私の愛し子、泣かないで」
優しくハンカチで拭って、背伸びしながら彼の目尻に口付ける。
なら強く手首を握られ、次の瞬間、無理矢理唇を奪われた。あらま。
でも別に抵抗もせず、ただ彼の好きなようにさせる。
「なんで嫌がらないんだ」
「嫌じゃないですから」
唇を離して尋ねる彼に私はそのままの気持ちを。
ただでさえ赤かった顔が耳まで染まる。
「……イル」
「私は幸せに死んでいきますよ。
でも貴方は不幸に生きていきますよ」
「何でそう思う」
「貴方はそういう子ですもの」
何年育ててきたと思ってるんですか。
母親舐めちゃあいけませんよ。
「間違ってる」
「おや、そうですか?」
「お前が愛してくれたなら、
俺は絶対に不幸になんかならない」
だって、今、俺はこんなに幸福なんだ。
と、真摯な声でリギアは漏らす。
またもや泣き始めた彼、昔から涙もろいのは変わらない。
そんな姿を見て、私は一つ自分の中で決断を下した。
「そう言われて答えないなんて母が廃るってもんです。
いいでしょう、結婚しましょう!」
「イル……ってそこは女じゃないのか」
「私は女である前に母親ですから。
子の幸せを願わずにはいられないのですよ」
頭一つ大きい彼。その胸に抱きついて背を撫でる。
子供の頃はずっと抱っこしてたのに、
今じゃ私が抱きかかえられるばっかりですよ。
まだまだ子供だと思っていたのに。
いつの間にこんなに大きくなってたんでしょうね。
「たくさん幸せな記憶を作りましょう。
私がいなくとも寂しさを覚える暇も無くなる位に」
また会える日まで貴方が幸せでいられるように。
背に回された腕が強く強く私を抱く。
その温もりの中、私はそっとそう呟いた。
育ての義親←←←子供が大好きでつい…。
あと完璧なイケメン(※ただしヘタレに限る)がもっとムシャアしたいので、
皆さんも書いて下さい!自給自足辛いです!!お願いします!!!
なんか色々ぶちこわしですが、ここまでお付き合い下さりありがとうございました!