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ご主人様と猫。  作者: 鍵屋
はじまりの話。
6/18

6、捕獲されました。

 そのまま勢いで、誘導尋問の如く、アタシは個人情報から身の上話まで。

 ピンからキリまで話すハメになったですよ。

 すると男の人は少し考えるように首を傾げたかと思うと、「じゃあ、うちに来ない?」と、名案とばかりに言って下さりやがりましたです。


 こんな得体の知れない不届き者の誘いだというのにですよ、思わず頷きそうになってしまったですよ。

 脳裏に柔らかい寝床と、温かい食事が浮んだからではないと。アタシは声を大にして主張いたします!


 NOと言おうと、決意を胸に開いたアタシの口からは、なぜかアタシもびっくりな言葉が飛び出しました。


「…………いいの?」


 アタシのお口っ! にゃんということを!

 男の甘い言葉には気をつけなさいと、叔母さんが常々言ってたじゃないですか!


 一度口から飛び出た言葉は戻すことが出来ないのです。

 冗談だと返ってくるのが半分、いいよと返ってくるのが半分。そんな期待で心の天秤がゆらゆら動くです。


「いいよ。

 文句言うのがいるかも知れないけど、俺の決定には逆らわないから」


 ん? 文句を言うの、ですか?


「大丈夫、ひとり暮らしじゃないから」


 アタシの心の疑問が通じたかのように、その人は笑顔で言います。

 というか、ソレを先に言えってんですよ。

 家族と同居しているなら、素直に頷けたと言うのに!


「それに俺、女には困ってないし。胸も尻もある後腐れの無い友達がいるし」


 そのトモダチには妙なニュアンスがありましたですよ!

 んでもって、さり気なくアタシが乳も尻もないちんくしゃだと貶しましたですよね!


「ねえ、みー。

 いいでいられるなら、次のアパートが決まるまでうちにおいてあげる」


 まるで猫を呼ぶかのようにアタシの名前を呼び、猫の喉を撫でているかのような手つきでアタシの顎の下を撫でます。

 やっぱり不穏な〝イイコ〟です。

 それでも魅力的すぎる誘いなのです。


「俺の謝罪、受けてくれるって言ったよね?

 ――返事は?」


 顔を背けられないように固定され、再び顔が近づけられます。


 さっきよりは遠いけど、息がかかるくらいには十分近い距離。

 アタシを見るその目の中に、アタシが映りこんでます。


「と」

「と?」

「泊めてってアタシからお願いしたんじゃないんだからねっ」


 素直にお願いするのが癪だったってのもあります。

 だけどそれ以上に、ものすごく、納得がいかない点が多すぎるですよ!

 だからそんな物言いになったのです。


 が、どうやらアタシの返事はお気に召さなかったようなのですよ。


「まあ、今はそれで勘弁してあげる」


 にやり。そう擬音をつけたくなるような笑みを浮かべやがったのです。

 でもって、ちゅっ。と音を立て、アタシの鼻のてっぺんにキスしやがったのですよ!

 一度で飽き足らず、二度も!

 乙女に同意を得ずにキスをするなんて!


 ここは怒って正しいのです。

 責められるべきは、思わず手が出たアタシではなくこの不届き者。

 決してアタシは悪くないのです!


「家に着いたら真っ先にお仕置きだね、みー」


 ふぎゃーっ!

 数秒前のアタシ、怨むですよーっ!

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