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ご主人様と猫。  作者: 鍵屋
はじまりの話。
13/18

13、嵐が通り過ぎました。

 …………あふぅ。

 なんでなのでしょう、ため息が尽きないですよ。


 アタシはマイソファで丸くなると、幾度目かわからないため息をついたのです。


 アレは強烈でしたのです。破壊力抜群でしたのです。

 今まで一緒に住んでるなんてのは書類上だけのもので、現実には一人暮らしだったから気付かなかったのです。


 体力をごっそり奪い取られた気分なのですよ。




 結論を先に言いますとですね、アタシは敵前逃亡しましたのですよ。

 叔母さんと一緒に暮らすなんて勇者なことはアタシには無理だと悟ったのですよ。

 叔母さんを捕獲したというレオさんを褒め称えたい気分で一杯なのです。


 つまりですね、叔母さんはアルコールが入ってなくても強烈だったのです。

 アタシには一緒に暮らして、あの過剰な愛をこの身に受ける勇気はなかったのです。


 叔母さんは部屋に入ってくるなり、ご主人様の膝の上で固まるアタシに僅かに息を呑んだだけで、マシンガンの如く言ってくれましたです。


 アタシの愛しの姪になにしてくれてるのよ。

 その子はアタシが姉さんから預かってる大切な子なのよ。

 悪い虫がつかないように、男の醜悪さをきっちりと言い含めて育てたのに。よりによってレオの知り合いなんかに!

 嗚呼、神様! アタシが至らないばっかりにあの子に苦労をかける事になってしまったわ。アタシはどう責任をとればいいのかしら。

 そもそもそこのアンタ、アタシの愛しの姪を傷物にした責任をとりなさい。

 本音を言うなら今すぐにも掻っ攫いたいところだけど、子どもには父親が必要だもの。それがどんなに卑劣で救いようのない悪辣な男だとしても!

 類が友を呼ぶってのは本当だったのね!


 とまあ、色々と要約するとこんな感じの内容をほぼ一呼吸で言ってくれたですよ。

 途中で英語とか、フランス語やドイツ語らしきアタシには理解出来ない言語でも罵りらしき言葉を言っていたです。

 荒い口調とそれを聞いて微妙な表情を浮かべた犬さんからの推測ですけど、あながち間違ってないと思うですよ。


 叔母さんはまるで、猫が背筋を逆立てて威嚇してるみたいだったのです。

 レオさんとやらと何があったのか聞いてみたい気もしたですが、まさしく「触らぬ神にたたりなし」と判断したアタシは貝のように口を噤むことに決めたです。


 レオさんの腕の中に捕らえられ、こちらを――正確にはご主人様をですが――睨んでくる叔母さん。

 相も変らずご主人様のお膝の上だったアタシはご主人様をちらりと見上げ、表情ひとつ変えなかったご主人様に決意したましたです。


「あのね、アタシこのヒトのところにお世話になるから」


 ファーストなキスもファーストなべろちゅーも奪われたけど、傷物と呼ばれる関係になってないし。

 冗談でなく、愛玩動物ペット扱いだし。


 色々と不満や不安はあるのですよ。

 だけど叔母さんとの生活を天秤にかけたら、こっちのほうがマシかなぁとか思った次第なのですよ。はい。


 叔母さんはその目に大粒の涙を浮かべるとレオさんに抱きついて、言ってくれました。


 あの×××(ぴー)×××(ぴー)×××(ぴー)してやりたい。

 伏字のところは右から左に、頭の中に残らずに素通りした単語なのです。聞こえてはいたはずなのですが、脳が認識することを拒否したのですよ。


 爆弾発言をしてくれた叔母さんをレオさんは抱きかかえると、ご主人様とアタシにホテルに戻る旨を言って、犬さんを連れて去っていったのです。




 アタシは悟ったのです。

 叔母さんは嵐、それもアタシでは到底太刀打ち出来ないほどの巨大台風だと!


 うーうーうー。

 叔母さんはスーパーウーマンに違いはなかったです。

 ですがそれが「デキル女」という方向ではなく、恐ろしく迷惑だという事実をアタシの心と頭が認めたくないと拒否してるですよ。


「みー、頭の整理がついたらこっちにおいで。

 レオが持ってきた菓子でお茶にしよう」


 アタシを放っておいてくれたご主人様が、頃合いを見計らったように声をかけてきましたです。

 菓子という言葉に反応してしまったのは、アタシが食い汚いからではないと主張しますです。

 頭を使うと、エネルギーを消費するのです。

 これはアタシの身体が糖分を要求しているということなのです。


 ソファーの上で膝立ちになったアタシにご主人様は笑みを浮かべ、ちょいちょいと手招きします。


「おいで、みー」


 それから念を押すようにもう一度呼ばれ、アタシはご主人様のところに向かったのです。

 普段なら渋々と向かうところですが、軽やかな足取りで。


 保護者公認の飼い猫ライフの始まりなのです。

 飼い主に媚を売っておくのも悪くないんじゃないかと、飼い猫(ペット)なアタシは考えたのですよ。

とりあえず、ここでプロローグ的なものは終り。

続きの構想はあるので、たぶん、続きます。

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