1、お持ち帰りされました。
「若様、それは?」
寝床を求めてふらついていたところを捕獲され、誘拐よろしく連行された先は豪邸でした。
そして出迎えたのは、一ミリの隙もなくきっちりとスーツを着込んだ銀縁眼鏡のどこか冷たい雰囲気のおにーさん。
「拾ったんだ。飼うつもりだからそのつもりで」
そのおにーさんに〝若様〟と呼ばれた、えっと、ご……ご主人様は、平然と言い切ってアタシを抱き上げたままその脇を通り抜けた。
「若様、ご冗談が過ぎます!」
「冗談じゃないよ、乾。
みーは俺のペット、この俺に爪を立てる生意気なネコだ。それ以上でもそれ以下でもない。お前が心配するようなことじゃない」
「ですが!」
おにーさんは納得がいかない様子で怒鳴り、アタシを持っているとは思えない身軽さで歩くご……だああっ、もう! この人、を追いかける。
そのお怒りはごもっともだとアタシも思うですよ。アタシとしましても、この人に捕獲されたのはひっじょおに不本意なのですから。
逃げようにも、しっかと抱き上げられたのでは抵抗らしい抵抗も出来ないのです。
捕まる前にはちゃんと、爪を立て、歯を剥いて抵抗したのです!
ですがその甲斐なくあっさりと捕獲。
大人しく飼われたなら三食寝床付き、という甘言に惑わされた訳じゃないはずです。
ええ、アタシにもプライドというものがあるのです!
世間の荒波にもまれて、爪の垢ほどに削れてしまいましたけども。
ともかくっ!
コレにはふかぁーいふかぁーい、恐ろしく深い事情があるのです!




