1 今宵は素敵な舞踏会を
今宵はシルヴィア王国のお城で舞踏会が開催されており、高くそびえるドーム型の天井、2階から中央へかけて大理石の大階段。豪華なシャンデリアの下でタキシードと、ロングドレスを着飾った参加者達が大いに盛り上がっている。
「いつも素敵な舞踏会に招いてくださり、ありがとうございます。レオンハルト国王陛下」
白い肌に長い睫毛、柔らかな桃色の髪と透明感あるライトブルーのロングドレス。そして、宝石のように美しい藍色の瞳が見る者を魅了させる。エリンシアは深々と頭を下げ、レオンハルトに挨拶をする。
リーズレット王国と、シルヴィア王国は隣国同士、レオンハルトとエリンシアの父ラモンは互いに交流する仲でありよく酒を酌み交わしてたが、二年前にラモン王は流行りの病で他界。それ以来娘であるエリンシアは毎年、舞踏会に招いてもらっている。
「今日は思う存分に楽しんでいってくれ。エリンシア姫」
すると、レオンハルトが「良ければ、うちの息子と踊ってやってほしい」と息子の名を呼ぶ。しばらくし、華やかな王族服を身にまとった青年がやってくる。全体的に黄金比のバランスがよく整った顔立ち。おまけに姿形も美しく、銀色の髪が目を惹いた。
「初めまして。私はシルヴィア王国の王子で、レオンハルトの息子のオルウェンです」
丁寧な言葉遣いに、耳触りがいい優しい声。明るくて鮮やかな翡翠色の瞳が、優しくこちらを見つめる。ふわりとドレスの裾を持ち、王子に続いてエリンシアも自己紹介をした。その後ろで、レオンハルトも嬉しそうにニ人のやりとりを微笑ましく見る。
「オルウェン、エリンシア姫をエスコートしてあげなさい」
父の命令に透かさずオルウェンは従い、エリンシアにそっと手を差し出した。
「さあ、お手をどうぞ。麗しの姫君」
心地よい曲が流れてくる。
ニ人は、曲に合わせて踊り出す。
「ダンス、お上手ですね」
「い、いえ。そんな‥‥。オルウェン王子のエスコートのおかげです」
少し頬を赤くして、エリンシアはステップを踏む。
一方、オルウェンは割と余裕そうでその姿はどこか手慣れているようにも見えた。
あっという間に時間は過ぎ、これにて舞踏会は幕を閉じた。他愛もないやりとりをして、二人はバルコニーで夜空を見上げる。すると、不意にオルウェンの横顔が目に入った。その美しい顔立ちにエリンシアは思わず見惚れてしまった。オルウェンもこちらに気づいたのか、優しく微笑む。
「す、すみません」
そう言ってエリシアが横に顔を背けると、オルウェンが口を開く。
「‥‥貴方の瞳は、とても綺麗ですね」
急に頭の中が真っ白になり、胸の鼓動が早くなる。
「あ、ありがとうございます‥‥」
今はただ、それしか言えなかった。
「エリンシア姫。どうやら私は、貴方に一目ぼれしてしまったようだ」
明るくて鮮やかな翡翠色の瞳が、真っすぐにエリンシアを見つめる。
「貴方のことが好きです。どうか、私の伴侶になってはくれませんか?」
突然だったので、なんて返事をすればいいのか分からなかった。もちろん、彼の想いは決して嘘ではないことなのは分かる。王子とは出会って間もない。まだ、そういう関係になるのは早いのではないかと。
「お言葉は嬉しいのですがまだ、そういう関係になるのは‥‥」
すると、その時だった──。




