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正義執行委員会

作者: 紫将


「おばあさん、階段登るの大変でしょう。荷物持ちますよ。」

「あら…いいの?悪いわね。」

「もちろんです。困っている人は見過ごせないですから。」

 元気よくおばあさんに答える。そして、おばあさんが背負っている荷物を受け取り担いだ。

「済まないね。」

「お互い様です。」

 おばあさんを支えながら僕は階段を登る。

「しかし、こんな階段を一人で登るなんて…どこかご予定ですか?」

「交番に行こうと思ってね……。実はさっき怪しい男が、何か危なそうなものを持って"正義とは?"とかなんとか聞いてきて……。大丈夫だとは思うんだけど、気味が悪いから一応警察の方に話しておこうと思って。」

「たしかに、それは気味が悪いですね。相談しといて間違えはないですよ。」

 少し不思議な話を聞きつつも僕は階段を登り終えた。

「助かったよ。ありがとうね。」

「いえいえ、気にしないでください。」

 僕はそこでおばあさんと分かれた。


………階段を降りる僕の背中に刺さるおばあさんの怪しげな視線に僕は気づかなかった。


(少し時間を使ってしまったな…)

 僕は時計を見ながらそう思った。今日は予定があり、学校で待ち合わせしていた。そして時間はとっくに過ぎている。

(急がないと……)

 学校に大急ぎで走った。


 学校につくと校門の前で待ち合わせをしていた林佐奈が待っていた。

「ちょっと、遅すぎよ。」

「ごめん。困っているおばあさんがいたからつい……。」

「はぁ、そうだと思ったわ。別にいつものことだから慣れっこだけど……それにこの委員会の目的が人助けなんだからいいけどね。」

 僕と佐奈は正義執行委員会に入っている。この委員会というのは困っている人をとにかく助けようと言う気持ちで僕が立てたものだ。

(委員会って名前は付いているけど僕と佐奈しか入っていない、いわば同好会なんだけど……)

「それで、今日の活動はどうする?」

「それは、佐奈から誘ってきたんだから、決めていいよ。」

「そう?じゃあ今日はパトロールでもしよっか……勇斗は何か危険そうなところを探して。私は、街の人にいろいろと話を聞くから。」

「了解。じゃあさっそく行こう。」

 僕たちは千田街へと繰り出した。



 いつもパトロールをしている千田街につくと

「ここらで別れて、行動開始としましょう。」

「僕はあっちの方に行ってみるよ。佐奈は?」

「私はここらへんで聞き込みをしてみる。お互い頑張ろうね。」

 佐奈と言葉をかわして別れた。

(佐奈は正義感があって優しいし、本当にいい子だよなぁ。)

 

 それから1時間ほど見回りをしていると眼の前で怪しい男が路地裏に走っていくのが見えた。

(怪しすぎる…)

 そう思って後をついていくことにする。

 すると、その怪しい男がバールを持った男と路地裏で会っていた。

「あの……急いでこんなところに行くなんて、どうしたんですか?」

「…………」

 僕の問には一切答えなかった。

 少し不気味に感じていると怪しい男がバールを持っている男に話かけた。

「正義とは?」

「正義のために遊び尽くす。」

「こちらは、準備完了だ。俺たち正義執行委員会の力を見せてやれ……」

 二人はそう言葉をかわした。

(正義執行委員会だって……)

 聞き慣れた言葉に戸惑いを隠せずに居た。

「……………」

 すると、突然目眩がして僕はその場で倒れた。最後に見えたのは微かな人影だった。

「ぼ………」

そう言いかけ僕は気絶した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どうしますか?もう少しで過去に飛べなくなります……潜るなら精々あと一回が限界です。」

 どこからとなく声が聞こえる。

「わかってる。でも、この一回にかけるしか無い。私がもう一度やるわ。」

「本当に大丈夫なんですか?」

「やってみるしか無いでしょう。半年前に過去へ飛んだ時は何も成果を得られなかった。だから何としても爆弾の位置を探り当てないと……それに合言葉は聞き出したわ。勝算ならある。今回はできるだけ関係のない人との接触を減らすように設定して記憶を探るわ。」

「彼の記憶を元に仮想世界を作っているわけですから、変更を加えすぎると覚せいする危険が……」

「仕方ないわ。そらに大分変更を加えてるわけだから。今さらよ。」

「そうですか、わかりました。何としてでも私達の世界のために。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おばあさん、階段登るの大変でしょう。荷物持ちますよ。」

「あら…いいの?悪いわね。」

「もちろんです。僕は正義の男ですから。」

 元気よくおばあさんに答える。そして、おばあさんが背負っている荷物を受け取り担いだ。

「済まないねぇ。」

「お互い様です。」

 おばあさんを支えながら階段を登る。

「しかし、こんな階段を一人で登るなんて…どこかご予定ですか?」

「交番に行こうと思ってね……。実はさっき怪しい男が、何か危なそうなものを持って"正義とは?"とかなんとか聞いてきて……。大丈夫だとは思うんだけど、気味が悪いから一応警察の方に話しておこうと思って。」

「たしかに、それは気味が悪いですね。相談しといて間違えはないですよ。」

 少し不思議な話を聞きつつも僕は階段を登り終えた。

「助かったよ。ありがとうね。」

「いえいえ、気にしないでください。」

 僕はそこでおばあさんと分かれた。


………階段を降りる僕の背中に刺さるおばあさんの怪しげな視線に僕は気づかなかった。


(少し時間を使ってしまったな…)

 僕は時計を見ながらそう思った。今日は予定があり、学校で待ち合わせしているのだった。そして時間はとっくに過ぎていた。

(急がないと……)

 学校に大急ぎで走る。

 学校につくと校門の前で待ち合わせの予定の林佐奈が待っていた。

「…………。あなたに言わないといけない事があるの。」

 佐奈は僕に突然突拍子しのないことを言ってきた。

「どうしたの?急に……。」

「実は、私は未来からきたの。この日に起きるテロを阻止するためにね。」

「テ、テロだって。しかも未来からきたなんて…」

 現実離れした言葉に僕は驚きを隠せないでいた。

「そう、テロよ。今から約2時間後、街は火の海になる。しかも、世界中あちこちで起きるわ。それを止めるために私は来たの。」

「そんな、急に言われても…」

「あなたが世界を救う鍵よ。何としてでも防がないといけないの。だから協力して。」

 テロとか未来とかそんなものは信じられないけど、世界を救うためと言われてはなんとかするしか無い。

「話は飲み込めないけど、とりあえずは信じてみるよ。」

「ありがとう。それで何だけど……何か怪しい場所とか、怪しい人とか見ていない?」

 佐奈にそう言われ僕はさっきのおばあさんの話を思い出す。

「そう言えばさっき、おばあさんが怪しい人を見たって言ってた。ちょうど交番でその話をしているはずだ。行ってみよう。」

「そう、だったら私は用事があるから交番に向かってて。」

 僕は交番へと向かうことにした。



 

 交番では、おばあさんが警察の方と話をしていた。

「おや…君は、さっきの子じゃない。」

「はい、無事つけたようで何よりです。」

「君のお陰でね。」

「どうしたんだい?君たち。」

 警察の方が話かけてきた。

「実は、おばあさんに話があって……」

「なるほどね……あぁ、林さん。バールのような物を持っていた人が変な言葉を言っていたと言う通報があなた以外にもありました。なので、こちらとしても色々と調べてみます。」

 どうやら、おばあさんの言っていた怪しい男に対して他にも通報があったみたいだ……

「林さん。こちらの話は終わりましたので、子どもたちの話を聞いてあげてください。」

「えぇ、ありがとうね。」

 警察の方とおばあさんの話は終わった。しかし、僕は警察の方に話を聞くほうが良いと考え、話をする。

「実は、先程話していた怪しい男についてなんです……なにか詳しいことを知りませんか?」

「おばあさんに聞きたいことってのはその話だったんだね。あんまり詳しいことは言えないんだけど、目撃情報によると、千田街でよく見かけられているっぽいよ。」

 僕は、警察の方の話を聞き、佐奈と目を合わせる。すると佐奈はおばあさんを見て何やら佐奈は気まずそうな顔をしていたが、すぐに切り替えて「すぐに行きましょう。」と言った。警察の方とおばあさんに挨拶を交わし、千田街へと向かう。



「ここ、いつもよりも人が少ないな……」

 僕は、千田街を見て呟いた。いつもならばこの街は人で溢れている。

「その怪しい男のせいでしょうね。」

「どうする?聞き込みをしようにも人がいないし…」

 僕と佐奈がどうすべきが迷っていると、バールを持った男が現れ話しかけてくる。

「正義とは?」

 突然聞かれて、僕と佐奈は戸惑った。しかし、少し経ってから佐奈が

「正義のために遊び尽くす。」

 とバールを持った男に言葉を返した。

「どうやらお前らみたいだな。ついてこい。」

 何やら察したようにボールを持った男が僕たちを別の場所に案内した。すると、そこには男が一人立っていた。

「!!!」

 僕はその男が自分と同じ顔をしていることに驚いた。しかし、その同じ顔の男は僕の顔をみても驚きの表情を浮かべない。

「そいつ等が協力者か?」

 僕と同じ顔の男がバールを持った男に言う。

「あぁ、合言葉を知っていたしな。」

「そうか、それなら間違いない……」


 バン!!!!


 二人が言葉を交わすと同時にどこからか発泡音が聞こえた。発泡音のする方を見てみるとそこには銃を構えている佐奈が居る。

「ぐっ……」

 佐奈に撃たれたバールの男は嗚咽を吐きその場に倒れた。

「てめぇ!!」

 僕と顔を似た男が怒り狂い佐奈に襲いかかる。しかし、佐奈は軽く攻撃を捌き男を拘束した。その一連の流れにまだ、状況を飲み込めていない僕は更に驚き唖然とする。

「爆弾の場所を言いなさい!!」

「ちょっと、どういうことか説明をして……」

「ちょっとあんたは黙ってて。」

 佐奈は、人が変わったように怒鳴りそれを見た僕は説明を求める。しかし、それも無視されてしまった。

 すると、拘束された僕と顔が似ている男は僕に対して言葉を発した。

「正義を執行せよ……」

「ぐっ……頭が…………セントラル病院……」

 僕はその言葉を聞いてうずくまる。そして、意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうだった!?」

「えぇ。なんとか爆弾の位置を聞き出せたわ。」

「なら良かった。すぐに過去へ飛んで。」

 そんな言葉が聞こえる。

「被験者Aが意識を戻したようです。」

「どうします?彼は過去の記憶が混在しています。自分のことをただの学生と思っているようですから。なので、殺す必要はないかと……」

「しかしそれでも、彼は正義執行委員会のリーダーよ。殺しておくべきだわ。」

 物騒な言葉が飛び交っている。僕はなんとか起き上がり、周りを見渡すことにした。ここはどうやら施設のような場所で僕の頭には変な装置が付いていた。その装置を外し、なんとか逃げようとする。

「被験者Aが逃げようとしているわ。速く殺しなさい。」

 近くで話していたおばあさんが隣りにいる女の人に指示を出す。

「えぇ、わかってます。待ちなさい!!」

 僕はおぼつかない足で必死に逃げる。しかし、何個目かのドアに差し掛かったときに追いつかれた。

「もう、だめだ………」


 ドスン!!!


 死を覚悟していた僕だったが、その場に現れた一人の中年がバールでその女の人を殴り助かった。

「助けてくれてありがとう……」

「すまねぇ。俺達が不甲斐ないばかりに……しかし、もう大丈夫だ。」

 彼の指示に従い僕は、その怪しげな研究所を逃げ出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここならもう安心だ。」

 彼のその言葉に僕は少し安堵したが、状況が飲み込めないため戸惑いの表情で彼を見た。

「俺は龍ヶ崎と言う。まぁリーダーの言いたいこともわかる。しかし、そんなに時間もないから軽くしか話せないが、情報を話そう。」

 龍ヶ崎は、僕のそして僕らの置かれている状況について話した。


 どうやら僕は、正義執行委員会と言う高校生で構成されている組織に入っていたらしい。その組織は、警察が動かない犯罪などを主に追っていたそうだ。そして、その活動の中で林佐奈が率いるテログループが千代街でテロを起こし、それを引き金に世界中でテロを起こそうと考えることを掴んだ。街にいる人々を街の外に逃がして爆弾を探し出したそうだが解除する時間がなくて被害の少なくなりそうな場所へ集めて爆破させたそうだ。しかし、その爆破の実行をした僕は、爆破のショックで記憶を失い敵に捕まってしまったそうだ。それにこの龍ヶ崎という男、確かに少し見覚えがあるように思える。


「それで奴らはリーダーの記憶から爆弾を集めた場所を聞き出し、過去へ飛んで爆弾を奪い返すつもりだそうだ。多分爆弾の場所はもうバレている。だから奴らを絶対に過去へは飛ばしてはいけない。」

「で…でも、どうするんだ?」

「俺達の仲間が今の奴らの基地を攻撃している。落ちるのも時間の問題だ……だが、奴らがタイムマシーンの場所に逃げるかもしれない。俺は今からタイムマシーンを抑えに行く。」

「何がなんだかわからないけど、僕もついていくよ。一応君たちのリーダーのようだしね。何も出ないと僕の正義の心が泣いちゃうよ。」

「それでこそ俺等のリーダーだ。」

 他の仲間とも合流し、また…ひとつの拳銃をもらい、僕は龍ヶ崎の指示に従ってタイムマシーンの場所へ向かった。



 仲間たちが何とか敵を抑えてくるおかげで僕と龍ヶ崎、そしてすこしの仲間たちがタイムマシーンに到達した。タイムマシーンと思わしき物の前には先程のおばあさんと、敵数名がいた。そのおばあさんに僕は少しの既視感を覚えた。だが、そんな僕をよそに

「林佐奈!!」

 龍ヶ崎はそのおばあさんに向かって叫んだ。

「まったく…あなた達は私を何度も邪魔してくれたわね。でもこれまでよ。タイムマシーンは起動したわ。じきに私は飛ぶ。」

「させるかよ!」

 彼はおばあさんをバールで殴りつける。しかし、おばあさんは老婆とは思えないスピードで避け龍ヶ崎を手に持っていた謎の銃で撃った。その銃で撃たれた龍ヶ崎は身体が消滅して消えた。ほかの仲間達が動揺しているなか、僕は別のことに動揺を隠せなかった。


(林佐奈だって……僕は高校生のある時期の記憶から途切れているが、それまでの記憶は持っている……佐奈は幼なじみだ。しかし、なんでこんなことを…それになぜあんなにも老けているだ……)


 仲間が死んだことにより周りはまだ、動揺して戦いどころではなくなっている。

「佐奈、僕だ…神崎勇斗だよ。なんでこんなことを…それになんでそんなに老けて……」

僕は佐奈に疑問を全てぶつけた。

「神崎勇斗…ね、まぁ知ってはいたけどあれから20年もたっているのよ。あなたはそうでは無いかもしれないけど私にとってはかなり昔の過去よ。……それになんでって言ったわね。それは20年前のテロが起きていれば今のこの荒廃した世界が無くなるからよ。テロさえ成功して入ればこんなことにはならなかった。あと、私が老けているように見えるのはタイムマシーンで過去へ飛ぶとその分だけ歳を取るのよ。まぁそんなことはどうでもいいわ。理解したならさっさとその私に向けている銃を下ろしてちょうだい。」

僕はいつの間にか佐奈に銃を向けていた。そして佐奈もまた、僕に謎の銃を向けている。

「僕がなんとしてでも佐奈を止めます。皆さんはどうか気を確かに持って……龍ヶ崎さんは消えてしまったけどそれでも必ず佐奈を過去へは飛ばしちゃ行けない。」

僕の言葉に仲間たちはまた戦意を取り戻した。それに戦力としてはこちらが上、敵をどんどん追い詰めていった。

「佐奈、そっちこそ銃を下ろしてくれ。僕は佐奈を撃ちたくは無い。」

「どうせ撃てないのに何言ってんのよ。私はあんたのことなんかもう記憶にも残ってないわ。」

そう言って佐奈は引き金を引こうとした。その時、︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎バン︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎と鈍い音とともに佐奈は倒れた。近くに居た仲間が佐奈を撃ったのだ。僕は直ぐに佐奈の元に駆け寄った。

「佐奈……」

「本当…いつも馬鹿みたいに優しい顔しか出来ないのね。そんな顔じゃあんたが撃たないことくらい分かっちゃうでしょ。それに…そんな顔されたら撃てないじゃない。」

「佐奈…何とか…助からないのか…」

「ダメね、もう助からないわ……ひとつだけ……ただの独り言として言わせてもらうわ。私は何もテロリストになりたかった訳じゃない。この荒廃した世界を救うためにはあのテロが成功して21世紀改革委員会を解体させないといけないのよ……」

(21世紀改革委員会ってなんだ……)

「こんなババアの見た目のやつに言われてもかもしれないけど、本当はあんたのこと忘れたことなんてなかったからね……」

「佐奈…………………」

 そこで佐奈は息絶えた。




僕は横に落ちていた佐奈の謎の銃を拾った。そして、そうこうしている間に仲間が敵を完全に制圧して僕たちの勝利として終わった。しかし、ひとつだけ疑問がある。佐奈の言ってた21世紀改革委員会の事だ。

「一ついいですか?」

 そう隣りにいた仲間に僕は問いかけた。

「佐奈が死ぬ間際に21世紀改革委員会と言ってました。いったい何のことでしょうか。」

「なんのことって今戦っていた相手こそが21世紀改革委員会だ。とは言っても第三研究所だがな。」

「それと、この世界が荒廃しているとかも言ってました。それも聞いてもいいですか。」

「荒廃ね……21世紀改革委員会のせいでこうなったのに何を言ってるんだか、まぁ正義執行委員会の先輩方が止めたテロの後に名を現してきた組織だよ。21世紀改革委員会は。そいつらは簡単に日本の政治を乗っ取り、そして…世界まで乗っ取った。完全な管理社会となり、人も食料も減り生きる目的さえなくなった。そんなやつらと戦っているのが我々ってことさ。」

(佐奈はきっとこんな世界を救うために過去へ行こうとしていたんだ。でもテロが起きれば多くの人が死んでしまう。そんなのはだめだ…)

 他の仲間たちが撤収していく中僕はそう思いタイムマシーンに目を向けた。

(僕が過去を変えれば……)

 そう思ったのも束の間、僕の足はタイムマシーンへと向かっていった。中に入ると何やら機械は起動している様子だった。

(過去に行くにしてもどうすれば……)

 なにかマニュアルのようなものがないか探していると、突然”タイムマシーンの起動及び行先座標指定完了しています……スタートさせるには赤のボタンを押してください”そうアナウンスされ僕は目の前にあった赤のボタンを押した。”ガ、ガガ”とかなり強いGと共にタイムマシーンが動き出した。そして不思議な感覚に襲われ僕は気を失った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目が覚めた時にはタイムマシーンは止まっていた。それに少し体が重くなっているように感じた。

(着いたのか……)

そうも思っているとタイムマシーンのしたに一つの薬を見つけた。その薬の説明書にはこの薬は研究段階で試作的なもので世界にまだ一つしかないもの、そしてこれを飲めば40年若返るとも書いてあった。

(そうか…タイムマシーンで過去に飛んだ時間だけ歳を取るんだったな、幸い僕はずっと高校の時から昏睡状態で見た目もその時のままだったつまりは今大体40歳くらいか……僕が飲んでもしょうがないな。)

 そう思いつつもその薬をポケットにしった。

(何も考えずにタイムマシーンに乗ったからな…とりあえずは21世紀改革委員会についての情報を探るか…)

 とりあえず、タイムマシーンから出て周りを見渡すと隣りには全く同じタイムマシーンが止まっており、その中から年老いた佐奈が出てきた。

(佐奈は一度タイムマシーンで過去に飛んだと言ってたっけ……多分その時の……)

 そんな考えも束の間、佐奈は僕に襲いかかってきた。

「誰だお前は…なぜタイムマシーンを使っている…まさか21世紀改革委員会の手のものか。」

 そう言い僕を押さえつける佐奈に何とか事情を説明した。自分は誰なのか、そして未来で起きたこと、自分の目的もまた21世紀改革委員会を止めることであると。

「にわかには信じられないが…確かに勇斗の面影があるわね……まぁ、そんなことはどうでもいい。とりあえずは私の目的はテロを完遂させることだ。それを邪魔するなら龍ヶ崎だろうと殺すしかない。」

「別に僕を殺すのは構わない。でも言ったろ、結局佐奈が何をしたってテロは正義執行委員会に止められる。どうせなら一緒に21世紀改革委員会をテロ以外の形でどうにかしないか。」

 こんなふうに二人で言い合いながらも議論を続けた。そして結局は佐奈が折れる形となった。

「わかったわ。とりあえずは21世紀改革委員会をどうするか考えましょう。でも上手くいかなさそうだと思ったときにはすぐにテロの手助けに行くから……それでどうするつもりなの?」

「とりあえずは正義執行委員会のメンバーを見つけよう。なにか情報を持っているかもしれないし、それに必ず助けになってくれるはずだ。」

 そして、佐奈に先ほどタイムマシーンで拾った薬を渡した。

「これは……第三研究所で開発している若返りの薬じゃない。半年後には試作品が出てたのね。」

「タイムマシーンの中に落ちてただけだから本当に効果があるか、安全なのかは分からないけど…」

 そんな僕の忠告も聞かずに佐奈は薬を口に含み飲み込んだ。すると、佐奈の顔からシワが取れ曲がっていた腰も伸び見るからに20代の若さを取り戻した。

「どうやらちゃんと効果はあるみたいね。早く正義執行委員会のメンバーを探しに行きましょう。」

 そして僕達は街に探索に行くことにした。




 千田街を探すことにした僕らはバールを持った男を見つけることに成功した。

(きっと龍ヶ崎だ。)

 そう思った僕と一緒にいた佐奈は、龍ヶ崎を追いかけた。龍ヶ崎は路地裏に入り一人の男と会っていた。どこか見覚えのある顔ではなくしっかりと記憶にある顔…つまりは僕自身だ。

 龍ヶ崎と過去の僕は合言葉を言い合おうとしていた。

「ちょっといいかな。」

 僕はそう二人に問いかけた。

「誰だお前は…」

「仲間って言っても信じてもらえないかな。」

「……正義とは?」

「正義のために遊び尽くす。」

「わかった、着いてこい。」

 そんな会話をしている僕と龍ヶ崎をよそに佐奈と過去の僕は見つめ合っていた。

「もしかしてだけど、佐奈…だよね。僕は高校行かなかったから、もう会えないかと思ってたよ。どしてここに?」

「そのことも後で話すわ。」

「…勇斗、それとそこの女もついて来い。」



 龍ヶ崎について行くとそこには複数人の正義執行委員会の仲間がいた。そこで僕達は事の顛末を話した。何から何まで……つまりはタイムマシーンで未来から来たことそして未来で起きたことも含めて。

「つまり、今回のテロを止めると未来は荒廃してしまう。でも、テロを止めなければ多くの人が死んでしまう。だから君たちに知恵と力を貸してほしい。」

「そんな話を信じろってのか」

 龍ヶ崎はそう声を荒げた。しかし、過去の僕は

「確かに、本当かどうか確かめようがないけど彼は僕と似ているし、何より佐奈は知った仲だからね。例え未来から来てたというのが嘘でもまずは信じてみるべきじゃないかな。」

 過去の僕がそう言って仲間たちを説得させていった。

「それで、どうするつもりだい。」

「作戦としては何も思いついてないけど、まずテロの方は正義執行委員会の力で防ぐことはできているはずだ。」

「あぁ、爆弾の場所はもう分かっている。それに今仲間が偵察に行ってる。」

「そして、その爆弾が仕掛けられている場所に21世紀改革委員会のやつらがいるわけだ。」

 そうやって僕と過去の僕は作戦を立てていった。

「それで爆弾はどこに?」

「佐奈…爆弾の場所聞いてテロの助けに行くわけじゃないだろうな。」

 佐奈の問いに僕は突っ込んだ。

「今それ諦めてるから大丈夫よ。」

「なら安心だね。爆弾はセントラル病院にある。それにその病院の医院長はあまり良い噂を聞かない。もしかしたらそいつが21世紀改革委員会とやらのボスなのかもしれないね。」

「その医院長は何か悪いことでもしてるのか?」

「どうやら病院のお金をテロリストにばらまいているらしい。今回のテロはお金のやりとりで問題があったため起きたのだろう………だから僕達はテロを防いだあと病院の悪事をばらまこうと考えていたんだよ。まぁ未来が君たちの言う通りならきっと成功はしないんだろうけどね。」

 色々な話のすり合わせの末、テロリストの制圧及び爆弾の解除は現地のメンバーに任せて僕達はセントラル病院の医院長を問いただしに行くことにした。




 病院に着くと正義執行委員会の仲間たちがテロリストを制圧して爆弾の解除をしているところだった。

「手際がいいわね…」

 未来で散々対峙してきた正義執行委員会の手際を見て佐奈が複雑そうにつぶやいた。

「それで医院長はどこにいるのかしら。」

「今回の騒動でどうやら地下にある施設に潜り込んでるらしい。その入り口は仲間が見つけてくれたよ。」

 佐奈の問いに未来の僕は答えた。

「もしかしたら相手が襲いかかってくる場合もある。その時は龍ヶ崎頼んだよ。」

「あぁ、任せろ。」

 僕達は各々覚悟を決め地下の施設に潜り込んだ。


 そこにはこの時代では考えられないテクノロジーであふれていた。

「これは黒だな……」

 龍ヶ崎がそうつぶやいたその時

「これはこれは正義執行委員会の方々ですね。今回のテロリストの件、誠にありがとうございます。」

 そう声が聞こえてきた。

「嵐山医院長ですね。今回の件で少しお聞きしたいことがありまして。」

 過去の僕はその声にビビらずそう返した。

「今回事件、どうやらテロリストとの間にお金の問題があったようですが…」

「いえいえ、それは根も葉もない噂でしょう。」

「それに21世紀改革委員会、この言葉に聞き覚えはないですか。」

 嵐山医院長と過去の僕の会話に割り込んで僕は聞いた。すると、

「それをどこで……」

 そう言って嵐山医院長か手を挙げると周りから武装した人たちが出てきた。そして、間をいれずこちらに襲いかかってきた。

「龍ヶ崎。」

「あぁ」

 そう言って過去の僕と龍ヶ崎は戦闘を始める。

「若返った私に勝てると思いなさんな。」

 佐奈も気合を入れながら戦闘を始める。僕は奥の部屋に逃げていった嵐山医院長を追いかけた。

「みんなここは任せる。」



 奥の部屋では嵐山医院長が何やら大きなパソコンの前で座っていた。

「せっかくテロリストにこの施設を爆発されずに済んだのに……まさか自分で爆破しないといけないとは。」

 そう言う嵐山医院長に向かって僕は

「お前の目的とは一体なんなんだ。お前のせいで未来は、みんなはめちゃくちゃになったんだぞ。」

「……その言い方だとあなたは未来から来たのですね。そうですかタイムマシーンは完成しているのですね。良かったです。それに私の目的と言いましたか…それはこの世界をより平等な世界にするため私の監視下に行くことですよ。ここのテクノロジーはそのためのものなのに……」

「そんなことをしてもちっともいい世界にはならないぞ。」

「いえいえ、勘違いをしてはいけません。良い世界を作るのではなく平等な世界を、差別のない真に皆が平等に不平等な世界を。」

「ふざけるな。」

「まぁあなたたちのせいで計画はかなり遅れそうですが…全く、この施設もあと数分後には爆発します。あとは他の施設にデータと私の記憶を移して…終わりです。」

「そうはさせない。」

 僕は未来でなんとなく形見として拾っていた佐奈の謎の銃を向けた。嵐山医院長ではなく爆発物と思わしきものに。

(この銃で未来の龍ヶ崎は消えた…つまり、)

「そんな銃何ができるのですか。」

 そう言う嵐山医院長をよそに引き金を引いた。するとさっきまであった爆発物は消えてなくなった。

「な、な、な、なんということですか、そ、そ、んなことがふざけるな貴様…」

 怒りながら嵐山医院長はこちらに向かってくる。     そんな嵐山医院長を交わし今度は奥の機械に引き金を引く、

「あ、あ、私の研究データが、私の記憶が………」

 そう言って嵐山医院長はその場で泡を吹きながら倒れた。機械が壊れたせいで転送中の記憶データが逆流してきたらしい。何はともあれ解決だ。

 後ろからは龍ヶ崎、過去の僕、そして佐奈がやってきた。

「終わったのね。」

 そう言う佐奈に僕は深く頷いた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 僕と佐奈は未来に戻ろうとしたが、どうやら過去を大きく変えたせいで未来が不安定になり戻れないらしい。今は現代にとどまり二人でひっそりと暮らしている………正義執行委員会の手伝いをしながら。

 その正義執行委員会はと言うとその活躍が認められて国の正式な組織になった。これからの未来は正義執行委員会が守ってくれるだろう。


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