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究極少女とその未来 ~ロリとメイドと三枚目~  作者: 七歌
●1st day『Nの未来へ/神の名前はA』
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●1st day『Nの未来へ/神の名前はA』 その5

   ×××


「改めて、はじめましてお客様。人工生命F型・タイプNです。エヌとおよびください」


 エヌと名乗った人工生命体の少女に案内されて家の中に入ると、やはり外観からイメージできる内部構造とそう大きく違いはなかった。

 しいて言うなら生活感に乏しいというか、家具が少ない。ただ、キッチン周りはよく使っているのか、ふと覗いたキッチン周辺だけはやけに生活感が感じられた。


「それにしても、まさかいきなり人工生命体にお出迎えとは」


 エヌの後ろをついて行きながら、銀磁がぼやく。格好つけたことに後悔はないが、格好つけたのに反応が芳しくなかったのは少々さびしい。


「格好つけ損だな」


 小さくため息を吐くと、隣を歩いていたアニムスがじとっとした目を向けてくる。


「ご主人様の趣味にみんながみんなちゃんと反応してくれると思わない方がいいでありますですよ?」


「いやいや、普通の女性だったらそれなりに反応してくれるからな? それなりに顔がいいオレみたいなやつがクールに名乗れば、頬の一つも染めるってもんさ」


「気色悪くて、でありますですね」


「そうそう気色悪くて――ってんなわけあるかぁっ! かっこよくてだよ!」


「気色が悪いあまり軽い昂揚状態になった結果、頬を染めている可能性もあると思いますです」


「そんなことあるわけ……いや、ある、か? あるかも……ある……?」


 アニムスの言葉を真面目に受け取った銀磁は、思わず過去に目の前でちょっと格好つけた台詞を吐いた相手の顔色を思い出す。

多少引かれたことはあるが、そんなまさか、頬を赤くするほど気持ち悪いと思われたことはない。

 ……はずだと思いたかった。

 銀磁が過去の反応を思い出していると、先導していたエヌが足を止める。そして、目の前の部屋の扉を開けると、その先に続く階段を指示した。


「佐志博士は、ここから下に降りた場所にある研究所にいます。電気をつけますので、少々お待ちください」


 そう言って、エヌはポケットから取り出した端末――見た目はスマホだが画面に映っている情報が市販のものとは明らかに違う――を操作すると、地下に続く道に電気が灯った。

 電気がつくと、さっきまで暗く陰鬱な雰囲気をまとっていた地下への階段は、清潔な雰囲気に切り替わる。

 早速銀磁が階段へ一歩踏み出そうとすると、エヌが銀磁の袖を引いて歩みを止める。


「お待ちください。地下へ続く廊下は消毒および殺菌効果のある空間になっています。もちろん人体に害がないレベルでの消毒・殺菌ですが、持ち込んで殺菌されると困るものなどありませんか?」


「殺菌されてこまるものは特にないかな。アニムスもないだろ?」


 銀磁の言葉に、アニムスは首をかしげる。なにか殺菌されるものに心当たりでもあるような顔だった。


「……ないよな? アニムス」


 おそるおそる尋ねる銀磁。それにアニムスは疑問の残る表情で答えた。


「いえ……今朝納豆を食べたのですが、納豆菌も殺菌対象でありますですか?」


「いやいや、流石に納豆なんて――」


「納豆菌は殺菌対象です」


「されんのかよ!?」


 エヌのまさかの返答に、アニムスは銀磁を見つめながら難しい顔をした。


「ワタシは体内で滅菌の上エネルギー源として『消化』するので問題ないはずでありますですが、ご主人様の体内まで滅菌するとなると、難しいのではないでありますですか?」


「そう……ですね。人間の体内の菌を完全に滅菌するとなると、途中で滅菌モードが強化される可能性があります」


「強化ってなに? なにされんのオレ?」


「具体的に言うと、口の中から謎の液体を注がれたり、腸内の物質をお尻から吸いだされたりなどです」


「気軽に尊厳破壊しようとするのはやめろぉ! そんなことされるくらいならオレは地下に行かないからな!?」


 慌てて階段から距離をとる銀磁に、アニムスはため息を吐いた。


「ご主人様、別に口から薬入れて尻から吸いだすくらい良いではないでありますですか。最新設備なら多分痛みとかは無いでありますですよ?」


「馬鹿かこのポンコツ! 男が口と尻にコード突っ込まれて空中でビクビク体震わせてる姿なんてどこに需要があるんだよ! そういうのは綺麗でエロい女が喘ぎ混じりにやるから需要があるんだよ!」


「あの、途中で薬液の中に落とされてナノマシンで滅菌するだけなので、ホースを口やお尻に入れたりはしませんよ?」


「……だ、そうでありますですが? ご主人様」


「同じ! 同じだから! 薬液漬けも男がされて栄えるシーンじゃないから! そういうのいいの、いらないんだって!」


 ていうか怖いんだよ! と銀磁が声を上げると、アニムスとエヌは顔を見合わせた。

 それから、エヌは仕方ない、という風に階段近くの操作盤に手を滑らせる。すると、階段入口付近の壁が開き、軽めの宇宙服のようなものが出てきた。


「では、多少居心地は悪いと思いますがこちらをどうぞ」


「なんだこれ?」


「密閉スーツです。地下内部ではこちらを着ていてください。これを着ていれば、階段の滅菌にもひっかかりません」


「そういうのあるなら早く言ってくれ……」


 銀磁は受け取った密閉スーツを素早く着こむ。帽子はスーツの上から頭に乗っけておいた。やや息がしにくく動きにくいが、液体漬けで消毒されるよりはマシだろう。

 それから、改めて地下への階段を下り始めた。階段を下り始めて数段で、うっすらと霧状のものが通路に吹き出し始める。


「これが滅菌するナノマシンってやつか?」


「はい。密封スーツを着ていれば、それ以上内部には入ってきませんので、安心してください」


「……それにしても、ワタシにだけやたらと集まってきているような気がするでありますです」


 ぼやくアニムスのまわりには、やたらと霧が集まっていた。集まり過ぎてほとんど人型の霧のかたまりのように見える。

 なんとなく既視感を覚える光景に、銀磁はぽつりとつぶやく。


「昔、こんな感じのタイヤのキャラクターが居た気がするな」


「今でも現役でありますですよ? そのキャラ」


 銀磁は霧に包まれたアニムスを見ながら、階段を下りていく。

 やがて、階段の終わりが見え始めた頃――それは、突然起こった。



[最終消毒を始めます。対象者を滅菌漕へ]



「ん? なんだこのアナウンス」


 突如入ったアナウンスに、銀磁たちは足を止める。すると、エヌが不思議そうに首を傾げながら教えてくれた。


「ナノマシンで消毒しきれなかった場合に、滅菌漕に対象者を移動させるので、その際に入るアナウンスです。しかし対象者は居ない……はず――?」


 エヌが銀磁の後ろを見て、驚いたように目を見開く。そこにはアニムスがいるはずだった。

 銀磁もつられる様にして、後ろを見ると、そこには。


「……おいアニムス、なんでお前アームに捕まってるんだ」


 後ろに居たはずのアニムスは、いつの間にか壁から出てきたロボットアームに捉えられていた。


「どうやら、ワタシの体内の殺菌は完璧でなかったようでありますですね。滅菌されてくるでありますです」


 こともなげに、アームに連れられて壁の中に消えていくアニムス。肝がすわってるなと銀磁が思っていると、突如として壁の一部分が展開し、謎の緑色の液体に漬けられたアニムスが現れた。


「え、なにこれ? 滅菌するところ見られるのか?」


「もしもお客様になにかあったら大変なので、滅菌漕を使う際にはこうして機器を露出させて、もしもの時にはすぐに取り出せるようにしているんです」


「ははぁ、なるほど。理にかなってる」


 エヌの説明に銀磁が納得していると、液体に使っているアニムスが突如目を見開いた。その口の中へ、液体が入っていく。

 そして、アニムスは、やや涙目になりながら、滅菌漕の中で体をくねらせ、声を漏らす。


『ん、っぶ、っふ、っく、っぅんぅうう――っ!?』


 どこか色っぽい声。大きな乳房を跳ねさせて、びくびくと体を震わせる様子に、銀磁は思わず帽子で、ヘルメット越しに目元を覆った。


「これはひどい……女性を入れていいものじゃないな。アニムスは見た目しか女性じゃないが。というか、オレもこんなものの中に突っ込まれるところだったのか」


「……慣れれば案外気持ちいいのですが……」


 ぼそりとエヌが呟くのを聞いて、銀磁は短くため息を吐く。

 そんなことをしている間に滅菌は終わったのだろう、滅菌漕の中の液体が抜かれ、アニムスの体が乾燥させられ、再びアームで運ばれて外に戻ってきた。

 アームから階段に離されて置かれたアニムスは、頬を上気させ、荒く息を吐きながらへたり込む。その様子に、銀磁は心配そうに声をかけた。


「あー……大丈夫か? アニムス」


「……ご主人様」


「お、おう。なんだ、どうした?」


「先ほどはすまなかったのでありますです……舐めていたでありますです。もしも次回があるのなら、ワタシもご主人様と同じようにスーツを着るでありますです……」


 珍しく弱気なアニムスの様子に、普段散々イジられている銀磁も流石に追い打ちをかけるような気持にはなれない。

 へたり込むアニムスの傍らにしゃがみこむと、落ち着かせるように背中をさすった。


「そうか……そうしような。よく頑張ったな、アニムス」


「もっと褒めるでありますです……」


 すっかり心が折れたアニムスが立ち直るまで、銀磁はしばらくの間、アニムスのことを褒めたり頭を撫でたりして励ましていたのだった。



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