サトリの憂鬱~よこしまな心と恋心~
初投稿です。
お手柔らかにお願い致します。
「瞳さん私と結婚してください!!」
私は恋人の昌からプロポーズを受けた。
幸せの絶頂、誰もがうらやむ瞬間であろう
しかしその言葉の裏でよこしまな心が見え隠れしているのが私には見える。
実は私はサトリという妖怪で、人の心を読むことが出来る。便利な側面もあるが、こうしたうれしい場面でも嫌な側面が見えてしまう欠点もある。
例えば、昌は私と結婚した後に家事の一切を放棄し、押し付けるつもりだ。勿論私も昌のためなら家事を喜んでやるつもりだけど、丸投げするのはどうかと思う。
またこれまでの付き合いで分かったことだが昌は面食いだ。
私も容姿には気を使っている方ではあるが、より容姿の整った人がいればそこに流れてしまうだろう。つまりは浮気性なのだ。
しかも昌は容姿がいい。好青年のような出で立ちでたちまち周囲を虜にする。また時々見せる隙が罪のない色気として現れる。罪がない分余計に憎たらしい。まぁ私もその魅力にやられたたちだから、何も言えないけどね。
また昌は浪費癖がある。趣味のオーディオに多額のお金をかけており糸目がない。勿論趣味に関してとやかく言う気はないが、苦しい家計は覚悟しなければならない。この前もスピーカーに20万のお金をかけているのを見た。昌は3万だと言っているが嘘だ。まだまだ出費はかさむだろう。
嘘も得意だ。仕事のことでも趣味のオーディオのことでもそれっぽい嘘を並べてやり過ごす。普通の人なら騙されてしまうほどうまい嘘をつく。この前も残業で帰りが遅くなると言っていたが、実際は会社の後輩の女の子と飲みに出かけるつもりだったことを知っている。
私に嘘は通用しない。
見れば見るほどよこしまで悪い一面だらけ、なぜ私は昌を愛したのだろう。
何故かはわからない。ただ分かることは、私は昌を心から愛していることだ。
その気持ちは本物だ。いくら浪費癖が激しくても、浮気性でも、家事のほとんどを押し付けるつもりでもそれは変わらない。
全てを受け入れて昌を愛する気持ちを私は持っている。でもそれはいったいなぜなのだろう。容姿?収入?誠実さ?いや違う。
昌もまた私のことを愛しているからだ。
浮気しても、家事を押し付けても、趣味のオーディオにかかるお金に嘘をついても、私を捨てる勇気は持てない可愛い側面がある。
そんなの思い込みじゃないかと思うだろう。
でも私は断言できる。なぜなら心は嘘をつかない。
今、昌の心は私で満たされている。これは比喩ではなく本当に満たされているのが見える。そして私の心も昌で満たされている。自分の心が愛する者の手によって満たされる感覚は普通の人間でも分かるはずだ。
それにいざとなれば私は昌の弱みをたくさん知っている。何かあった時は沢山付け込んで沢山苛めてあげる。そして沢山愛してあげる。
そしてすべてを受け入れて許してあげる。
さんざん相手のことを悪く言っておいて、自分にもよこしまな気持ちがあることに気付く。しかもいざとなれば弱みに付け込もうとしている。最低だ。
自分の心にも嘘は付けないらしい。
でも今は愛する気持ちのまま突き進みたいと思う。
私は勢いよく「はい!!私で良ければ」と返事し彼女の手を取った。
そう、私は彼女を誰よりも愛している。周りから見れば異様に見えるかもしれない。
でもこれが私の心。よこしまな心と愛する心が入り乱れる、ありのままの恋心だ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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